19 カール視点
ディアンヌが皇宮に着いたのと同じ頃、学園を出たカールは家に着いた。
いきなり帰ってきたカールに執事は驚き声をかけようとしたが、ものすごい勢いでカールが入ってきて
「父上は!!どこだ!!」
「執務室です!」
カールは止まることなく階段を駆け上がり2階にある執務室の扉をノックなしで開ける。
「カール…さすがにノックくらいはしろ」
「そんな事を言ってる場合ではないですよね?」
パルマ公爵は目を通していた書類を1度置き、目線をカールに向ける。
「アルベルト様の1人勝ち状態だな…。このままだとディアンヌは皇子に取られるぞ」
「!!」
「こうなることが分かっていた様な見事な手際だった。末恐ろしい皇子だな」
──やはりアルベルトはディアンヌを!!
怒りに震えているカールを見てパルマ公爵はふっと笑い
「ディアンヌは私たち夫婦のお気に入りだから、そんなに簡単に皇宮に行かせたりはしない」
「父上には考えがあるのですか?」
「私がと言うか…ロベール侯爵がだな」
奥の席から立ち上がり、入口に立ったままのカールの所まで来て肩に手を置く。
「今頃謁見してるだろうから我々はゆっくり待とう」
──俺は待つしかないのか…
口をグッと結び下を向く。
パルマ公爵がそんなカールに声をかける。
「お前はまだ16歳だ。今は我々大人が守る事ができる。後少しすれば自分で全てを守れるようになればいい」
「父上…」
「今は我々に守らせてくれ」
パルマ公爵はカールより少し背が高いので少しかがみカールの顔を覗き見る。
悔しいような、嬉しいような泣きそうな顔のカールの頭をクシャと撫でて背中を押す。
「知らせがくるまでお茶でも飲むか?」