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ヒカル。王様に会う


俺達を王城へ召喚する使者が来たらしい。


「やけに早いが…まさか!」

「はい。…姫殿下が戦場からお戻りになると報告があったのかと思われます…」


神官のコネリーが初めて苦い顔をしてみせる。


「…そうか、あの方であれば例え世界の裏側にいたとて丸2日あれば容易く戻られるであろう。…ならば陛下の判断は正しいのであろうな。…皆様には大変申し訳ありませが、本来予定していたよりも早く皆様にここから移動して貰わねばならなくなりました。まだお聞きしたいことはあるでしょうが、どうか今は王城へと向かわれて下さい…!」


コネリーが俺達に向かって深く頭を下げ、周囲の信徒もまた同じく頭を下げる。


「ちょっと待ってくれ!? 俺以外の転生者はどうなるんだ? …その中にコイツの妹や俺の…嫁さんや娘もいるんだが、一緒になれるまでは待ってもらえないのか?」

「…!? 他の転生者が女性と言う事は知っていましたが、あなたのご家族であると…ふむ。到着次第、私が王城へと必ずお連れします。先に男性転生者だけが謁見を問題無く終えられれば…むしろ女神の計らいに感謝すべきだな。…いかにあの方とはいえ、同じ女性を害することはないはず。…ペン!皆様に同行し、王城までお連れしろ!」

「はい! …テスラ・ミラ。転生者の皆様、お初にお目にかかります。同じくゲドの神官のペンと申します。私が使者と共に皆様を王城までお連れします」


俺達は納得できないまま神殿の外に着いた乗り物の中へと誘導される。

立ち上がると3メートルはありそうなケンタ君も余裕で乗り込める馬鹿でかいまるで家の様な馬車だった。

最後に俺が馬車に押し込まれている時、コネリーが話掛けてきた。


「ヒカル様。そして他の転生者様。あなた方は今後、この世界に疑問と不安を感じせざるを得ないこととなるでしょう。ですが、慈悲の神であられるゲド様がおわす、このゲド神殿の門はいつでも開いております。いつでも我らは皆様の助けとなりましょう!どうぞ、いつでもお訪ねください!」


そう言ってコネリーと他の信徒達が頭を下げると、使者の手によって馬車の分厚い扉が閉められた。



 ●〇●〇●



馬車の移動と歩きで1時間ほどか?

俺達は城へと入り、その謁見の間とやらの前の馬鹿でかい扉…恐らく3階建てくらいはある。その前まで来ていた。


「まもなく開門です。我が国王陛下は大変お優しい御仁です。よほど礼を失さねば問題はないかと思います…」

「開門っ!!」


もの凄い重低音を響かせながら目の前の扉がゆっくりと開いていく…!

敵地ではないと理解していてもおっかなびっくり中へと進んでいく。


中は先程の神殿よりも広く思えるほどの荘厳な造りだった。

天井が高い。15メートル以上は軽くあるな。

何故かドーム状の天井の中央に大きな穴が開いている。

天窓か?


「どうか、私に倣ってくださいますよう…」


大体部屋の中央くらいまで歩いたあたりで、ペンがそう言って片膝を付き、頭を深く下げる。

俺達も慌ててそれを真似た。


「…おぉ~!? なんかすっごいファンタジー感で出てません? 先輩っ!」

「…馬鹿。真面目にやれよ?」


どこか緊張感のない後輩に呆れていると、前方の檀上から声が上がる。


「…面を上げよ」


俺はその声を重く、とても威厳のある声だと感じた。

思わずゴクリと唾を飲み込んでしまう。

恐る恐るゆっくりと顔をあげると、檀上の玉座にはひとりの厳しい表情をした男が座してした。

かなり高齢のようにも見えるがその瞳はまさに王者の風格が宿る。

どうやら人間…俺と同じヒューマンではないようだな。顔は近いが。王冠を乗せた頭上には獣の耳が付いている。


「……テスラ・ミラ。もう楽にしていいぞい、お主ら。てか儂が疲れるから? そんなに緊張した顔を並べられちゃうとさぁ~。 あ、儂も姿勢崩していい? いいよね?」

「「…へっ」」

「国王陛下。…仮にも異世界からの来訪者の前なのですぞ? もう少しご自制なされては…あ、根を張らないで下さい!」

「えぇ~? 宰相、お主は相も変わらず厳しいなぁ~」


その雰囲気の豹変ぶりに俺達は脱力し、思わずズッコケそうになる。

というか、あの王様の種族なんなんだ?

獣人とかのタイプかと思えば…服の下から木の根が生えてきているぞ?


「ん? ああ。そういえばお主らの居た世界はヒューマンしかいないんじゃったか。儂の種族が気になるのかのう? のう、神官よ?」

「…は!急な招集にてまだ説明の途中でございましたので…」

「それはそれは!仕方なきこと仕方なきこと。この陽の節の良き日になれば。氷の節が来る前に事をすませねばなるまいよ!血も凍らせるほど美しいあの姫様がお戻り遊ばれれば、我らどころか陽の節すら裸足で逃げ出すことでございましょう!あらよいよい♪」

「道化よ。話の腰を折るでない。…まあ、まったく持ってその通りじゃがのぅ。我が娘…アイツが戻ったら謁見どころじゃないからの」


…アイツ? その姫様とやらがそんなに物騒なのか?


さっきから気になってはいたが、檀上には宰相と呼ばれる女性の他にもうひとり男が居た。

ふざけた表情でわざとらしい動きをしながら踊るように金色の楽器を鳴らしている。

なんの種族かわかないような黒い衣装と派手なメイクをしている。

というか音が外れまくってて気になるわあ~アイツ!

てかなんだろあの楽器? 琵琶? ギター? …不思議と気に掛かるなような?


「あ、スマンスマン。儂はね、グロウキメラって種族なのよ。まあぶっちゃけ混血が進み過ぎてどんな姿で生まれてくるかわからん謎種族なんじゃけどね~」

「はあ…陛下、お言葉が…。陛下の種族は王族のみに限られたクラスです。その血を引く者はどんな者とも子を成せるだけではなく、多様な姿と能力を持って出生されるのです。例えば陛下であれば…上半身はドワーフで頭部はロバ系の獣人。下半身はトレント族のものですね。他の種族ではありえぬハイブリットでしょう?」


めっちゃカオスな種族じゃん。 

え? ドワーフ? ロバ耳? でも下半身は植物なの?

意味がわからないよ。

……少なくとも俺はあの種族に生まれたくはない。


「すごいじゃろう? ちょっと小腹が空いてもその辺の地面に脚をぶっ刺せば大抵ごまかせるしの」

「陛下…」

「冠被ったロバの王。足が根っこださあ大変!いやいやこれなるは冠被った草の王。ドワーフの顔が咲く世にも奇妙なロバの草!あらよいよい♪」

「これ道化っ!? 不敬っ! コレもう不敬罪だよね宰相! ねえ!」

「……この場でそんな事を言っても笑って許される立場が彼ですから。クス…仕方なきことかと…」

「……無茶苦茶言いますね、王様相手にアイツ」

「…そうだな?」


言ってることが支離滅裂だったが、あんなのでも王様の隣にいることが許されている地位にいるのだろうな。


「…はあ。臣下に弄ばれて辛いのぅ。もういいや、本題に入ろう…それにしても世にも珍しい男の(・・)エルフ。幼い賢人(ワイズ)にやけに小さな巨人族(ジャイアント)。そして恐ろしく金髪が似合わぬヒューマンときたか。改めて異世界へようこそ転生者諸君!儂はファーフィールド国王、タンゼン・ファーフィールドであるっ!女神ミラからの神託により諸君らの今後の面倒をいくらか見る約束じゃ!今後そのほうらがどう過ごしたいか、この場で聞きたく思う。よいか?」


うるさいよ…!想像とは違ったが、凄く優しい王様で良かったけどもう1回心の中で言わせてもらうぞ?

うっせーわぁい!? 俺が好きでこのヘアスタイルになったわけじゃねえ~!!

文句ならお前らの女神様に言え~! バーカ!


 ●〇●〇●


「ふむ。ふむ。…ではエルフのタケシムよ。お主はエルフの森を目指すとな?」

「はい! 是非とも同族の美しいエルフの女性とお近づきになりたい所存です!」


おいやめろ、このスケベエルフ。あの王様が若干引いてるぞ?


「お、おぉう…どう思う? 宰相」

「はあ。まあ本人の自由かと。…ここであまり現実的な事を言うのは少し酷かと」

「そうじゃな…あい、わかったぞい! 次に…オサム達じゃが…」

「はい。私はさきほど打診して頂いたように、王城で今暫しお世話になりたく思います」

「ふむ。この世界の知識を学びたいとな?」

「はい。…できれば彼も同じ扱いをして頂ければと…」

「…………」


ケンタ君がロッテヅカさんの後ろ、いや遥か頭上から王様達を不安そうな眼差しで見つめる。


「ふーむ。どうにもおかしいと思えばまだ10の少年であったとはのう。難儀なことよ。よろしい!その方らは王城で過ごすことを許そうぞ。…宰相。彼らに住居の用意を。あ巨人族でもオッケーなとこでの?」

「かしこまりました」


ふたりは互いにホッとした表情を浮かべる。


「で、最後にヒカルとやら。お主はこれから来る家族の転生者と暮らして生きたいとな?」

「はい! …私には妻とふたりの娘がいますので」

「う~む、まずはお主の家族の無事を確認せねばならぬの。しかし、それに関して特に問題はない。まあ新たな住居や仕事を探すときは多少なりとも我らが助力しようぞ?」

「……ありがとうございます」


俺は少し泣きそうになっていた。

異世界に来てはしまったけど…また家族で暮らせるという希望に…!


「失礼します! 陛下、残りの転生者の方達が到着いたしました!」

「ほう。やっと来たか! 良いぞ。順に通すが良いぞ」

「!? …ファ! ドレミ! ソラ…!」


俺は家族に会える気持ちが一杯になり遂に泣いちまった。

マックノウチは微妙な顔をした後にニヤニヤして俺の顔を見る。

ロッテヅカさんはもらい泣きしてしまったようだ…。


そこへ外から勢いよく誰かが入って来た。

俺達は反射的に振り向いた。


「「え? 誰!?」」


…俺達は気付くべきだった。

俺は例外として、俺以外は大きく姿が変わっていたんだ。

だったら、残りの転生者だって例外なくそうなるはずだと…!




次回、モスカワファミリー襲来!

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