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056.魔道具を作ろう!

「それでは本日の作戦会議を始めます」


「はい、主様」


ということで本日もいつものコアルームでいつものようにルビィと一緒にダンジョンについての話し合いを始める。


まあ作戦会議なんて大層なものでもないけどね。


そのへんはノリで。


「本日の議題はこれ! 魔石の相場を上げよう!」


わー、ぱちぱちぱち。ってやってくれるルビィが優しい。


「それじゃあまずは現状確認なんだけど、王都での魔石の取引相場が下がっているとのこと。原因は当然うちのダンジョンだね」


「特に無垢の魔石の値下がりが大きいようですわね」


「そうだね。属性魔石はかなり気を使って配ってるけど、無垢魔石は報酬の基本だから排出を絞るわけにもいかないからしょうがない部分もあるけど」


ここを絞るとそもそも稼げねえダンジョンになってしまうので、冒険者を呼び込むためにはこれは必須だ。


ぶっちゃけ魔石の相場が多少落ちても冒険者の稼ぎがちょっと減るだけで別に困らないんだけどね。


なのでこの会議は急務でもないんだけど、それでも相対的に相場が上がることはダンジョンにもメリットがあるっちゃあるので対策を考えようかなーって話。


「あと単純に相場が下がり続けるって動きはあんまりよくないんだよね」


相場が上下せずに下がる一方だと、早めに損切りしようとする市場の流れで相場が加速することがある。


そういう意味でも一旦は相場を上げておいて、またそのうち上がるかもしれないという心理を作っておきたいわけだ。


「そんじゃ解決策なんだけど、供給を減らすわけにはいかないから答えは簡単だね」


「供給が減らせないなら需要を増やす、ですわね?」


「ルビィ、正解」


要するにダンジョンで取れる以上に消費されればいいのだ。


「まあ実際にそこまではいかなくても、消費量が増えれば自然と相場は上がるはず。それでどうやって需要を増やすかって話なんだけど」


「魔石の主な利用先は魔法の触媒、スクロールのインク、エンチャントなどの外部補給、魔道具の燃料などでしょうか」


「その中で今回の問題の解決策に一番適しているものといえば」


「魔道具かと」


「うん、これなら利用者を制限せずに消費させられるから需要は無限大だしね」


まあ実際には庶民が使うには魔石の価格が高いってハードルがあるんだけど。


「それじゃあ今日は魔道具を作るということで、具体的には何を作ろうか」


「需要でいえば一番が光、次いで火、最後に水でしょうか」


人間に必須な順番といえば全く逆で水、火、光の順だろうけど、魔道具の需要としては必須さよりも代用のめんどくささの方が大きいようだ。


水は井戸があれば汲めるけど、火は種火と薪が必要だし炭も出る。


継続的な光は蝋燭が必要で単純に高価だ。


水も当然自由に使えるわけじゃないけどね。


あとまあ属性に頼らない魔道具も存在してるんだけど、そっちは全然一般的じゃないから相当マーケティング頑張らないと流行らないんじゃないかなって気配はしてる。


「そういえば氷は?」


「氷はあまり使用されていないようですわね」


冷蔵庫とか大人気なんじゃ?と思ったけど継続的に物を冷やし続けるのはまず手間だし更に魔石の消費に見合わないってことらしい。


風とかも扇風機を作れれば便利だろうけど実際に魔石を使うほどじゃないんだろうな。


金持ちが使うには扇風機っていうのも見栄え的にアレだろうし。


風にあたって涼んでる金持ちのイメージが全然湧かん。強いて言えばデカい扇で仰がれてる様子くらいだろうか。


いっそエアコンまでいければアリな気もするけど流石に面倒かな。


魔石の消費に糸目をつけなければ空気を冷やしてから送り出す機構は作れそうな気もするけど純粋にめんどい。


ダンジョンの中は常に快適だから自分たちで使うために作ろうなんてモチベーションにもならないしねー。


「んじゃー、とりあえずランタンかな。実際に作ってみようか」


「はい、主様」




ということで実際に試作したランタンは三つ。


差は単純に大きさで、大中小になっている。


大はバスケットボールくらい、これは家とかで使う用ね。まあ形状は向こうの世界でもあったキャンプ用ランタンみたいな円柱状のフォルムなんだけど、大きさはそれくらいってことで。一応吊るして使えるように上に輪っかをつけてみたりした。


中はバレーボールくらい。これは冒険者が手に持って探索するのに困らないくらいの大きさだ。フレームは金属だからそこそこ重いけどそこはご愛敬。


持ちやすいように天辺に逆U字型の取っ手をつけてるけど、なんかヤカンみたいだとか言ってはいけない。機能美ってやつよ。


そして小はソフトボールくらい。重量も控え目で革のベルトなんかをしてればそこに繋いで腰からぶら下げられるほどに抑えている。まあその分光量も控えめなんだけど。あと両手が空くってメリットの他に光源が小さく魔石の消費も控えめって部分もある。


ちなみに今回は無垢魔石の相場を上げるのが目的なので、燃料は無垢魔石で稼働できるようにしたよ。


まあ実際には光の魔石も必要なんだけど、光の魔石で光を生み出す仕組みを、無垢魔石の魔力で代用するって形かな。


ということで実際に完成したんだけど、実際に使ってみるとその出来栄えに若干の不満があった。


「美しくない……」


「美しく……、ですか?」


俺の言葉にルビィが疑問符を浮かべる。


またわけわかんねーこと言い出したなって思われてる気がする、っていうのは俺の被害妄想だろうけどまあ変なこと言ってる自覚はある。


「いや、正確にはなんだろう。雰囲気が無いかな」


「雰囲気とは」


「ダンジョンとは未知への畏怖と財宝への期待で出来ているべき、だと個人的に思う。その雰囲気に、この白い照明は合わないかな」


例えるなら、おしゃれなバーが真っ白な蛍光灯で照らされているような台無し感がある。


個人的な趣味が大半なんだけど、それでも雰囲気作りっていうのも案外馬鹿にできなかったりするからね。


都市で使う用の大はそのままでもいいけど、冒険者向けの中と小は出来ることなら拘りたいところ。


「ですが主様、光に色を付けるのは難しいかと」


「そうだね」


だったら解決策はこう。


「なるほど、ガラスに色を付けるのですね」


光源を包んでいるガラスを透明なものから茶色がかったものにすると、光も目に優しい感じの色になった。


そうそうこういうのでいいんだよこういうので。


「このガラス自体が魔法の光を留める機能の一部を担ってるから、多少見辛くなっても外す冒険者もいないでしょ」


「そうですわね」


逆に外して自作の透明ガラスをはめる冒険者がいたなら頑張ったねって褒めるわ。王都で業者が量産始めたら絶対に許さないけど。


ちなみに王都でも魔石型のランタンは存在するんだけど、そんなに使われてはいない。


なんでも王都には光魔石をそのまま消費する仕組みのランタンしか存在しないんだとか。


無垢魔石より属性魔石の方がずっと高価で数も限られてるのでそりゃ気軽には使えないわなって感じだ。


ちなみになんで今回俺が作ったみたいに無垢の魔石を燃料とする仕組みが存在しないのかはわからない。


利権的な問題じゃないらしいけど、そもそもそういう発想がなかったのか、それとも技術的に難しかったのかはわからん。


そもそもが高価な品らしくて王都に遊びに行った時でも実物確認できなかったんだよね。


個人的にはこれを機に王都側でも量産してくれるようになると自然と魔石の相場が上がるから嬉しいんだけど、まあその辺は実際にこのランタンを配ってみてかな。


「一応動作チェックしておこうか」


「はい、主様」


ということで部屋の明かりを一旦落とす。


まあダンジョンコアは微妙に光ってるんだけどこれくらいならまあいいでしょ。


「最初は家庭用ね」


「思ったよりも明るいですわね」


「そだね」


明るい部屋の中だとそこまで実感できなかったけど、暗い中にこれを置くとかなーり周囲が明るくなってるのがわかる。


あっちの世界で言えば風呂場の電球くらい明るい。


これなら人気出るんじゃないかな。そうでもないかな?


「次は手持ちのやつね」


「やはり少し重そうですわね」


「そうだねー、冒険者の力なら大丈夫だと思うけど」


俺が右手で持ち上げると、松明と同じくらいの明るさで周囲が照らされる。


それなら松明でいいじゃんって思うかもしれないけど、火は取り扱いが色々面倒だからね。


まあ実際にコストに見合うか判断するのは冒険者だけど。


「次はもうちょっと軽さ重視で作ってみよっか」


とはいえ今回はこれで決定でいいかな。


「最後にこれ」


「じんわりとした明るさですわね」


「寝る前の部屋に置くのに丁度良さそうな光量だね」


ダンジョン探索もメインにするには心許ないけど補助としては十分って感じ。


「それじゃルビィ、ちょっと付けてみてもらえる?」


「申し訳ありません主様、わたくしの服には付ける場所がありませんわ」


「たしかに」


上下一体型のドレスを着ているルビィの服には、ランタンを引っ掛ける場所が存在しない。


「それじゃ折角だしルビィにはベルト巻いてもらおうかな。ちょっとここ立ってもらえる?」


「かしこまりましたわ」


ということでルビィに目の前に立ってもらって、魔法で作ったベルトをその腰に回す。


腕を回してベルトを通すと抱きついているみたいな格好になってちょっとドキドキするね。


あとすぐ目の前にルビィのお腹があって、ドレス越しでもそのシルエットがわかるのが刺激的だ。


触りたーい。触らないけど。


なんて思いながらベルトを締め、そこにランタンを引っ掛ける。


隙間を絞ったS字フックにしてあるから、自然に外れることは早々ないはず。


「どんな感じ?」


「付けている分にはほとんど邪魔になりませんわね。これなら冒険者でも実用に耐えるかと思われますわ」


「ならよかった」


流石に前衛職が全力で行動したら怪しいだろうけど、身のこなしで武器を振るうくらいなら大丈夫かな。


ということで試作品のテストは完了。


あとは実際に冒険者の使ってる様子を見て必要そうなら改善しよう。


「それにしても、ルビィのベルト姿も素敵だね」


「ふふっ、ありがとうございます主様」


「どういたしまして。それじゃあ外そっか」


ということで、ルビィのベルトを外して本当に今日の作業は完了。


「んじゃー、冒険者用のランタンは宝箱の中にぼちぼち入れてく感じで」


「かしこまりましたわ、主様」


あとは家庭用の方なんだけど、こっちもどうするかは決まってる。


という訳で、王都に行こう。

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