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044.エンチャントをしよう!②

「というわけで次はこれ!」


持ち上げたのは背丈ほどもある両手剣。


炎が揺らめくような刀身の形状から、あっちの世界ではフランベルジュと呼ばれているものだ。


実物知らない人はなんだろう、細かく体をくねらせる蛇さんを想像してもらえば近いかな。


「柄からもう一回り短く持てるようになっているんですわね」


「そだね」


当然長い剣なので両手で振るものなのだが、柄と鍔で区切られたもう一握り先も、握って振れるようにもう一段階の柄になっている。


―++~~~~

↑こんな感じの形状ね。


「この形状のおかげで相手に出血させやすいんだって。あと直剣よりも衝撃に強いんだって」


「色々考えますわね」


「そうだね」


やっぱり一番怖いのは人間ってやつっスね。


「それでエンチャントなんだけど、イメージとしてはやっぱり炎と出血かなー」


「ですが主様、炎と出血は相性が悪いのではないかと思われますわ」


「たしかに。傷口焼いちゃったら出血しなくなるか」


なんなら焼いた分だけ止血してるまである。


「んー、それじゃあどっちかだけど、やっぱり機能美的には出血かなー」


炎は見た目のイメージだけど、出血には実際に機能的な意味があるしどっちかって言われたこっちだろう。


「んじゃんじゃ」


フランベルジュに出血のエンチャントをのせる。


ちなみにこれは切れ味が上がるって効果ではなく、傷から血が止まらなくなる呪いを付与してる感じね。


そのまま試し切りで丸太に剣を構え、そのまま斜めに斬り下ろすとガンッと刃が食い込んだ。


まあ丸太は出血なんてしないんだけどさ。


ただ剣を手前に引っ張るように引き抜くと、ゴリゴリってノコギリを使っているような感触ですんなり抜くことができたのでわりと有用かもしれない。


あとエンチャントは基本的にお弟子さんの作った武器なら2種類つけられるけど、一種類にしてその分効果を強めることも出来る。


透視とかは込める魔力を増やしても意味はないから、二重エンチャするなら片方はこういうのが効率が良いかな。


ただぶっちゃけ19階層未満で配るなら許容量限界まで魔力を入れたエンチャントしなくても報酬の価値としては十分って話もある。


とりあえず思いついたお試しネタエンチャは全力でやってるけどね。




「短刀はどうしようかなー。消音と呪いでもつけようか」


「消音でしたら併せて闇属性を付与するのも良いかもしれませんわね」


「あー、それもいいね。じゃあ消音と闇属性にしよっか」


ということで出来上がった短刀は、握ると闇が染み出したように空間を浸食する。


まあ闇属性の効果は主にこれだけなんだけど、夜なら超見辛い武器で闇討ちに活躍してくれるだろう。


「ルビィ、これ投げて丸太に当てられる?」


「やってみますわ」


俺が刃を持って柄の部分を向けて渡すと、そのままナイフ投げの要領でルビィがスッと腕を振った。


その動きに合わせて闇が空中を流れ、無音で丸太に突き刺さる。


「お見事。消音のエンチャントもちゃんと効いてるね」


「お褒めにあずかり光栄ですわ、主様」


よく考えたらこのコンセプトだと、人間が人間相手に使うのが一番活躍しそうだなと思ったりもしたけど、ルビィの美しい技も見れたし細かいことは気にしないことにした。




「刺突剣はどうしよっか。なんとなく風属性のイメージがあるけど」


持ち上げたのはあっちの世界ならエストックって分類されそうな細長い剣。


他の剣のように斬るのではなく突いて刺すことを主眼とした武器だ。


細く軽量化されたその刀身は、逆に横から力が加わるととても脆い一面があるが、真っ直ぐにつければ鎧も貫く威力が生まれる。


「突きの一閃に風を纏わせれば、その鋭さを増すと共に相手の妨害もできるかもしれませんわね」


「そだね」


この武器にエンチャント出来るレベルの風属性だと真空波を飛ばして相手をズバッと切断する、なんて芸当は出来ないけれど、それでもバランスを崩すくらいにはなるんじゃないかな。


あと風を自由に操れれば、動作の補助も出来るだろうし。


「それじゃあ風属性で」


刺突剣を持ち上げて握りそのままエンチャントを施す。


そのまま丸太で試し斬りをしてみると、サクッと先端が突き刺さりそれに合わせて突風が生まれる。


風の勢いはどれくらいだろう? ちょっとした台風が来たときくらいかな?


まあ丸太は地面にしっかり固定されてるから飛んでったりはしないんだけど。


「いかがですか、主様」


「うん、突風もあるけど、振るのに合わせて風が後押ししてくれる感じもあるね」


実際にスッと突き刺す動作をしてみると、一瞬重さが軽減されて前方向に腕の動きが補助されてる感じがする。


なんか思ったよりも大分便利な感じだ。


「主様のご慧眼の結果ですわね」


「そんなことはないと思うけど……」


言いながら刃先と一緒に視線を下ろすと、隣に立つルビィの綺麗な足が目に入る。


…………。


「えいっ!」


刺突剣の先をほぼ真下に向け、そのまま軽く振り下ろすと風が生まれる。


そして床にぶつかった風は、反発するように下から空気を巻き上げた。


それに煽られてルビィの深いスリットの入ったスカートがふわった持ち上がる。


見え……、ない!


マリリンモンローみたいにスカートの中身が見えないかと思ったけど、残念ながらスリットが入っているせいで風が逃げてしまったようだ。


おのれスリット、いつもありがとうございます!


「主様。ご覧になりたければいつでもお見せいたしますわよ?」


「こういうのは、偶然見えるからいいんだよルビィ」


「とても偶然とは言えなかったと思いますけれど」


「たしかに、ごめんねルビィ」


「謝る必要はございませんわ。先程にも申し上げましたが、お望みでしたらいくらでも見ていただいて構いませんわ」


「それじゃあまた今度、お願いしようかな」


「はい、主様」


うん、また今度 。




そんなこんなで順番にエンチャントを施していく。


普通の付呪師なら魔力が尽きてとっくにダウンしてるんだろうけど、俺はダンジョンコアから溜め込んだ魔力をそのまま引き出せるので体力が尽きない限りは無限に働けるぞ。


まあ飽きたら休むけどね。ルビィに癒やされたいし。


ちなみに、用意された武器の中に刀はない。


お弟子さんにはまだ作れないらしい。がんばれ女の子。


「しかし、あまりダンジョンでは役に立たない効果の物が多くなりましたわね」


「そうだね。まあお外で役立ちつつうちじゃあんまり効果がないっていうのは防衛する側としては都合が良いけど。そのまま輸出されてけば冒険者側の需要も減らないし」


「なるほど、そこまでお考えだったのですね」


「ううん、偶然だよ」


「主様……?」


ルビィの信頼度が一旦上がってから急降下した気配がした。気のせいだといいなぁ。




「んで最後に残ったのがこれかあ」


目の前のテーブルに残っているのは正統派のロングソード。


「こんなんどうやったって面白くならないしなあ」


なにやっても無難に出来上がる感じがするのがほんとにダメ。


そう考えると最後まで残るのも必然だったのかもしれない。


「別に面白さを求めなくてもよろしいのでは?」


「まあ確かにそうなんだけど」


とはいえぶっちゃけ全力で遊んでたしね。


「でも楽しかったからしょうがない」


「そうですわね」


「また来月になったら一緒にやろうね」


「はい、主様」


と約束をしたところで、もう満足したので最後の一本どうするかなーと思ったんだけど、超大事なことをやってないことに気付いた。


「そいや、アレやってないわ」


「アレとは?」


かくかくしかじか。


「なるほど、確かに必要かもしれませんわね」


「んじゃー、最後の一本のエンチャント決定!」


と決まってそのままパパっとエンチャントまで済ませる。ちなみに試し切りは無しだ。


「お疲れ様でした、主様」


「ルビィもお疲れ様」


ルビィの労いの言葉に、俺も同じ言葉を返す。


やっぱり、作業を共にしてくれる相方がいると仕事も楽しんでできるね。


うーん、満足。

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