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夢が叶ったのに僕はいない。

 1989年昭和が終わリ、1991年バブルが崩壊した時、カルピスウォーターが発売されたのは衝撃だった。カルピス原液は瓶で売っていて、それを家の水道水で割って飲むのが当たり前だった。


 「ツーフィンガー」という言葉を覚えたのは「稲中卓球」でだが、僕はよくスリーフィンガーでカルピスを家で飲んでいたから、なんだか物足りない味だが、外でカルピスが飲めるのに感動した。今ならワンフィンガーで飲むカルピス。平成になったけど昭和もバブルも抜けきっていなかった。


 VHSの録画だって3倍ではなく標準でしていた頃、小学生のランドセルは黒か赤が当たり前。勿論、男子は黒。女子は赤。何でもどれでも男と女を色で別けて、揃えられていた時代。


 僕は稼働されたストリートファイター2にハマった。格闘ゲームブームの幕開けだ。あの頃、とにかく我武者羅に戦い続けた。1クレ100円が30秒で消える恐怖も去ることながら、ゲーセンには怖い人たちばかりだった。


 ボンタンや短ランが何を意味するかまではわからなかったが、その手の服装の奴はゲームに負けると必ず睨んでくる。昔のゲーセンは筐体と一緒に灰皿が置かれていて、ヤンキーの中には灰皿を投げてくる奴もいたので、段々と学習した僕は、相手に灰皿を投げられたら、僕も灰皿を投げる事にしていた。ビビったら負けなのだ。


 そんなだから後ろから椅子で殴られ、蹲ったところ追撃をされてボコボコになる。血まみれの小学生の出来上がり。レシピは簡単。3分かかりません。材料は小学生。道具はその場に有る物を使いましょう。


 だが、ここで泣いちゃいけない。やられっぱなしだと次もやられる。居場所も奪われる。だから僕も椅子で殴り返していた。相手が良いなら、自分も良いという理屈だ。手も足もでないなら歯で。一度、噛んだら離さずに噛み続けた。その為、ゲーセンに行く時は歯磨きをしなかった程だ。あわよくば傷口から菌が入って病気になれと思っていた。喧嘩なら負けるけど殺し合いなら負ける気はなかった。


 僕はゲームで負けても暴力は振るわない。でも負けて悔しかった。ギャラリーから笑われて惨めだったのもそうだし、100円が無くなったのも嫌だったし、負けるというのは自分を否定されたみたいだった。同じように努力して、同じようにお金をかけてやってきたのに、相手と自分に差が有り、自分の努力や積み上げてきた勝利は一度で全部否定されて苦しかった。


 悔しくて、悔しくて、たかがゲームだけど、こっそりと泣いたりもした。大好きだったから負けたくなかった。そんな僕に周りは「ゲームなんて意味ない」とか「ゲームは時間の無駄」と、そう言ったりもしていて、実際に言い返すことができなかったけど、僕の中にはずっと有った。


 必ずゲームが仕事になるという思いが。だってこんなに面白いのだから。負けて泣きたくなるほど、悔しい物なのだから。


 近年のeスポーツを見て、僕は夢が叶ったと大喜びした。


 でも残念なことに僕はそこにはいなくて、気付いたら大人になっていて、負ける事に悔しさを持てなくなっていた。どうしてやめてしまったのだろう。なんで諦めてしまったのだろう。大人になるってなんだろう。わからなかった。

★カルピスウォーター

ペットボトルで売られてるあれ。カルピスは家で飲むものだったのに革命が起きた。昭和の頃はお中元、お歳暮でよく瓶のカルピスが家に届いていた。最近は紙パックになってしまったので重量感が足りない。ずっしり重いから高価な感じがするのだ。カルピスを牛乳で割るのが更に美味しい。


★行け!稲中卓球部

序盤1巻~5巻ぐらいまでは控えめなギャグマンガだが、それ以降は加速していく。作者が開き直ったのか、それとも掲載コードが緩んだのかは不明だが、下ネタギャグもバンバン使う。


★ランドセル

6年間も暴れん坊の男子に振り回される可哀そうなカバン。小学校最期にランドセル耐久実験と称して屋上からランドセルを投げた。傷はついたが壊れず。忍耐強く耐久性も高い。実に素晴らしい鞄だ。人生で一番いい鞄だったかもしれない。


★ストリートファイター2

格闘ゲームブームの始まり。ガイル使いは「卑怯」と罵られた。暗黙の了解で「待ち」「ハメ」などのハウスルールがゲーセンに存在した。ヤンキーが乱入対戦してきたら多くのプレイヤーは、捨てゲーをしていたり接待プレイをしていた。


★灰皿投げ

スト2のキャラ「ガイル」の必殺技「ソニックブーム」から取って「灰皿ソニック」と呼ばれていた。相手に勝った瞬間、油断してはいけない。すぐにレバーから手を放して自分も灰皿を一応握っておこう。今のゲーセンに灰皿は無いが、私はゲームに勝った後、レバーから手を放してしまう癖が抜けない。


★ゲーム筐体

当時、対戦プレイする場合、横並びに座る。つまりヤンキーが横に座ってくるのだ。開幕メンチからの「ああっ!」「「オラッ!」「てめぇ、殺すぞ!」などの怒声がリアルサウンドで楽しめる。精神を鍛えたい奴には今ならおススメ。一人カラオケ、一人焼肉では心は強くならない。死を楽しめ。


★血まみれの小学生

親には「階段で転んだ」というのが定番。血まみれのくせにニコニコしてる私を見て、親父は「よくやった」とだけ言う。


★eスポーツ

国内での賞金額や知名度、社会性はまだまだ低い。それでもエンタメとして成り立ったのは本当にうれしく思う。

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― 新着の感想 ―
[良い点] バイオレンス小学生のリアルな話が聞けた事 [一言] こんばんは。 なんか、壮絶なゲーセンの思い出っすね。 自分はゲーセンと言えばコインゲームしかやんない人だったので、まさか格闘ゲームコーナ…
2020/03/03 19:16 退会済み
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