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ディアンヌは落ち着いてきて、今自分が置かれている状況を冷静に判断すると唐突に恥ずかしくなってきた。目の前にはカールの胸があって少し顔をあげると近い位置にカールの顔がある…


──これは…ダメですわね!いや本当にダメ


ディアンヌは顔を下げたまま自分の胸の前にあった両手を伸ばそうとする。少しでもカールと距離を取ろうとしたのだが、力強く背中に回された腕はほどけなかった。


「少しは落ち着いた?」

「はい…あのカール様とっても恥ずかしいので力を緩めていただけませんか?」


「緩めないとダメか…やっとこの距離まで近づけたのに」

「お願いしますカール様!私恥ずかしすぎて耐えられません」


渋々カールが力を緩め離れた為、ディアンヌはいつもの距離感に安心する。カールは残念そうだったが手だけは離さず握ったままであった。


「今日はゆっくり話をしよう。ここには誰も入って来れないように頼んでおいたから」


そう言ってカールは目を閉じ思い出すように語り始めた。







2人の婚約が決まったのは7歳の時。パルマ公爵家からロベール侯爵家令嬢との婚約をと申し出があって実現している。

この時、パルマ公爵は評判の良いミアをと伝えたつもりだったのが、ロベール侯爵の聞き間違いでディアンヌを相手として引き合わせた。


「その事実を知ったのは9歳の時でした。お父様同士が話しているのを聞いてしまって…私は間違えられたのだと、本当はお姉様がカール様の婚約者になっていたはずだったのです」


「間違いとはそういう事か…」

「はい。既にお姉様は婚約されていましたので、お姉様のような方とカール様をと…」


「それ、ディアンヌが考えたの?」


自分で…考えたはず…と思っていたが、あの場で提案されたのを思い出す。


「…アルベルト様に」

「え?アルベルト?」


迷子になったディアンヌを助け、その場で婚約破棄できるかもねと。相手を自分で見つけてくっつけてしまえば面白いねと教えてもらったのだ。

なるべく早く相手を見つけた方がいいと言われて目についたお嬢様に声をかけた記憶がある。


「そんな前からか…」

「カール様も納得されていたので私、ものすごく急いだのですけど」

「あっそれは…本当に申し訳ない。当時は面白がって同意してしまって…今となっては本当に後悔している」


カールは眉を寄せ悔しそうな顔をしている。ディアンヌは少し笑って


「カール様が私に誰も紹介されなかったのは?」

「ディアンヌに他の男とか無理だ。隣は私1人でいい」

「そうだったんですね。私は…私に価値がないから誰も紹介していただけないと思ってました」


ディアンヌは下を向き、肩をあげて自虐的に笑う。カールは握っている手に力を込め


「ディアンヌがそんな考えをするのはミア様のせいか?」

「…」


思い出すと、身体が震える。落ち着かなければと思っても姉の顔を思い出すだけで震えるのは条件反射だ。


「お姉様にとって私は…ただの出来損ないですので、恥ずかしいのだと思います」


「しかし…」

「私のことはいいのです。両親も理解してくれて、学園も寮に入れてくれました。学園を卒業したらカール様と婚約破棄してそのまま修道院に行く予定で…」

「だから!婚約破棄はしないって!!!」


思わずカールの口調が崩れる。


「俺はディアンヌが好きなの!学園卒業したらすぐ結婚するから!!!」


大きな声で叫んだのでディアンヌがびっくりしている。


「あっ…すまない…いやでもこの数年わかってもらえなくて…モヤモヤしてたし…」


「カール様は私でいいのですか?」

「何度でも言うよ。ディアンヌがいい」


まだ疑うディアンヌに少し拗ねながらカールが答えると、ディアンヌの目からまたポロポロ涙が流れる。


「私の両親もディアンヌが家に来るのを楽しみにしている。婚約してから我が家から何も伝わってないだろ?みんながディアンヌがいいと思っているから」


「はい…ありがとうございます」


カールは手を握ったままディアンヌが落ち着くまでまっていた。


「大丈夫か?」


「はい」


ディアンヌは弾けるような笑顔で答えた。そんなディアンヌを見てカールも微笑んだが一旦引き締めて尋ねた。


「で、ディアンヌの気持ちを聞かせてくれるか?」

「え?」


「私の気持ちは伝えたが?返事を聞いていない」


握っていた手を持ち上げキスをしてニヤっと笑いながらカールがディアンヌを見つめる。


「えっ…あの…私」


全身火照って顔も真っ赤になりながらディアンヌがしどろもどろに必死に答える。


「私もカール様がすき…です」


口元が緩むのを押さえることができずそのままディアンヌに抱きつく。


「知っている。やっと言ってくれた」


安堵した声でカールが耳元で言うのでさらに真っ赤になるディアンヌだった。

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