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価値観の違いは言葉に現れる

 僕の祖父は靴のことを「ズック」と呼んでいた。「ズックをなんで何足も買うんだ?」とは今は亡き祖父の疑問。大正生まれにとって、靴は一足が当たり前。


 長袖の上に半袖のTシャツを重ね着すると「なんでもう一枚長袖を着ないんだ?」と聞かれた。お洒落、合理性、利便性というのは、大正生まれには理解できない代物だったみたいだ。


 そんな僕の親は昭和世代。「お街に行くよ」と言っては、繁華街へ「バス」に乗って出かけていた。1時間に2.3本しか来ない「バス」で田舎道を抜けて橋を渡り、とても子供では歩けない距離を超えて辿り着くのが「お街」だ。


 「お街」に行けば「レストラン」や「マクドナルド」のご馳走が食べられたり、地元のお店では絶対に売ってないおもちゃが見れたり、デパートの屋上には乗り物のアトラクションやゲーム機が置かれていた。


 だから今の「屋上ビアガーデン」なんて、クソ喰らえだ。僕は「屋上ビアガーデン」が嫌いだ。デパートの屋上遊園地で「パンチングマシン」に体ごと飛び込んでハイスコアを叩き出したり、「ワニワニパニック」で悪いワニをやっつけて、全コインを掛けて「じゃんけんゲーム」するのがデパートの屋上だ。


 そう気づいたのは30歳を回った時だった。


 酔っぱらった頭で「パンチングマシン」を探したが、どこにも見つからなくて酔いが醒めたのを覚えてる。


 もう気付いたら令和だ。平成も終わった。「パンチングマシン」なんて暴力的だし、「ワニワニパニック」は動物虐待だし、「じゃんけんゲーム」なんて今の子供がやるわけないのだ。


 僕は兄とデパートの階段で「グリコ・チョコレート・パイン」をしたが、今の子供はそれすら知らないのだろう。過去に戻れるなら、このゲームは頭を使え。使わないと兄には勝てないぞ。自分にそうアドバイスしてやりたくなる。


 でも、僕は賢くないから兄には負け続けたし、大きくなるまで「バス」を使わないと「お街」へ行けなかった。


 「失くしたら大変なことになる」、そんな恐怖を感じて「整理券番号札」をギュッと握りしめて、車内前方の区間別運賃表と手の中の硬貨を何度も合ってるか確認した。硬貨と一緒に清算する時には、いつも硬貨は少し濡れてたし、整理券番号札はしわしわになっていた。初めてバスに乗った時もそうだった。


 あの日、母親に連れられて、僕はあの「ミスタードーナッツ」に行った。


 ついに僕たちの「お街」に「ミスタードーナッツ」がやって来た。奇麗に並んだドーナッツはどれも美味しそうで、好きな物を選んでと言われても、僕にはわからなかったから母親に全部任せた。


 「ミスタードーナッツ」の横に長い大きな紙箱を手に持って、「お街」を歩くだけでなんだかお洒落で、母親はそのまま僕を映画館へと連れて行ったけど、5歳児だった僕には「ゴーストバスターズ2」がよく分からなかった。


 ネットもない。スマホもない。パソコンもない。お金もない。頭脳もない。


 けど、ミスタードーナッツは美味しくて、母親は笑っていて、僕はなんだかうれしくて幸せだった。


 大人になったら、もっと楽しいんだろうと思っていた。

★ズック。

doekというオランダ語。大正生まれの方言バリバリ爺ちゃんがオランダ語を使用していたのを今知って驚愕。でも、酔っ払ってドラム式洗濯機を便器と勘違いしてションベンしたり、HDDレコーダーが登場してもVHSとβとレーザーディスクに拘り続け、最後まで使い捨てカメラをバカチョンカメラと言い続けた人なので、多分知ってるオランダ語はこれだけだったのだろう。そもそもオランダ語として認識していたかもあやしい。


★マクドナルド。

私はよく「てりやきバーガー」を食べる。理由は小学生の時に読んでいた「うしおととら」の「とら」が「てりやきバーガー」が大好物で、私もそれを真似していた。「てりやきばっが下さい」と店員に行ってオーダーが通ったら、もしかしたら「うしおととら」のファンかもしれないと思っていたが、一度もそんな注文の仕方はしなかった。


★屋上ビアガーデン。

ビールが嫌いなのに連れて行かれ、いやいやながらも飲み続け、酔っ払った頭は上司を暗殺する方法を必死に考え続けていた夏。ハゲていた上司にハーゲンダッツを差し入れし続け、年が明けた春の健康診断で上司に糖尿病が発覚した時はガッツポーズをした。それでも私は「まだ健康な内に奥さんと旅行とか行ったらどうですか? コペンハーゲンとか良いですよ」と言い続けた。


★デパートの屋上遊園地。

現在、8ヵ所しか存在していない。場末感が半端ないので近くにあるのなら行ってみると良いけど、きっと現代っ子は楽しめない筈。


★パンチングマシン。

小学生時代、私たちのパンチングマシンは「人間」だった。1発100円(腹パン)でお金を稼いでいた友達がいる。ただし、1日1回しかプレイできないので予約待ちができた。勿論、バレてめちゃくちゃ怒られて、教師にタダでぶん殴られた。彼のパンチ力ランキングと書かれたノートに名前を記載されるのが勲章だった、


★顔はやめな。ボディーにしな。

金八先生で三原じゅん子演じる山田麗子の有名なセリフ「顔はやばいよ、ボディやんな、ボディを」が正しい。私の世代では、いつの間にか「顔はやめな。ボディーにしな」という言葉に変わっていた。


★ワニワニパニック。

ワニをハンマーで殴りつけて、動物虐待を楽しみながら快感を得る娯楽マシン。バンダイナムコゲームスの代表取締役社長がトイレで考えた遊び。うんちかおしっこしだったのかは不明。尚、日本人はモグラとワニに恨みが有りすぎるのか、稀に挙動がおかしいくモグラとワニを見かける。


★お街。

田舎の昭和世代に繁華街は「お街」だ。とても狭い世界観だが、夢と憧れが詰まっている素敵な言葉。でも渋谷とか行くと死ぬ。ドラマ「池袋ウェストゲートパーク」のイメージで池袋に行ったら、池袋駅で迷って死んだ。東京最難関ダンジョンに指定して欲しい。


★グリコ・チョコレート・パイン。

通称「グリコ」という階段遊び。じゃんけんをして勝った手でグーなら「グ・リ・コ」と言いながら階段を上り、最初に上まで登った者の勝ち。尚「グミ・チョコレート・パイン」もあるが、それは「大槻ケンヂ」の半自伝的小説及び、それを原作とした漫画、映画。小説は「グミ編」「チョコ編」「パイン編」の3部作。でもオーケンの自伝小説なら「リンダリンダラバーソウル」をお勧めする。


★整理券番号札。

交通系ICやバスカードがあるのに、ついつい取りたくなってしまう。昭和世代には謎の魅力がある。私は祖母の墓参りに行く電車の切符も良くびちょびちょにして、しわしわの切符をモギリしてもらった。


★ミスタードーナッツ。

後の人生で何度も利用するお店。学生時代はポンデライオンぬいぐるみを彼女にプレゼントする為に足蹴よく通った。地元にクリスピークリームドーナッツがついにやって来たが、私は浮気せずに、ミスタードーナッツを裏切らなかった。


★ゴーストバスターズ2。

ダン・エイクロイド主演、脚本作品。ダン・エイクロイド作品ではブルースブラザーズとブルースブラザーズ2000がお薦め。コロナ対策で自宅にいて暇な方は、両作品とも見てほしい。

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