缶コーヒーは、ポーカーフェイス。君。
知らない歌 頭の中で探して 検索に引っ掛からないから
勝手に創作 心の中にある自分の言葉 つなげて
月曜日の朝は憂鬱だから はねのけて
自転車こいで 歌い出す アイツの背中に 「おはよう!」
君に会える朝で 変わってしまう不思議
なんてことない君の言葉 描きかけの私の恋愛小説にはさむ
一人読む 放課後の机の上 静かな図書室
運動部の練習の掛け声と 吹奏楽部の音
君とは別世界
恋は病なんて言葉
入院でもしてたら君は── 私に 会いに来てくれるのかな?
花束とか 気の利いたものなんて持たずに 手ぶらで眼の前に現れてさ
どこからともなく缶コーヒー 握りしめて ポーカーフェイス
「飲めよ」 なんてぶっきらぼうに 私に差し出すペットボトル
それだけでも十分嬉しいって 一緒に売店の自販機コーナーでも 君と
君の 「行こっか?」 と 私の 「何買う?」
光るボタン押す 運命のコイン入れた君
その指先と横顔をただ見てるだけの瞬間 音立てて落ちるペットボトル 特別だよ
君じゃないといけない 二度とない時間 待ってはくれない 理由なんてない
心の中の 私の中の ただ一つを除いて
繰り返す──
「飲めよ」 なんてぶっきらぼうに 差し出すペットボトル と 君の言葉
「ありがと」 なんて短い私の言葉 けど本心は 小説くらい長くって
私の中にある 打ち明けられない気持ち 物語になるくらい
そこから始まるの? ──って言うくらい
想い託した言葉 口にふくんで
君からもらったペットボトル いつか二人で── なんて
──いつか。
今日は水曜日で、終わりのチャイムが鳴って 我に返る 私は席を立つ
借りた本 と 挟んだ栞
誰にも知られずに描いた君のイニシャル
落とさないようにして
鞄の中にしまう
本棚には『只今、貸し出し中』
誰にも見つからないようにして
明日の一限目は世界史の授業
君との選択科目
2023回目の春──、迎える前に
クラス替えする前に
言わなきゃって、
私の中にある言葉
君があててくれたなら──って、そんな風に想う
私の心の中にある一番の理由を 言葉にして
私の描いた恋愛小説に そっと、はさむ
白紙のままのページ
未来は、これから