表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/9

友人の男





お腹が大きくなり、日常がどうしようもなく幸せだった頃、あの人形の死んだ事も忘れかけていた頃、一人の来訪者が来た。

あの人形の友人を名乗る男がやって来た。


「彼は良い友人でした。」

「えぇ………」

「行方不明になってしまい、聞くところによると、他人を殺めたかもしれない……とか。」

「えぇ。」

「………………………………」

不快な男だ。

先程から言葉は不安を抱いているように聞かせているが、その顔には笑いをこらえているのが見て取れる。

何だ?何がおかしい?

気味の悪さで話が頭に入ってこない。

私の下腹部を見て、ニヤニヤニヤニヤ。


「お子さんですか?」

友人の男にそう言われて我に返った。

「え?…………えぇ。もう7カ月で。」

「そうですか。元気に生まれると良いですね。」

無論、その言葉にも気味の悪さがまとわりついていた。

「…………そう言えば、私の事は彼から聞いたんですか?」

そもそも、この男は何故、私の家を知っていたんだ?

「えぇ、彼が失踪する前、手紙が有りまして……ね。

そこに色々書いてあったんですよ。

あぁ、申し訳ない。長く居ては邪魔ですね。それではここいらで、お暇させて頂きます。では……。」

気味の悪い表情を貼り付けたまま、男は家から出て行った。

「あぁ、良いですか?」

私は決心して声を掛けた。











その晩。

「今日、アイツの友人って奴がウチに来たの。」

「え?アイツ?」

「ホラ、アナタが殺した……」

「アッ……あぁ、アイツね。」

夫となったのは良い。が、この男は臆病すぎる。

「アイツの友達が、『失踪前に手紙を貰った』って言ってたの。」

「!ヤバく無いか?アイツ、やっぱり証拠を!」

「かもしれない。でも、まだ捕まっていない。

私達には未だ、平穏を取り戻すチャンスがある!」

オドオドした夫がそれに対して言った。

「でも、そいつの居場所とかも解らないんだろ?」

「大丈夫、連絡先はちゃんと。」

そう言ってメモを取り出した。











「連絡先を教えて頂けませんか?

彼の失踪に関して何か思い出したことが有れば………」

友人に対して私は持ちかけた。

最初は良い顔をしなかった。

『面倒だ、もうこれ以上関わり合いたくない』とでも言いたげに。

「良いでしょう。住所と連絡先です。

何か有れば仰って下さい。」

そう言ってメモを渡して来たのだ。














「手伝って。」

「………え?」

「脅される前にやるわよ。」

「やるって……殺すって事か?」

夫の顔が青ざめる

「駄目だったらそうするわ。

私の平穏な生活を、邪魔させはしない。」

その眼は黒く、醜く歪んだ炎に燃えていた。










「手紙にはなんてあったの?」

「テッテテ手紙?」

縛られた友人が恐怖に震えながらそう言った。

「惚けないで。

あの死んだクズから手紙を貰ったんでしょう?そこになんて書いてあったの?その手紙は何処にあるの⁉」

「そ、それは…も、もう燃やして…………」

「もう良い。死になさい。」



そう言って、友人の男はあのクズ同様に崖から落ちて、二度と浮かび上がっては来なかった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ