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ヒカル。異世界転生させられる


今週以降はメインに書いていく予定です。


「ゲラゲラゲラゲラッ」

「…お前、いい加減にしろよ?」


俺はエルフになってしまった後輩のケツを軽く蹴る。


「痛い!…ゴホゴホッ。だってずっと我慢してたんスからぁ許して下さいよぉ~だって、だって…あんまりにも似合わないんですもん!? アハハハ!なんで髪型以外なんも変わってないんスか~もはやそれ反則でしょう!フフヒヒヒ!?」

「俺も知らんわあ! てか髪だって人生で初めて染めたんだぞっ!俺が好きでやったんじゃあないけど…」

「まあまあ、モスカワさん、落ち着いて…」


俺達は取り敢えず出口を探してこの空間を彷徨っていた。すると目の前に突然、巨大な鏡が現れた。


『ようこそ!転生者の皆さん。異世界エリクスへ!』


閃光と共に鏡の中に絶世の美女が現れる。


「うっわ~スッゴイ美人っスね~。先輩…」

「…呑気だねえ、お前は」


『私はエリクスを治める神の一柱、輝きの女神ミラと申します。今回あなた方をこの世界へと招いたのは私です…』


「アンタが張本人(ラスボス)か!俺達をどうする気だ!? さっさと俺達を元の世界に返してくれっ!」

『……もしや、あなた方は元の世界の神から何も説明を受けておられないのですか? …まさか、本当に?』


なんだかラスボスの様子がおかしいぞ?

俺達はお互いに顔を見合わせる。


「おい、マックノウチ。お前なんか聞いてるか?」

「いやいや家でゲームしてたって言ったでしょう?」

「ロッテヅカさんは…」

「私も家でテレビを見てただけですね。気づけばここにいて、この姿になっていましたから」

じゃあ、ケンタ君は? と最後に大男の顔を見るが必死に顔を横に振る。 ん?


『………少し、お待ち頂けますか?』


鏡に映る女神の姿がブラウン管テレビのようにブツンと消える。


「…先輩。これってどういうことですかね?」

「さあな」


すると鏡が再度輝き女神が映る。しかし、どこか疲れた顔をしている。


『はあ。予想外です。未熟な神とはいえどあそこまでとは…もうしわけありませんが、あなた方に謝罪せねばならないことが3つほどあります。とてもお怒りなるとは思いますが、どうか受けとめて頂きたく思います…』


…3つもあんのかよ。まあ、女神とやらも腰が低いし、とりあえず聞こう。俺達はひとまず頷く。


『ひとつ。あなた方の世界の神は…なんというか、文明と自然環境には強い興味を示しているのですが、あなた方人間の個人個人に思いやりや情をあまり持ってはいない、というよりは若干ズレているようでして。今回、我が世界との魂の交換を説明も無しに行ったようです…大変もうしわけありません』

「「…えぇ~」」


なんか特に信仰心とか持ってなかったがガッカリした。


『我が世界の均衡を保つ為に、輪廻を拒んだ…8つの強き魂をあなた方の転生と引き換えに別世界へと解き放つことができました。エリクスの神々を代表して深く感謝申し上げます…!』

「ちょっと待ってくれ。輪廻を拒んだ…?」

『はい。我が世界には神に近づけるほどの超越者が稀に生まれます。しかし、強き力を持つが故に欲も強く。それらを満たそうと神の座を欲したり、悪神として世に災いを振りまこうとする者がいるのです』

「まさに魔王…マジかよ」

「ちょっと待って下さいよ!? 先輩。いま8つの魂って言ってませんでしたか…?」

『はい。あなた方の世界から招いたのは8名です。ただ、神からの処置が甘かったせいか男女で転生に無理が生じたようでしてね…残りの転生者の方は今暫く時間が掛かるでしょう』


はあ。まだ被害者がいるのか…しかも残りは女性。可哀相に。


『ふたつ。あなた方は記憶こそ引き継がれていますが、肉体は全くの別物です。年齢、容姿、種族が大きく異なってしまっているでしょうがご了承下さい…』

「え。俺は?」

『はい』

「え。だから俺は?」

『あなたはとてもレアケースと言えますね…本来はありえないことなのですが…』


…なんだか納得がいかない。

隣でエルフが口と腹を抑えて震えていたので、尻を蹴って止めてやろう。


『みっつ。恐らく元の世界に未練がある方はとてもお辛いでしょうが…あなた方は既にこの世界の輪廻に組み込まれています。元の世界へとは命を幾ら絶とうとも戻れません…!』

「な!? 冗談じゃあない!ふざけるなぁ!俺には嫁と可愛い娘がふたりもいるんだ!他の奴にも家族や友人がいるんだぞ!」

『しかし、魂の剪定だけは概ね正しく行われたと報告を受けています。…失礼ながら、あなた方は心の中で"どこか遠くに、または別の世界で別の人生を生きたい"と欲していたのではありませんか?』


女神は真顔になって俺達に問いかける。

まるで直接脳味噌の中を覗き込んでいるかのようだ。


「はあ!?」


俺は信じられない気持ちで面々の顔を伺う。


「……先輩には悪いと思ってたんですけど。今の仕事、正直つまらなかったんス…普段もゲームばっかやってて、俺の人生こんなのか~って。いっそゲームのような世界に行きたい…そう思ってました。スイマセン…」

「モスカワさん…私もね。妻を亡くしてから生きる気力が湧かなくてね…何度も死のうと思っていたよ。ただ、最近は気掛かりなことがあってね…?」


そう言って少年の姿をしたロッテヅカさんはどこか優しい目で自身よりも遥かな巨躯を持つ男の顔を見ている。


「ボ、ボクは…ボクはいっつも学校でイジメられてたんだ。でも家ではママとパパがいっつもケンカしてて、パパは酔っぱらってボクを叩くし、ママもボクに怒ってよく家から追い出されてて泣いてた…。優しくしてくれたのはオジチャンくらいだったよ。早く強くて大きな体を持った大人になってどこか遠くに逃げ出したいって思ってたんだ…」


そういや…あそこの家は家庭内暴力の疑いがあるとか、よく噂になってたかもなあ…


「先輩。俺は元の世界に帰る気はないんス。恐らく、ロッテヅカさんもその子も…」

「…………女神様。俺と一緒にいたはずの犬はどうなった? シドっていうんだが、元の世界にいるのか?」

『…いいえ。あなたの側にいますよ?』


え? どこに?


『人間と獣の魂では属性が異なるのですよ。…ふむ、やはり名前はシドだそうです。とてもあなたを慕っているようですね? 現在、彼はスピリット体なので実体化できるまではもう暫く時間が掛かるでしょうね』

「…はは。シド、そこにいるのかよ…?」


俺は自然と涙が零れた。


『………謝罪する点は3つと言いましたが、実はまだあります。特にモスカワ・ヒカルさん。そしてマックノウチ・タケシさん…』

「え?」

「って俺もッスか?嫌っスよ!元の世界には戻りませんよ!?」


鏡が一瞬曇る。女神は小さく溜め息を吐くと…


『いいえ違います。残りの転生者はあなた方のご家族です。…正確にはモスカワ・ヒカルさんの奥様であるモスカワ・ファさん。その娘であるモスカワ・ドレミさん。同じくモスカワ・ソラさん。そして、マックノウチ・タケシさん、あなたの妹であるマックノウチ・シゲルさんなのですよ…』


「……嘘だろ?」



どうやら俺は家族ごと異世界に転生させられたようだ。



【異世界転生の影響】


モスカワ・シド(5)雑種犬→スピリット体?

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