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序章
「ねぇ………困っているの。」
男の胸に顔を埋めてそう言う。
「どう……したんだい?」
気の弱そうな、裸の男が言った。
こういうタイプは相手に尽くそうとして思考が盲目になる。
ベッドに誘って一言囁けばあっという間に都合の良い人形が出来上がる。
「実は…………」
自分は職場の店長に脅されている事、脅しのネタを握られている事を伝えつつ、困っていると涙を流した。
「このままじゃ、この子の将来が、将来が………………」
無論、大半が嘘。でも、それでこの男は十分だった。
「僕に任せてくれ!君を苦しめる奴は許さない。」
そこには身勝手な、自己陶酔で歪んだ正義感が燃えていた。