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休日も終わり学園には変わらない日常が戻ってきていた。

昼休憩に食堂でカールと会う前、ディアンヌは緊張していた。


──この前の事をきちんと謝って改めてブランカ様とお2人でお話してもらえるようにしないと…


ズキッ


──また胸が苦しい…1度診てもらった方がいいのかしら


「ディアンヌどうしたの?」

「ルネ私病気かしら胸が苦しくなることがあるの」

「え?大丈夫なの。今は?」

「普通にしてれば大丈夫なのよ。計画の事考えてたら時々ね…あっ私そろそろ食堂行ってくるわね」


それってと言おうとしたがディアンヌは既に教室からいなかった。



学園は学年ごとに校舎か違う為、普段は会うことはないが食堂に向かうこの廊下だけは共通である。ディアンヌはここを通る時いつも気をつけている。短い廊下だがいつも全力で走る。


──会わないように…


食堂に入ると息を整え、カールと一緒にいつも座る席に向かう。

既にカールは席に座っていて、ディアンヌに気づくと嬉しそうに微笑んだ。


──今までこんな笑顔だったかしら…ああブランカ様と話を進めたいから


今までにない胸の痛みが走りその場から動けなくなる。動けと胸を叩くと重い足を1歩前に出した。


「どうした?ディアンヌ」

「いえ、この前は体調悪くなってしまい申し訳ございませんでした」


「君が大丈夫ならいいよ」


さあと席まで案内されディアンヌは座る。


「カール様あの…」


「ディアンヌまず先に言わせてくれ。私はブランカ嬢と今後2人で会うことはしない」

「え?」


「もっときちんとした場所で話をする機会を与えて欲しいが…私は君と婚約を破棄するつもりはない」


「カール様…えっと…え?」


「ディアンヌ、私は…」


カールが席を立ちディアンヌの方に近づこうとした時食堂の入口にこの場にふさわしくない人物を見つけた。

ディアンヌは驚いた顔をしてるカールを見て不思議に思い振り返る。

そこには姉であるミアがいた。


「お…姉様」


「あら、ディア」


にっこりと微笑みながらこちらに向かってくる姉に身体が固まる。立ち上がり席に置いてる手が少し震えているのにカールが気づいた。


「ディアンヌ?」




「カール様もお久しぶりね。いつも妹がご迷惑かけてごめんなさいね」


「ミア様お久しぶりです」


ミアが椅子に座ろうとするとディアンヌが椅子を引いてミアを案内した。そのまま机から離れ後ろで控えるように立つ。

カールがえ?とディアンヌを見るが下を向いて立ったまま動かない。


「カール様気にしないでくださいな。この子はこれでいいので」


にっこり微笑まれてもカールは気になってしょうがない。特にミアに用がある訳でもないのでディアンヌとここを去ろうかと考えていると


「カール様私今日はお誘いに来ましたの」

「は?ミア様がですか?」


ディアンヌがばっと顔をあげる。


──お姉様がカール様に何を!


ミアはその美貌を最大限に生かした笑顔を見せカールを見つめる。


「カール様、私の愛人になりませんか?」


「は?」

「え?」


ディアンヌも驚いて思わず声をあげてしまう。




食堂のその一角は周りの生徒の注目の的になっている。1学年上のミアは成績優秀で生徒会の仕事もこなし、人離れした美貌もあいまってみんなの憧れなのだ。同じ学年でない為普段は近くで見る機会もない為今は一挙一動注目されている。

離れたところから見ているため会話までは聞こえていないようだ。


ブランカも世話している植物園から出て来て一連の流れを見ていた。


──あの方がディアンヌ様のお姉様…


ミアが来てからのディアンヌの様子がおかしいのはすぐに分かったが、自分が行けばディアンヌの立場がおかしくなるかもとぐっと我慢をしていた。




「ミア様今なんと…?」


「ですから愛人になりませんかとお誘いしておりますの」


「お姉様!お姉様には皇太子様という婚約者がいらっしゃいます」


思わずディアンヌが声を荒らげてしまうがすぐに下を向き謝る。


「申し訳ございません…私が発言など…」


すっと目を細め刺すような目でディアンヌを見て冷たい声で


「お前が私に意見など…家でないからと厚かましいですわよ」


「ミア様!いきなりのお話で混乱しておりますが、私はディアンヌと婚約しておりますので…」


「私も皇太子様と婚約はしておりますが、何故か結婚はしても愛してはいただけないみたいですので私も好きにすることにしたのです」


「皇太子様がですか?望まれての婚約だったと聞いておりましたが」


「そのはずなのにおかしいでしょ」


片手を頬にあて首を傾ける仕草はとても可愛らしいが発言は何も可愛くない。

今まで思っていたミアとの違いやあまりにもかけ離れた発言にカールは本当に困惑していた。


「まあ急な話ですが、元々カール様との婚約は私とのはずでしたのでいいのではないですか?またお返事聞かせてくださいな」


「私からの誘いですのよ?断ったりしませんわよね」


張り付いた笑顔でミアが言い、その場から離れる。椅子を引いたディアンヌを皆に見えないように押しながら手の甲を持っていた扇で叩く。流れ的には扇の向きを変えた時にディアンヌが手を出した感じに見えた。

ディアンヌは痛い顔もせず頭を下げている。そのままミアが見えなくなるまで動かなかった。


「ディアンヌ!大丈夫か今…」

「急にどうされたのでしょうかお姉様は。ご結婚近くなって何か不安になってらっしゃるのかもしれませんわね」


震えた声で泣くのを我慢して笑っているディアンヌを抱きしめたくなったが、食堂なのを思い出し先程の手を取り優しくさすった。


「なにかの間違いだろう。私はディアンヌと婚約しているのだから。とりあえず手当を…」

「大丈夫です。カール様」


2人の元にブランカと騒ぎを聞き食堂まで来ていたルネが急いでやってくる。

カールが握っていた手をディアンヌがそっと離し、ルネの方に向きを変える。肩が震えているのでカールが手を伸ばすが、ルネがそれを遮りディアンヌを支え


「申し訳ございませんがディアンヌは連れて行きます。また…説明しますので今は…」


頭を下げ、ディアンヌを食堂から連れ出した。



残されたブランカはカールを睨み


「説明してくださいカール様!」


「いや…私も何がなんだか…」


呆然と立ちすくむカールにブランカが詰め寄るが何も分からない様子のカールを見て顔をしかめた。

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