ヒカル。金髪になる
最近新しい話を書きたい病の筆者です。
とにかく思いついたら暇がある限り新作を書きます。
他にもあるんですがまずはこれから…
不定期更新ですがお願いします。
くだらない話ばかりになるとは思いますが、楽しんで頂ければ幸いです。
「え?」
一体なにがあったんだ?
俺はモスカワ・ヒカル。さっきまで愛犬の散歩をしていた、愛する妻と愛娘ふたりがいる一般的なアラフォーだ。趣味はゲーム。ここはどこだ?
「…モスカワさん?」
「え? 誰だ君は?」
俺に声を掛けて来たのは何故かマントをたなびかせた、賢そうな10歳くらいの外国人の男の子だった。成長すればかなりのイケメンになるに違いない。
「私ですよ!? ロッテヅカですよ!」
ロッテヅカ? ああ。近所のロッテヅカさんのこと?
彼は俺の独身時代からの付き合いで確か50歳くらいだったけども。…あるぇ? でも亡くなった奥さんとの間には子供(しかも外国人の)はいなかったはずだし。それに数年前に奥さんを亡くされてからは酷く塞ぎ込んでいたな。じゃあ誰?
「いや、君を近所で見たことがないんだけどね? ロッテヅカさんとこの親戚のコかな?」
「何を言ってるんですか!? 私です、ロッテヅカです。今朝もゴミステーションでお会いしましたよ!」
ショタは腕を振り回してピョンピョン跳ねる。いや俺の知るロッテヅカさんはこんな短パンボーイじゃあないしなあ。
「いやでもね? オジサンが知ってるのは、オジサンよりも少し年上くらいのひとなんだけどなー?」
「さっきから…というかモスカワさんイメチェンしただけじゃあなく背も高く…ってなんじゃこりゃあ~!?」
目の前の少年は自分の手足を見て驚愕している。ホントなんだろか? 新しいゴッコ遊びかな? はあ。正直この年齢になるとヒーローゴッコ1セット付き合うのにも体力が持たないんだがなあ~ってそんな場合じゃあなかった。緊急事態だろ!まず携帯!携帯っ!嫁に電話しなきゃ!
俺がポケットをまさぐっているとまた別の方向から知らない人物に声を掛けられた。
「あの~もしかして、ヒカル先輩ですか?」
「え? 誰?」
そこに居たのはエルフのコスプレをした外人の男だった。えらく気合いが入っている。
「イヤイヤ自分ですよ!? マックノウチですよ!後輩のマックノウチ・タケシですってば。やだなあ~! 先輩こそ冗談キツイっすよ? というかここどこなんスか~? 俺、家でゲームしてたはずなんですけど…」
…マックノウチ? 確かに俺の会社の後輩に同じ名前のあまり出来の良くない後輩がいるが。こんなコスプレの趣味はなかったはずだし、そもそも外国人じゃあない。…メイクじゃあないよな? てかよく見たら凄いな!ハリウッド級の特殊メイクじゃあないか。まあ、同じゲーマーとして話も合ったし。どこか憎めなくて可愛がってはいたが…
「イヤ、アンタ誰ですか。 というか何かのイベントなのかい? そのカッコ…」
「チョットチョット!なんなんスかあ~って何じゃあこの耳はぁ!?ていうかこの長髪はぁ~!?」
「何言ってんだよ。そんな小道具まで持ってるくせして」
「うわああ!? 何で俺弓矢なんて持ってるんスか!? た、逮捕される!」
「……弓矢って銃刀法違反とかに引っ掛かるのか?」
現状がわからないまま俺の両隣が自身の身なりをオーバーアピールし続けている。はあ、本当どこに連れてこられたんだか…ってシドは? 俺が散歩させてた我が家の愛犬シドの姿が見当たらないじゃあないか!?
「シド!? シド!シドぉ~。シドどこだぁ~? 出てこーい!」
「あれ? シドちゃんって先輩んとこのワンちゃんじゃなかったでしたっけ? 散歩中だったんですか?」
「え。アンタ何で俺の犬の名前を…?」
俺がエルフ男の発言に振り返ろうとしたその時、目先の暗闇の中に動く何かを見つけた。
「よかった…!シド、心配したぞ…」
数歩近づいてわかったのだが、それは膝を抱えてうずくまる大男だった。
しかもムッキムキのバッキバッキ。毛皮の腰巻だけのとんだグレート・ザ・●ナンだった。
「ヒェッ…」
俺の後ろに隠れたエルフ男が小さく悲鳴を上げる。何故に俺を盾にしやがるんだコイツ!お前弓持ってんだろ!弓っ!?
…ん? でもコイツ。ガタガタ震えてるぞ?
「……もしかして、ケンタ君かい?」
「「ケンタ=クン?」」
俺とエルフ男が首を傾げる。するとゆっくりと男が顔を上げる。泣きじゃくって鼻を啜っている。
「モスカワさん。ホラ、私の隣の家の小学生の男の子…そうなんだろう? ケンタ君なんだろう?」
「ヒック…ヒック…お、おじちゃんなの? ほ、本当に?」
「ああ!あのトリカワさん家の…ってこのシュ●ちゃんが!?」
俺の声にマッスルボディがビクビクと怯える。あ、なんかゴメン。
「信じられませんが、我々の姿が大きく変わってしまっているようですね…そこの男性も姿が変わってしまっていますが、モスカワさんの同僚の方なのですよね?」
「は、はい。自分は先輩と同じ〇×株式会社のマックノウチと言いますっス…」
「ええっ!? お前ホントにマックノウチなのかぁ!? どうしたんだよ!その姿は!? …オンラインゲームのやり過ぎか?」
「イヤイヤイヤイヤ!どこの世界にゲームのやり過ぎでエルフになる奴がいるんスか!?」
「いるじゃん。目の前に」
「違うっスよ!……多分」
「なんでちょっと自信なさげなんだよお前は? はっ!待てよ…?皆これだけ様相が変わっているんだ(ちょっとケンタ君だけはベクトルが違うが)俺はどうなってるんだ? なあなあ!俺はどうなってんの!? ねってば!」
「「え…」」
何故か視線を同時に逸らすふたり。何だよ?
「あのね。モスカワさんは、そのあまり雰囲気が変わらないというかね? その、まあ一目で私もモスカワさんってわかったくらいだから…」
「コレ以上の我慢は自分には無理なんでズバリ言っちゃいますけどね? 先輩は髪をチョット痛い金髪に染めただけっスね!最初はイメチェンに失敗したのかと思いました!以上です!」
「ああっ、そんなにハッキリ言わなくても…」
「え。……嘘だろう?」
俺は金髪になっただけだったようだ。コレは、喜ぶべきだろうか?
【異世界転生の影響】
モスカワ・ヒカル(42)中年→金髪の中年
ロッテヅカ・オサム(50)中年→インテリショタ
マックノウチ・タケシ(25)若者→弓エルフ
トリカワ・ケンタ(10)小学生→元祖ハクスラっぽいバーバリアン