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018.ダンジョン繁盛期

初日にはシルバー冒険者たちの後にブロンズ冒険者が一組三人、スケルトン1体にも手こずる彼らは丁重に捕虜にさせてもらった。


二日目にはブロンズ冒険者とアイアン冒険者が一組ずつ、計二組七名が来たので前者は多少の魔石を手に帰ってもらい後者は宝箱の罠で捕虜にさせてもらった。


三日目にはアイアンブロンズ合わせて十二組、計四十名が来たので、四組を帰して八組は捕虜にさせてもらった。


この時点で訪問冒険者合計は五十人。内捕虜は三十名。捕虜多すぎ!!!


ちなみに三日目に急増したのは、二日目に帰した冒険者の情報と共に、初日に来たシルバー冒険者たちが中で多数の魔石を発見し持ち帰ったことが知れ渡ったかららしい。


ぶっちゃけ捕まえすぎかなと思ったけど、朝から冒険者が増えてきて通路がパンパンになりそうだったのでスケルトンとスライム総出で全力捕獲させてもらった。


この時点で一日の魔力収支は持ち出される魔石や財宝を抜いても1000を超えたので、少ししたら2層は拡張できそうだ。


四日目の冒険者は七組。


五日目は五組。


この時点で数が減っているのはそもそも気軽に挑戦しに来る冒険者の多くは捕虜にしてしまったことと、その捕まえた捕虜がまだ解放されていないことに起因すると考えられるので特に焦る必要はない。


とはいえ捕虜の処遇と活用方法は急務だったのでそちらに労力の多くを割かれていた。


捕虜の初日は尋問タイム。これは前例とデータがあるので初日で済む場合が多い。


高ランク冒険者がいたらじっくり話を聞きたいんだけどまだうちのダンジョンには初回以来来てないしね。


二日目からは労役タイム。これは冒険者のクラス毎にやってもらうことを変えたよ。


実際にはこんな感じ。




CASE1.ブロンズ治癒師のクリスティーさん(女性)の場合。


「こんにちは」


「こんにちは」


俺があいさつをすると牢獄の彼女も自然に挨拶を返してくれる。


ちなみに今は変わり身の遠隔人形に銀色の仮面を被せて操作していので安心安全だ。


「まず最初に質問ですが、あなたは治癒の魔法を何度使えますか?」


「二回です」


「よろしい。では私の後についてきてください」


「どこに行くんですか?」


「あなたには、他の冒険者の治療をしてもらいます」


「え?」


疑問符を浮かべる彼女を余所に、牢のカギを開けついてくるように促す。


「ちなみにここから出るには転送陣を通る必要があり、それには私の許可が必要なので変な気は起こさないようにお願いしますね」


「ならあなたを人質にしたら?」


「あはは、その場合は命の保証はできませんね」


軽く笑うと彼女は困惑の表情を浮かべている。


まあそんなことはどうでもいいんだけど。


鍵で個室の扉を開け、中に入ると更に鉄格子があり、その奥に独房という構造になっている。


あっちの世界なら座敷牢を思い浮かべてもらえばわかりやすいかな。


その牢の中に冒険者が一人。


「あの人は?」


「先ほど捕まった冒険者の方ですよ。怪我をしているので治療をお願いします」


そう彼女に伝えてから牢に近寄り中へと声をかける。


「こんにちは、お加減はいかがですか?」


「いてて、いかがもなにもまだズキズキ痛むぜ」


「では治療いたしますね、痛む個所を見せてください。といっても治すのは冒険者の彼女ですので、終わったらちゃんとお礼を言ってくださいね」


「まあ治療してくれんなら文句は言わんけどよ」


男が鉄格子の前まで近寄り足を見せると、そこは赤くなっている。


「ではお願いします」


「はい、『傷よ癒えよ』」


治癒師の彼女が魔法を使うと、患部の赤みがすっと引いていく。


「傷の具合はどうですか?」


「まだちょっと痛むな」


「そうですか、すみません」


治癒の魔法は効果にブレがあるので、術師の実力によっては一度で完治しないこともある。


「それならもう一度、魔法を使ってもらっていいですよ」


「いいんですか?」


不思議そうな顔をする彼女に笑顔で答える。


なるべく効率よく回復させたいなら細かい傷は放置したほうが多い人数を治療できるけど、個人的にはそれよりもスムーズにノルマが終わったほうが楽でいい。


「ええ、まだ一回使えますよね?」


「はい、それじゃあ。『傷よ癒えよ』」


彼女が魔法を唱えると、男は具合を確かめるように足を軽く動かしてみる。


「おお、すっかり良くなったよ。ありがとな嬢ちゃん」


「いえ」


「それじゃあ戻りましょうか。あなたには後でまた質問に答えてもらいますので、寝ないで待っててくださいね」


「こんなところで何してろっていうんだよ」


「筋トレとかおすすめですよ。それでは」


ということで再び部屋を出て鍵を閉め、そのまま治癒師の女性も部屋に戻す。


こっちで工夫すればもっと快適に過ごしてもらうこともできるけど、ぶっちゃけあんまり快適にしすぎて居着かれても困るので、暇を持て余すくらいで丁度いいので我慢してもらおう。


「あの、これだけでいいんですか?」


「ええ、これをあと三日繰り返していただければ、無事解放して差し上げますよ」


「はあ」


「何か不満でも?」


「ああいえ、ずいぶん簡単に終わったなと思って」


「これで十分ですよ。ああそうだ、もし明日以降に使える魔法の回数が増えていたら教えてくださいね」


「はい、わかりました」


「それではこれで」


そのまま俺が部屋を出ると、彼女はどこか腑に落ちないような顔をしていた。




CASE2.アイアン魔術師のケケスラーさん(男性)の場合。


「こんにちは」


「こんにちは」


「一つ質問なんですが、その姿勢で疲れませんか?」


ひげを長く蓄えた彼は胡坐で床に座り背中をピンと伸ばし、瞑想するようなポーズをずっと保っている。


「ええ、ダンジョンに捕まればそれは即ち死。ですからこうして身を正してお待ちしていました」


「いや、死んでもらう気はないんですが」


「そうなのですか?」


「ええ、というか昨日も言いましたよね?」


「そうでしたかな? はっはっは」


だめだこのオッサン。


「それでは、あなたは水を出す魔法を何度使えますか?」


「6回ですな」


「それでは、ここに桶を用意するのでその中に水をお願いします」


「6回分ですかな?」


「ええ、一杯毎に桶は取り替えますので待ってくださいね」


「ちなみにその水はいったい何に?」


「捕まっている冒険者の方々の飲み水ですよ。わざわざ用意するのも大変なので」


「なるほど、それでは張り切らいないといけませんな」


「ええ、よろしくおねがいします」


牢を開けて桶を用意すると、彼がそこへと手をかざす。


『水球!』


唱えると同時に生まれた水の球が、そのまま桶へばしゃんと落ちる。


大きめにしておいてよかった。


「それではあと5回お願いします」


「かしこまりましたぞ」


同じ作業を繰り返し、足元には桶が六つ。普通に邪魔。


「それでは、このうちの一つはそのまま置いていきますので、明日までこの水を使ってください。同じことをあと3日繰り返していただいたら解放となります」


「お待ちしておりますぞ!」


「明日は最初のやり取り繰り返さないでくださいね?」


「はっはっは」




CASE3.ブロンズ斥候のコルネロさん(男性)の場合。


「こんにちは」


「何の用だ?」


陰気な男が不機嫌そうに答える。


冒険の最中はずっとフードを被って口元も隠していたので、素顔が晒されている現状が不満なのかもしれない。


まあ彼とはお友達になりたいわけでもないので別にいいんだけど。


「貴方は鍵開けはできますか?」


「ふん、馬鹿にしてんのか?」


「いえいえ、出来るならそれで結構ですよ。では実際にやってもらいましょうか」


言いながら取り出したのはノーマルサイズの宝箱。


「素手で開けろってのか?」


「当然、道具もちゃんとありますよ?」


ということで宝箱の隣にロックピックを並べる。


「開けりゃあいいんだな」


「ええ」


頷くと、彼は宝箱の前に座り込んで鍵穴へ向かう。


あんまり低いと腰に悪そうだなー。ちょっと上げ底の宝箱とか考えとこう。


なんて俺の思考を余所に、手慣れた手つきでカチャカチャと鍵穴を弄り、そのまま回して蓋を開けるとぶわっと煙が舞い上がった。


「くそっ、なんだこりゃ!」


「あー、失敗ですね」


「なんでだよ、俺はちゃんと鍵は外したぞ!」


「それはですね、鍵の他に罠が仕掛けてあったんですよ。もしその粉が毒だったら今頃倒れてますね」


「聞いてねえ!」


「罠が仕掛けてあるって教えてもらわないと解除できないんですか?」


「てめえ……」


「ということで、もう一個宝箱があるのでそれを解除してください」


「やってやるよ、おらよこせ!」


「はいはい、100数えるまでに開けられなければ失格ですからがんばってくださいね。いーち……」


数え始めると素早い手つきで彼が鍵穴を弄り始め、そのまま中の仕掛けの特定にかかる。


結局彼は100秒直前に蓋を開け、また粉まみれになっていた。


探査役の人たちは他のクラスに比べて捕虜にした時の魔力回収効率が良くないから、なにか良い感じの方法考えないとなー。




CASE4.アイアン剣士のサポカさん(男性)の場合。


「こんにちは」


「おっ、もう解放?」


「いえ、残念ながらまだです。今日はやってもらいたいことがあるので着いてきていただけますか?」


「まあいいけど、牢屋の中で暇してるのも飽きてたし」


「ではこちらへ」


ということで彼を連れ立って牢の並ぶエリアを抜け、扉を開けると広いスペースに出る。


広さは学校の教室くらい、部屋の中は明かりを強めに炊いてあり、奥にはスケルトンが複数体座っている。ちなみに正座ね。


「それではこれをどうぞ」


俺が彼に木剣を渡すと、奥のスケルトンの1体がすっと立ち上がる。


「これから貴方にはスケルトンと戦ってもらいます。1体ずつ戦って全部倒せば今日の作業は終了です。怪我には気を付けてくださいね」


「全部倒せなかったら?」


「アイアン冒険者ならこれくらいの数は余裕でしょう? まあ全部倒せなくてもペナルティーとかはありませんが」


「ふーん、まあいっか」


納得してくれたようなのでその場から少し離れると、彼は自然体のまま前に出てスケルトンの初撃をさっとかわしてそのまま頭蓋骨を横凪ぎで弾き飛ばした。


「お見事」


やっぱブロンズとアイアンだとかなり実力差あるなー。あの人がアイアンでも上澄みなのかも知らないけど。


それから順番に前に出てくるスケルトンをパコンパコンと打ち据えていく姿は手慣れたもので流れ作業のようだった。


あれでもスケルトン自体は金属の剣を持たせたら、野生の猪くらいなら普通に狩れるくらいのスペックあるのに凄いわ。


「これでいい?」


「はい、お疲れさまでした」


全てのスケルトンを倒し終えた彼から木剣を受け取りながら、これからの戦力強化をどうしようかなあなんて考えつつ部屋を出た。




そんなこんなで捕虜から魔力を回収する方法を一通り確立させ、そんな中でトラブル解決に奔走しつつも六日目。


ここで初日に捕まえたブロンズ冒険者一行を解放すると、その噂が流れたのか翌日にはまた冒険者の人数が一気に増えた。


「ルビィ! 2F作ろう!」


「はい、主様」



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