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ヒカル。嫁?と再会する


「ちょっとパパ!? 大丈夫なの?」

「…ダディ?」

「…っはは。…お前らミイチューバーって」


娘達がなりたいという"ミイチューバー"ってのは世界的な超巨大動画コンテンツ投稿サイト"ミイチューブ"の動画投稿者の総称だ。

動画の広告費とやらだけで城を建てた奴すらいるとかどうとかと…?


「だってさあ! 元の世界じゃあパパもママもガッコの先生もそんなものになろうとするよりも勉強して良い大学に入れって言ってばっかなんだモン! ね? ソラ」

「……ん。みんな反対」

「イヤ、別にミイチューブに動画を投稿するのは悪いとは思ってないぞ? パパもママもだ。…ただなあ、まだ将来の選択肢があるのにさあ? それだけで食っていこうってのはいかがなもんかと誰もが思うし、親だったら可愛い娘のことならなおさらだろう? というかドレミよ、最近投稿したダンスするやつ。…アレだってないんじゃあないか? なにもあんなけしからん恰好で踊らんくても…」


ドレミ達は最近ミイチューブに自撮りのダンス動画を投稿してたんだが、恰好がかなり際どくてなあ。なんかコメント欄に書かれたセクハラジジイみたいなコメントを俺が通報しまくった記憶がある。


「ぷう~っ! いいじゃんあの衣装!メッチャフリフリで可愛いかったし!再生数もかなり伸びたんだよ? ソラもちゃんと着てくれたらよかったのに…(ジト目)」

「(プイ)……あんな恥ずかしいカッコ。…ダディにしか見せない」


そうだった。家に帰宅したら玄関にソラが件の衣装で俺を待ち伏せていて盛大に吹いたのを思い出したわ。まあそれで動画の存在もバレて家族会議を執り行ったわけだがな。


「…先輩。娘さんの動画の衣装ってどんなのだったんですか?」

「うるさいぞ。この偽エルフめ。お前は娘達には近づくなよ? 話しかけるのも許可せんぞ!」

「このバカアニキ!下手したら事案よ!事案!」

「うるせーぞシゲ!もう見れないんだから少しくらい聞いたっていいだろ!」

「うわっ!? 誰この人! 耳長っ」

「……エルフ?」


ドレミ達のターゲットがエロエルフに移った。

ドレミに撮影許可をねだられたエルフが好き勝手にポーズを決めている。

あ。妹のドワーフにわき腹を突かれて悶絶してやがる。自業自得だ。


「…でだドレミ。その【ミイチューブ】ってのは具体的にどんなスキルなんだ?」

「ん~実はまだよくわからないんだ。元の世界の神様担当だってひとに頑張ってお願いしたら貰えたんだけどね? 一応、私の眼と耳で撮影した動画を前の世界に投稿できるとこまではわかってるんだけど。詳しくはコッチの世界の人に聞けってさ。…でも神様ってあんな普通の男の人だったんだね?」

「………モヤシだった」

「はあ。お前達は会ったのか? その、俺達を選んだ神様に?」

「「うん」」


俺達をこの異世界に送り込んだ張本人。神だか何だか知らないが勝手しやがって!

俺ならぶん殴ってやるんだがな。


俺が考え込んでると周囲が急に騒がしくなった。

特にこの謁見の間の左右に控えていた衛兵達が騒がしい。

なんというか黄色い声が含まれている。

ん? てか今更だがあの恰好といい、女ばかりじゃあないか?

…ああ。この世界じゃあ女神の加護とやらで女の方が男よりも強いんだったか。

なら、荒っぽい仕事に女がいても不思議じゃあないのか?


「ちょっと見て!すっごいイケメン!?」

「うわ!? ホントだあ」

「オイ!お前ら王の御前だぞ!」

「で、でもぉ…」

「本当に見れば見るほど…ゴクリ」


女達の反応が少し異常じゃあないか?

よく見れば俺の周りのコイツらもまるで憑りつかれたかのように一点を凝視している。


「…ひー君?」


そう俺を呼ぶのはこの世でたったひとりだけだ。


俺がこの世界で誰よりも愛する女…ただひとりだけ!?


…顔が熱い。溢れ出す涙で視界が歪む。


「…ふ、ファ! お前か!?」


俺は声を掛けられた方向を向いた。

そうだ、残った転生者は俺の嫁のファだけだ。

娘達の件もある。だからもしかしたら容姿が大きく変わってしまっているかもしれない…


だが、構うもんか!俺達は家族だっ!


「ファぁ~!」


俺は腕を広げると相手は俺の胸に飛び込んできた。


「良かった!ひー君無事だったんだんね!」


俺の胸の中には涙をこぼすもの凄いイケメンが居た。


「…っえ!? ど、どなたああああぁあ!!?!」


俺は絶叫を上げてしまう。


「…あ。驚いちゃったよね? …私だよ。ひー君の奥さんの、ファ…だよ…?」

「う、嘘だろおおおおぉオおおお!? 神様あぁぁァ~~~~!?」

「ええ!? ホントにママなのお!?」

「……マミィ!?」


神は死んだ。俺の中で。


その後、俺達家族の名前や誕生日や好物とかの質問合戦があったんだが。

その結果間違いなく目の前のイケメンが俺の嫁さんであるファで間違いないことが確定した。


「ほ、本当に…ファ、お前なんだな…?」

「うん。ビックリだよねこんな姿になっちゃって…」

「うわぁ~ホントにママなんだあ!」

「……マジ美形」


俺達は唸りながら光り輝くイケメンを囲んでジロジロと舐めるように観察する。


…確かに良く見ればイケメンというよりも美少年?

顔も体つきもどことなく中性的だ。

恥ずかしがる仕草に俺の嫁さんの面影を感じる。

……イカン!恥ずかしがる姿を見ていたら何故か動悸が…!?


「…でね。その…ひー君にちょっと相談があるの」

「な、なんだ?(ドキドキ)」

「ちょっと近くまで来てくれる?」

「お、おう…」


顔を近づけた俺の耳元で彼女?が何かを囁く。

めっちゃコチョばしい!思わず身をよじりたくなるだろ!


「…………たの」

「え? なんて?」

「………えちゃったの!」

「オイオイちゃんと言えよぅ」


顔を真っ赤にしながらファが叫ぶ。


「ア、アレが生えちゃったのお!!」


俺は一瞬思考がストップし、周囲の娘やエルフ達は何かを察したのか気まずそうに押し黙ってしまった。


「…アレってお前? あ、アレだよなあ?」

「うん…!」


俺は絶望した表情を浮かべてしまう。


「…はは。ま、まさか性別まで変わっちまうってのかよ?どうして…!」

「……多分、私がちょっと特別なんだと思う」


女神ミラの言葉が記憶から蘇る


『…あなたの奥様である。モスカワ・ファさん。彼女は特別な魂の持ち主なのです。我々の世界の輪廻から弾かれた魂が存在したように。あなた方の世界にも同様に存在するのです』


そうだった。俺達はあくまで数合わせに過ぎないようなものだった。

…信じたくなどなかったが。


「でね、ちょっと勝手がわからなくて…恥ずかしいから、ひー君に見て欲しいの…」

「え!? ちょ、待てって! まさかここでか…」


彼女は顔を赤らめながらも俺の手を引っ張る。


その姿を見て周囲の雰囲気が変わる。


「え!? なにあのオジサン!」

「ま、まさかの…BL?」

「うわあ~あんなイケメンがあのオジサンと…!?」

「ハァハァ…」

「ちょっと…アンタ息荒いわよ?」

「あ、アンタだって…!」


なんかもの凄く気持ち悪い視線を感じる。


「あ、あのさ? その妻の様子を確認したいんですが、少し外しても?」

「お、おうよいぞ? …信じられぬが、その若者がお主の妻だというのであれば儂らも強く嘴を突っ込むこともできぬじゃろ…のう、宰相?」

「ハァハァ… え!? え、ええそうですね!」

「……涎を拭かぬか」


俺は彼女に手を引かれて丁度皆には死角となっている扉近くの像の物陰に入る。


(数分後)


憔悴しきった顔の俺とモジモジした彼女が近くの衛兵に何か聞いて扉から外へと急いで出ていく。


「……先輩。とっても聞きづらいんですけど。その…どうだったんスか?」

「…ちょっとタケシ君! 気になるのはわかるけど…君ってひとは」

「…ああ、いいんだロッテヅカさん。そりゃあ俺も思うところがあるが、今後とも付き合いのある皆にも知って欲しい」


俺は彼女が特別な存在、今回の転生の中心人物である事を伏せた。

言わないほうが余計なトラブルが避けられると思ったからだ。

いやむしろ感謝されるのか?

ここにいる大半が元の世界から別の世界へと行きたがっていたんだから。


結果を言えば俺の嫁さんのファは男になっていた。

厳密には男性器が生えていたのだ。

そりゃあ立派な。


彼女が「もしかしたら、ひー君のよりも大きいかな?」とクスリと笑ったとき正直死にたくなったのは俺の一生の心の傷となろう。なに彼女を恨むことなど無い。全ては俺が悪いのだからな。


…しかし、同時に女性としての部分も持っていたのだ。

つまりあれだ。


フタナリだ。


この用語を知らない人はとても健やかな人生を歩んでいるんだろうな。


でもあえて言おう。意味は自分で調べろ!そこで自身のニッチな性癖に気付いても俺は知らん。

…いや、今後も彼女を妻として扱うならばその辺の理解が俺にも必要になってくる?


…むしろ、俺が妻の立場となる日がやってくるやもしれない。


顔を青くして体育座りをした俺を周囲が心配してくれる。


「…先輩。顔色が良くないですけど?」

「…バカアニキ。そりゃあ仕方ないでしょ? だって自分の実の奥さんなんだし…」

「おじさん…大丈夫かな?」

「…パパ。私はイケメンになっちゃったママも大好きだよ!」

「……ダディ。マミィはマミィ」

「うん。私にはこんな事しか言えないけど、こうして家族がこの異世界でも一緒に暮らしていけることにむしろ感謝するべきだと思うよ。そう気を落とさないで。そういえばその奥さんは…?」


俺は自分自身で何度も頷くと口を開く。


「ああ、そのトイレだよ…まあ色々と最初は勝手が違うから戸惑うはずだ。…うん。うん!そだな!こうして家族が揃ったんだ!チョット見た目が変わった…チョットじゃあないが、変わったくらいがなんだってんだ! 俺はモスカワ・ヒカル! アイツの旦那で、アイツは俺の嫁だ!それはこの異世界でも何も変わらん!」


俺が勢い良く立ち上がって叫ぶと、周囲から「お~」と謎の声援が上がった。


そうだこの異世界でも俺は家族を守って生きればいいだけじゃあないか!



「…おや? 余の知らぬ間に、なにやら楽しい催し物に興じていたようではないか?」



その時だった。

天井の大穴から極寒の冷気を纏った嘲笑が謁見の間に響き渡った。



【異世界転生の影響】


モスカワ・ファ(?)美人幼な妻→超絶美少年(両性)


次回。本当のラスボス登場!ご期待ください!

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