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042.鍛治屋と弟子②

「それでは、このあとこちらでエンチャントを付与させていただきますが、なにか希望などはありますか?」


エンチャントすることは前回の訪問で伝えてあるので、なにか要望などがあるかだけ確認させてもらう。


「こっちとしては特に言うことはないよ。逆に施したいエンチャントがあるなら先に言ってもらえばこっちで合わせるくらいさ」


「そんなこともしてもらえるんですか?」


正直、職人としてはあとから手を加えられるのには不満があるんじゃないかと配慮するくらいの気持ちなんだが。


「属性なんかをつける場合は素材や作り方も変わってくるからね。炎のエンチャントで高熱を出しすぎて武器が溶けちまったら使い物にならないだろう?」


「確かにそうですね」


そもそもエンチャントに協力的なことに驚いたんだけど。


「どちらにしろあたしは希望にそって最高の物を作るだけだからね」


「なるほど」


それはそれで潔いというか男らしいというかって感じだけど、まあこっちとしてもその方が都合がいいのでありがたい。


ということで、折角なのでいくつかのエンチャントの案を伝えさせてもらった。


「それではフリージアさんの作の品質は十二分であることを確認させていただきましたので、これからしばらくは期限無しで自由に武器を打っていただいて大丈夫です。実際に本日受け取った分を全て配るのもまだ先のことになると思いますので」


というか受け取ったのをそのままホイホイ配ったらダンジョン産の武器の質が急にインフレしすぎるから当分お蔵入りだ。


「ソノヤさんの武器は近いうちに配り始めることになると思いますので、また次回30日後までに大量に作ってもらうことになりますが」


「うえぇー」


とうめき声が聞こえたけど聞かなかったことにする。


「それでは次はこちらから。まずこちらが前回と同じ純鉄ですね。次にこちらがリクエスト頂いた微量の魔石を均等に混ぜ込んだインゴットとなります。含有量は5段階で、それぞれに刻印していありますのでご使用の際にはそちらをご確認ください」


言いながら、テーブルの上にインゴットを重ねて並べていく。


「こりゃありがたいね」


魔石自体は武器にできるような物じゃないんだけど、それを鉄に微量に混ぜ込むと、強度を増しつつエンチャントの許容量を上げることができるらしい。


詳しいことはわからん。


とりあえず彼女から指定された量だけの鉄インゴットと魔石を混合したからおそらくそれで試行錯誤するんだろう。


「魔石を可能な限り細かく砕いて混ぜ込むのは熟練の鍛冶師でもどうしてもムラが生まれて難しいんだけどね、これは完璧だよ」


話を聞くと込められる魔力量が通常の鉄の数倍以上になるんだとか。すごい。


当然魔力を込めれば本体の強度は上がるし、付与できるエンチャントの効果の量も上がるとのこと。


彼女としても魔石鉄を用意するのはコスト的にも作業的にも手間らしいので、結構喜ばれた。


まあ結果的に良い素材で良い武器を打ってもらえればこちらとしてもありがたいのでWIN-WINだ。


「それと特殊金属と魔物の素材の方は手配にもう少し時間がかかりそうなのでお待ちください」


鉄とは別に魔法的な特殊素材があるとのことで王都で調達を頼んだりもしてるんだけど、そっちは特殊なだけあって希少ならしくまだ用意できていなかった。


まあ魔石鉄が必ずしも武器制作でそれらの素材に劣る訳じゃないらしいんだけどね。詳しいことはやっぱりわからん。


「ひとまずこれだけあれば一ヶ月仕事するには十分だよ」


「それならよかったです。次回もまたお持ちしますね。あとこちらが追加の火の魔石と、他の各種魔石になります。水や風の魔石などは鍛冶の助けになるかと思い持ってきました」


次にテーブルに並べるのは各種魔石。


「わわっ、凄い大きさですね!」


置いた他の属性の魔石は前回渡した火の魔石ほどじゃないけれど、それでも金貨で数十枚はする大きさの物。


「氷の魔石とかは鍛冶場の温度を下げるのに使えますかね?」


ダンジョン内は常に快適だからほとんど使ったことないのよねこれ。


「特に夏場にはありがたいかもしれないね」


「それならよかったです」


「土も使わなくはないけど、流石に闇の魔石には用事はないかね」


「不要なら持ち帰りましょうか」


「そうだね、使わない物を置いておいても仕方ないからこっちは返すよ。他はありがたくつかわせてもらおうかね」


「ええ、ぜひ活用してください」


こちらとしても無意味に貢ぎたいわけではないので不要なら回収させてもらおう。


「それとこちらが今回の代金の金貨となります」


とマジックバッグから俺が取り出した金貨の袋の口をフリージアが覗く。


「前回話した時も思ったけどね、流石にこの量は多すぎるよ」


「世界一の鍛冶師の仕事となれば対価としてこれくらいは当然だと思いますが」


テーブルに積まれた金貨の袋は数えるのが億劫になるほどの枚数だ。


ぶっちゃけうちのダンジョンの懐事情からしても、気軽に渡せる金額じゃない。


まあ今回は急ぎで数を頼んだからその分次回からはもうちょっと落ち着いた枚数になるだろうけど。


「あたしは基本的にここから出ないからね。これくらいあれば十分だよ」


とそこから抜いたのは軽く一握りで金貨10枚ほど。用意された金額からすれば本当に一握りだ。


「しかしそれでは……」


「それにあんまり大金を持ってても強盗を寄せ付けるだけだからね。ここで使い切る分の鉄や魔石はともかく、大量の金貨なんか危ないだけだよ。それに素材をそっち持ちにしてくれてるんだからそれで充分さ」


つっても流石に金貨10枚はなあ。それ自体は端金でもないけれど人間国宝級の職人に武器を10本近く打ってもらった対価としては安すぎる。


「それでは、残りの金額から必要経費を引いた分をこちらで預かっておくという形にしておきますので、もし必要になれば仰ってください」


「律儀だねえ、あんたも」


呆れたように笑う彼女だが、まあこれくらいの誠実さは見せておいた方が良いだろう。


「師匠! あたしの分もちゃんとありますかっ!?」


「ああ、すっかり忘れてたよ。返してすぐでなんだけど、それじゃあもうちょっと貰うよ」


「ええ、何枚でもどうぞ」


受け取りかけていた袋を再び差し出すと、そこから彼女が金貨を3枚ほど、親指で弾いて器用に後ろに飛ばす。


「ありがとうございます!」


それも彼女の労働の対価としては安い気がするが、まあ師弟間のことに部外者が口を出すのはやめておこう。こっちは損しないし。


「それじゃあ今日の話はこんなものですかね。なにか要望とかありますか?」


「魔石鉄は試してみないと何とも言えないからそこはまた次回かね。ああそうだ、ひとつ用意してほしい物があったんだった」


ということで彼女からひとつ要望が伝えられる。


「なるほどなるほど、それでは次回までに用意してきますね」


「よろしく頼むよ」


「お任せください」


「よろしくお願いします!」


挨拶も済んだので、そのまま俺とルビィはおいとますることに。


「そんじゃルビィ、帰ってエンチャントの練習でもしようか」


「はい、主様」




次回、エンチャントをしよう!

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