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約束の日、ディアンヌは付き人のエミリアを連れてブランカの部屋まで向かっていた。

寮生の2人ではあるがディアンヌの部屋は付き人用の部屋もついてる仕様で、ブランカの部屋にはそれがない。

階も違うのでディアンヌがひとつ下の階に向かっている。


トントンと部屋の扉をノックする。軽く返事がありブランカが出てきた。


「わざわざありがとうございますディアンヌ様」

「いえ大丈夫です。行きましょう」


エミリアがブランカの荷物も預かろうとしたが、自分で持てると丁寧に断り小さなバッグを持っている。


待ち合わせの場所は街中央の噴水広場である。大きな噴水で周りは芝生になっており、人々が集まったりと憩いの場となっている。

学園からはさほど距離もないので2人は歩いて向かった。


「カール様も楽しみにしていると思うので、ブランカ様もたくさんお話してくださいね。お邪魔になるようでしたら私アルベルト様と離れますので」


にっこりと微笑むディアンヌを見てブランカは複雑な表情を浮かべる。


噴水広場近くまで来ると人が多く集まっている一角があった。何かあるのかと覗くと豪華な馬車が停まっていてその周りを数人の騎士が守っていた。

誰の馬車かはすぐにわかるのでひと目見ようと人だかりになっていた。


「間違いなくアルベルト様ですね」

「みたいですね」


中々近づけずどうしようかと思っていたら、名前を呼ばれ振り返る。


「ディアンヌ、こちらに」

「カール様、お待たせしてしまいましたか?申し訳ございません」

「いや大丈夫だ」


カールはディアンヌと一緒にいるブランカを横目でチラッと見たが特に声もかけず、ディアンヌをエスコートしようと動く。そんなカールを制するようにさっとブランカをカールの横に押すディアンヌ。


「カール様、ブランカ様とご一緒に歩いてはいかがですか?」

「何故?」

「美男美女のお2人ですもの、絵になりますわ」

「興味ないからいいよ。それよりディアンヌが行きたい店はどこ?」


カールはブランカを完全に無視して店に向かおうとするのでディアンヌが焦っていると


「おいおい、私は置いて行かれるのかな?」


アルベルトが騎士を引き連れてやってきた。


「お嬢様たちはご機嫌いかがですか?今日は楽しみましょう」


にっこり微笑み両手を広げやや大袈裟に挨拶をする。


「アルベルト様」


ディアンヌがアルベルトの方に行こうとするのをカールが手をとって止めた。カールは手を繋いだまま歩き出した。


「待ってください。カール様…あの今日は私ではなくブランカ様と…」


ディアンヌの声も無視して進んで行くのでブランカはあとについて行こうとしていると、アルベルトがすっと横に立った。背の高いアルベルトと並ぶと首ひとつ分ブランカは低い位置に頭があるのだが、少し屈んだアルベルトが耳元で囁く。


「君が頑張ってカールを振り向かせてくれたまえ」


ブランカが驚いて顔をあげるとにっこりと微笑むアルベルトの顔が何故か恐怖を感じる笑顔であった。


「私にそのつもりはございません。カール様とディアンヌ様はお互いを…」

「それはどうでもいい。カールをディアンヌから引き剥がせと言っている」


「アルベルト…様?」

「君には期待しているよ」


冷たく感情のない笑顔にブランカはゾッとした。そのままアルベルトはカールたちを追いかけた。少し遅れてブランカも後に続いた。





「カール様待ってください。お2人とはぐれてしまいます」

「ディアンヌ今日は私と2人で…」


握っていた手にさらに力を込めようとしていると


「ちょっと早いよカール」


すぐ後ろににっこりと笑いながらアルベルトがついてきていた。そのままドンドンと距離をつめ



「さあみんなで行こうよ」


とディアンヌの空いてる手を取った。


「何を!私の婚約者に触るな!」


カールが握っていた手を自分の方に引くとアルベルトは手を離し、ディアンヌがよろけたのでカールがディアンヌの肩を受け止めた。


「カール様?」


──どうなさったのかしら?いつもと様子が…


見上げたカールの顔が今まで見たこともない顔だったので少し戸惑う。



「とっ…とりあえずケーキ屋さんに行きませんか?ほらあの赤い屋根の店なんです。ブランカ様もいいですか?」


「ええそうですね。行きましょうディアンヌ様」


アルベルトより少し遅れて追いついたブランカを見つけディアンヌが声をかけた。




4人で店まで行くが店の中は混雑しており、女性ばかりだったのでカールとアルベルトは店の外に面したテラス席に座り待つことにした。

ディアンヌとブランカは中に入りおすすめのケーキを何切れか頼み、お茶とともに持ってきてもらうことにした。


「アルベルト…手を握るとか今後はやめてくれ」

「えーダメかい。君のものでもないのにね」


アルベルトが目を細め笑うのでカールがグッと拳を握り、今にもアルベルトにつかみかかりそうな雰囲気になり空気がピリッとした。2人が戻ってきたのでカールもその場は我慢してなんとか収まった。


出されたケーキはどれもフルーツをふんだんに使ったもので、甘すぎず男性にも食べやすいものだった。

食べ終わってお茶を飲んでいるとカールがこの後はディアンヌと2人で出かけたいと言い出したのでディアンヌが懇願する。


──今日のカール様は本当にいつもと違うけど、何としてもブランカ様を気に入ってもらわないと…!




「カール様お願いです。少しでいいのでブランカ様と2人でお話しませんか?ブランカ様はとても優しくて素晴らしい方なのです。カール様もきっともっと話したくなると思いますよ」


「ディアンヌ様にそんなに言っていただけるほどでもありませんが…カール様私もお話したいことがございます」


「ほら女の子にここまで言われて断るなんて失礼だよね」


アルベルトはにっこりと微笑みながら席を立ちディアンヌの後ろに立ち、ディアンヌの肩に手を置いた。座っているディアンヌの高さに合わせ屈んで同じ顔の高さでささやく。


「僕らは少し離れた席に座ろうかディアンヌ」

「あっはい。そうですね。では…」

「ディアンヌ!」


席を立つディアンヌを止めようとするがアルベルトが素早く椅子を引きディアンヌの手を取って離れた席に案内してしまった。


──アルベルト…あいつ本当に…


1度立ち上がったカールだったが、諦めたようにドサッと椅子に座った。

そんなカールを見ていたブランカは静かに話し始めた。

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