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お盆まで食い込む期末試験期間が終了すると、古都大学では、9月末までの長い夏休みが訪れる。ある者はここぞとばかりに遊び、ある者はここぞとばかりに部活での練習をし、ある者はここぞとばかりに勉強をする。佐久間は、なんとかして夏休み中にすくなくともライトノベルを一度最後まで書ききる必要があると思っていた。
お盆に実家へ帰省した後、昼過ぎに京都へ戻ってくると、京都駅を出たところで、あまりの蒸し暑さに京都に戻ってきたことをひしひしと実感させられる。その後、観光客の多さでもう一度同じことを実感させられる。
京都市バスを使って下宿アパートまで戻ると、もわっとした熱気が押し寄せてきて、実家が恋しくなった。カバンを置いて荷物を下ろした後、iphoneを確認すると、木村美夏からメッセージが届いていた。
「今度こそ、ご飯をおごらせてください!」
まだ、そんなことを言っているのか。佐久間は、若干呆れながらメッセージアプリを閉じる。お盆のどこかで行こうと試験前に誘われていたが、実家に帰るの一点張りで断っていたのだった。
勉強を教えてもらったお礼ということだったけど、佐久間にとっては、特に教えているつもりはなかった。というより、ふつうに二人で問題を検討していた。むしろ教えてもらうことの方が多かった気がしていた。そんなことだから、おごってもらうには、気が引ける。そもそも女の子と二人でご飯を食べに行くということ自体、気が引ける。そのようなこと自体が、佐久間にとっては、期末試験以上の一大イベントであった。応じるには相当の覚悟がいる。できれば避けたかった。
しかしながら、今後横山さんとの甘い青春を謳歌するには、必ずこのイベントを乗り切らねばならないだろう。むしろ、これ以上のイベントを乗り切らねばならない。どのみち通る道であるならば、今やるか後回しにするかの違いである。佐久間は、回答に悩んだ挙句、食堂でご飯を一緒に食べるくらいならいいかと思い始めた。
「そんなに言うんなら、おごってもらうかはともかく、一緒にご飯食べにいこう!」
勇気を振り絞ってメッセージを送ると、すぐに既読状態になり、幸せそうな猫のスタンプが送信されてきた。
「やったー! じゃあ店とか考えておくね!」「そう言えば好きな食べ物ってなに?」
佐久間は、大変なことになったと思った。




