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あれは9歳の時だったと思う。

王宮でのお茶会に顔見せとして父親に連れられて来ていた。姉のミアとはぐれ探している途中で、カールの父親のパルマ公爵とディアンヌの父親のロベール侯爵が話をしてるのをたまたま聞いてしまった。


「あの時は本当にすまなかった。私が…」

「構わないよ」

「でも、ミアとディアを聞き間違えるとか」



なるほどとディアンヌは納得した。カールとの婚約は本来姉のミアと約束されるものだったのだ。私は間違えられたのだと。


──私なんかがカール様と…おかしいはずね


1つ歳上の姉、ミアは幼い時から素晴らしかった。くっきりとした目鼻立ちに白い肌。意志の強さを思わせる瞳は深い青色、ストレートの艶のある髪はとても美しかった。聞いたり見た事をすぐに身につけ周りからの評判もよく、非の打ち所がなかった。


その姉より先に婚約が決まるなんておかしかったのだ。


──どうしよう…お姉様はもう皇太子様の婚約者だし…


考えながらウロウロしたせいか、完全に迷子になっていたディアンヌは、心細さから座り込んで泣いてしまった。


「どうしたの?迷子?」


声をかけられ顔を上げると第3皇子のアルベルトがいた。


「申し訳ございません。アルベルト様少し迷ってしまいました」


「案内するよ。一緒に戻ろう」




座り込んでる女の子に気まぐれに声をかけた。普段なら厄介事には自分から近づいたりはしないが、今となっては何となく声をかけた自分を褒めたい。

泣きながら顔を上げたディアンヌはとても可愛く、瞬間自分のものにしたくなった。しかし、案内しながら話を聞くと既に婚約者がいると言う。

ただよく聞くと間違った婚約だとか…?それなら破棄させるのは簡単かもとディアンヌに少し助言をした。

素直なディアンヌはすぐに実行してくれた。これで先に相手に別の人が見つかれば慰めると言う名目で自分がディアンヌを支えればいい。

はじめは同意していた相手が何故か抵抗し始めたのは予想外だった。何とかしなくてはとカールに近づいたが手強い。早く何とかしないと。



◇◆◇



昼休憩をいつも通り一緒にお茶してるカールとディアンヌ。


「カール様、この前ブランカ様と行ったケーキ屋さんとても美味しかったんです。ブランカ様は私が知らないことも沢山知っていますしとても素晴らしい方ですわ」


「そうなんだ」


「今度ブランカ様とご一緒に出かけませんか?」

「ディアンヌと2人で行きたいな」


「え?私と行っても面白くありませんわ。それよりブランカ様は…」

「ディアンヌといて面白くないなんて思った事はないよ。1度も…」


今までディアンヌからの誘いをこのように断るのははじめてで、返答に困っていると


「じゃあさ、私も入れて4人で行かない?」


「アルベルト…」


いつから、どこで聞いていたのか、アルベルトがにっこり微笑みながら2人のテーブルに近づいて来る。ディアンヌは笑顔で迎え入れるが、カールは冷たく睨む。


「お断りします。皇子が出かけるとなると大袈裟になるでしょうし、ディアンヌと2人で…」

「アルベルト様素晴らしい案ですわ!早速ブランカ様に確認してまいります」

「ディアンヌ!」


カールが声をかけた時には礼をして走り出していた。ディアンヌを目で追った後振り返り、余計な提案をした人物を睨みつける。


「アルベルト…今まで直接の絡みはなかったはずだが…何故?」

「楽しそうな事はみんなで共有しようよ。ディアンヌとお出かけなんて初めてだし楽しみだな」


にこにこと笑っているアルベルトに怒りを覚える。


「ディアンヌの婚約者は私だから諦めろ。婚約破棄なんて絶対にしないから」


「ディアンヌが望んでるのに?それは可哀想だな」


ふふっと笑い、日程決まったら教えてねとその場を去って行った。


カールは婚約破棄の約束を破棄したいとディアンヌに言うつもりだ。10歳のあの時は面白半分で同意してしまったが、今はディアンヌと一緒にいたいと。

2人で出かけることになればいい機会だと思っていたのに…


ディアンヌがブランカと仲良くなる為に、空いてる時間を彼女と一緒にいることが増えた。その分自分と会う時間が減ってきているのだ。

それだけでも焦る要因なのに、アルベルトまで出てこられたら、さらに時間が減る。


──本当に10歳の自分を殴りに行きたい


そもそもなぜディアンヌは自分との婚約を破棄したがるのか…

はっきりと理由を聞いた事はない。そこもはっきりさせて婚約破棄を諦めてもらわないと。


その為にも4人でのお出かけなど実現させる訳には行かない。ブランカに断るように言わないと!ディアンヌが言うより先に会えればいいが、後からでもなんとかなる。

カールも急いでクラスに戻る。

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