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第2話 身体測定をしよう

「それで、お主は誰じゃ?」


「……はい?」


 一瞬だけ意識が飛んでいたんだろうか。言われたことがちょっと理解できない。魂召喚の儀式とやらで俺を呼んだのは爺さんじゃなかったのか。……あぁ、それで孫娘の魂を召喚できずに失敗したんだったか。


「わずかでも可能性にかけてアフィーの魂が召喚できればと思っとったが、一番確率が高いのが死んだばかりの者の魂じゃからの。まぁいきなり暴れたりする人物じゃなくてよかったわい」


「えーと、俺はその……、名前は田中(たなか)拓哉(たくや)。日本という国出身の、男です」


「……は?」


 こんなに簡単に……かどうかは見てないのでわからんが、魂の召喚とやらをやってしまう爺さんがいる世界だ。きっと俺以外にも異世界召喚された人物がいることだろう。テンプレだと隠しておいたほうがいいとかあるが、召喚者本人にそうそう隠せるもんでもないだろう。


「いやだから、日本出身の――」


「そこはどうでもいいわい。……男、じゃと?」


「はい。男です」


 どうでもいいんかいと心の中でツッコミつつ、男だと聞かれて頷き返す。

 爺さんが『男……』とブツブツ呟きながらプルプルと震え、おもむろに俺を指さすと。


「男……じゃと!? 今すぐアフィーから出ていけ!」


 口から泡を飛ばしながら叫びだした。


「はぁっ!?」


 いきなり出ていけと言われてはいそうですかとなるわけがない。というか出て行く方法なんて知らないし。そもそも――


「じゃあ魂の召喚なんぞするんじゃねえよ!」


「うぐっ……!」


 俺のツッコミに見事言葉に詰まるハワード爺さん。孫娘にどこの誰とも知らん男が入り込んだなんぞなんとも嫌な感じしかしないが、それは自業自得というやつだろう。


「ま、まぁ、予想していなかったわけでもないからのぅ……」


 明後日の方向へ視線を逸らすと、あっさりとさっきまでの怒りが嘘のように影を潜めた。そこまで孫娘に傾倒していたというわけでもないのか。何が何でも孫娘を復活させたいというより、あくまでも技術者としてホムンクルスを作ったというところか?


「それに、普通にホムンクルスを造ったところでつまらんではないか」


「……どういうこと?」


 普通のホムンクルスと俺の魂が入り込んだホムンクルスは違うのか。


「一般的なホムンクルスはお主のように意思疎通はできんからの。こっちの言っていることは理解しているようじゃが……」


 しゃべらないからこそ魔術の詠唱もできず、魔術領域(メモリ)に焼き込んだ魔術しか使えないとか。


「……魔術うんぬんはよくわからんが、普通じゃないことはわかった」


 なんかもう一回盛大にツッコんだからか、敬語を使う気も失せたな。

 にしても魔術か……。仕事が忙しくて最近手を出してなかったけど、ラノベはよく読んだ身としてはちょっと期待してしまう。最初は爺さんのサイコパス具合にドン引きだったけど、それはそれこれはこれというもんだ。


「魔術がよくわからんとはどこの田舎の出なんじゃい。使える素養は誰でも持っとるから、平民でも使える人間はいるわい」


「そうなのか」


 出身国は伝えたと思ったけど聞いてなかったのか。それならそれでいいか……。


「とはいえじゃ。ここで生まれたホムンクルスとしての仕事はしてもらうぞ」


「えっ……」


 そりゃそうだよな。仕事しないと食べていけないもんな。いきなり誰もいない森の中で目を覚ますとかいうパターンに比べればマシというもんだ。……たぶん。ラノベの中じゃなんだかんだ言いつつもしっかり生活できてたりするが、あれはラノベだからだ。現実で異世界転移とかやって、生き残れるとは思えない。


「何をすればいいんでしょう」


 思わずちょっとだけ丁寧な言葉遣いに戻ってしまう。


「ふむ……。ホムンクルスを雇うと金がかかるからのぅ。平民は知らずともしょうがない。しかしまぁそれはおいおいだのぅ。まずは使えるように訓練するから励むように」


「……はい?」


 ちょっと待っとれと一言告げると、ハワードはそのまま部屋を出て行った。てっきり説明してくれるのかと思ったらとんだ肩透かしだ。しかし雇うってなんだろう。傭兵みたいなもんなのかな。


「はぁ……」


 まったく、とんでもないところに来てしまった。あのままブラック会社で終わるとも知れないプログラムを組み続けることを思えば、抜け出せてよかったと思わないでもないが。親孝行ができなくなったのが心残りではあるが、こうなってしまったからにはしょうがない。


「待たせたの」


 感傷に浸ろうと思ったところでハワードが帰ってきた。なんかでっかい犬を連れて。


「な……、なんですかそれ……」


 俺自身、足のつかない台の上に座っているわけだが、それでも見上げないと犬の顔が見えない。下手すると体高二メートルくらいあるんじゃなかろうか。漆黒の毛並みは見事としか言いようがなく、その赤い瞳は俺にまっすぐ向けられていてちょっと怖い。


「ウルフタイプのホムンクルスじゃ。まずはお主――アフィーの身体能力を測ってみんといかんからの」


 そう言ってニヤリと笑うハワードに、嫌な予感が膨らんだ。

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