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雨の日には傘をくるりとまわす

初出:遥彼方様(ユーザID:828137)の活動報告で行われたお題に参加したものを、修正。


 道路には白い線で絵がかいてある。近所の子がかいたのかな?

 下を向いて、それを見ながら歩いていたら、地面に黒いシミがぽつんとできた。

 もしかして、雨?

 うわー、ほんとうに降ってきたんだ。

 朝はすっごくいいお天気で、雨なんてぜったい降らないよーって思ってたけど、ほんとうに降ってきちゃった。

 傘をもってきてて、よかった。

 しつこいくらいにいってたおかあさんに「ありがとう」っていわなくちゃ。今日のお手伝いポイントは、スタンプなしでもいいよっていっておこう。

 あー、でも、あとちょっとでカードがいっぱいになるんだよね。ぜんぶにスタンプおしたら100円になるんだ。もったいないかも。



 赤いチェックの傘は、今日はじめて使う。このまえ買ってもらったばっかりで、じつは雨の日をたのしみにしてた。

 ちょっとだけワクワクしながら、傘をひろげる。

 外から見るとチェックだけど、中にはハートマークが入ってて、見あげるとすっごくかわいいんだよね。

 へへへ。

 くるくるとまわすと、雨の粒がまわりに飛んでいく。

 公園で見た、スプリンクラーみたいなかんじで、おもしろい。

 くるくる、ふわふわ。

 ハートも傘の中を飛んでいく。

 たのしくなってぐるぐるやってたら、雑貨屋さんのまえにだれかが立っているのが見えた。

 あれは、仲村ちはるちゃんだ。


 どうしよう。

 ちはるちゃんは、となりの組にきた転校生。

 都会の小学校からきて、着てる服もオシャレでかわいくって、ついでに顔もかわいい。わたしみたいな子とはぜんぜんちがってて、ちょっと話しかけにくいかんじがする女の子。

 みんなもそう思ってるのか、いつもひとりで本を読んでる。となりの組だから、よく知らないんだけどさ。

 ゆっくりゆっくり歩いて、ついにお店のまえ。かわいいエンピツとかノートとかを売ってて、このあたりの女の子にはチョー人気のお店だけど、今日はおやすみらしい。

 いつもはお店の中が見える窓にカーテンがかかってて、なんだか別のお店みたい。

 ちはるちゃんが、こっちを見た。

 うう、どうしよう。ぜんぜん話したことないし、でも、だまって先に行っちゃうの、よくないよね。人には親切にしなさいっておとうさんがよくいってるし、「一日いちぜん」っていって、一日のうちにひとつ「いいこと」をしましょうって、学校でもいわれてる。

 よし。

 ドキドキしながら、わたしは声をかけた。


「仲村さん、傘、忘れちゃったの?」

「うん、降るとは思ってなくて」

「えっと、いっしょにはいる?」

「いいの?」

「仲村さんのうち、どのへん?」


 ちはるちゃんがいったのは、通り道だった。

 それなら、わたしもぬれないし、だいじょうぶ。「いっせきにちょう」ってやつだ。

 いっしょの傘にはいって歩く。

 でも、なにを話せばいいかわからなくて、だまったまんまになっちゃって、うう、どうしようかなぁ。

 となりのちはるちゃんを見たら、手さげカバンにマスコットがついていた。

 それは、ちっちゃいころによく見てたアニメのキャラクター。その中でもどっちかといえば人気がないキャラクターで、これが好きだっていうと、幼稚園でもヘンな顔されたことをおぼえてる。かわいいのに。

 でも、いいこともあってもね、人気がなかったからこそ、グッズも売れずにあまってて、いつでも買えたんだよ。

 わたしがそれを見ているのに気づいたのか、ちはるちゃんがそれをかくした。


「仲村さんも、ミミゾー好きなの?」

「知ってるの?」

「わたしも好きなんだ。かわいいよね」

「うん、かわいいよね」

「ミミゾー好きっていうと、みんなヘンな顔するの。おかしくない?」

「そうなの。なんでかな?」



 それからわたしたちは、ミミゾーのかわいさについて、ぞんぶんに話しあった。

 ピンクと茶色のブチもよう、左右でちがう耳の長さ、色ちがいの目、包帯をした手の秘密について――


「それでね、実はしっぽにも秘密があるんだよ」

「えー、なにそれ、知らないよ?」

「アニメの本にのってたんだ」

「そんなのがあるの?」


 さすが、都会の子はジョーホーリョウがちがう。

 すっかりソンケーのまなざしだ。

 ちはるちゃんこそが、ミミゾー博士だよ。


「えっと、もしよかったら、読む?」

「ええー、いいのー?」

「うん、根本さんさえよかったら」


 そのあたりでちょうど、ちはるちゃんの家についてしまった。ざんねん、時間ぎれ。

 おっきくて広い、なんか外国風のおうちだ。レンガの階段をあがったトコに、お花がいっぱい咲いたプランターが並んでる。

 うわー、すごい。おかあさんが見たら、めちゃくちゃよろこびそう。

 ほえー。


「ちはる、大丈夫だったの?」

 家の前に立っていたら、ドアがあいてだれかが出てきた。たぶん、ちはるちゃんのおかあさん。

「うん、あのね、傘にいれてくれたの」

「あらあら、そうなの。えーと、ちはるのおともだち?」

「……えっと」

「はい、あの、となりの組の、根本あすかです。はじめまして」

「はじめまして、ちはるの母です。送ってくれて、どうもありがとう。遠回りになってない?」

「だいじょうぶです、ここ、通り道だから」

 ちはるちゃんのおかあさんは、一度家にひっこむと、小さな袋とタオルを持ってあらわれて、わたしにくれた。

 傘からはみだしたところがぬれていたから、だと思う。

 顔もちょっとだけ拭いたら、いいにおいがした。ふむ、都会のかおりだ。もしくは、お金持ちのにおい?

 袋の方には、おかしが入っているらしい。

「あの、でも」

「昨日焼いたクッキーなの。たくさんあるから、もらってくれる?」

「はい、ありがとうございます」

 わお! さすが、おかあさんも都会の人だよ!



 門のまえで、バイバイした。

 離れてから、こっそりと袋をあけると、クッキーのおいしそうなにおいがした。

 これが、一日いちぜんのコーカってやつかなぁ。

 都会の子だからエンリョしてたけど、話してみると、ぜんぜんふつうだったし。

 いいことがたくさんあって、なんだか胸がふわふわする。


 わたしは傘をくるくるまわす。

 雨がぴちょんと跳ねて、水たまりに輪っかをつくる。

 頭の上で、ハートもふわふわ浮いている。


 あしたは学校で、おはようってあいさつしてみよう。

 そして、こんどはちゃんと「ちはるちゃん」って呼ぶんだ。

 わたしの持ってる、とっておきのミミゾーコレクションも見せてあげよう。

 あつめてたシールも、ちはるちゃんになら一枚あげてもいいかなぁ。

 へへへ。




雨が降り出し、歩いていた主人公が傘を広げる。

  ↓

軒先で雨宿りしている同級生を見つける。

  ↓

相合傘をして二人で帰る。


この流れを一人称で。主人公の性別、性格、年齢、二人の関係性も自由。


ということで、まっさきに「小学生女児」が浮かんだ私です(笑)


実にタイミングがよかったので、エブリスタの超・妄想コンテスト第103回「傘」に出しておきました。


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