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次の日、佐久間が大学へ講義を受けに行くと、法経第4教室では、横山さんがいつもの席に座っていて、やはり手を振ると挨拶をしてくれるのだった。
「おはよう。佐久間くん、めっちゃ焼けてるんやん! 休みにインドでも行ったん?」
「そうそう、悟りを開くためにちょっと修行してきた」
「えっ、ほんまに行ったん?」
「ちょっと砂漠にね」
「三蔵法師やな」
佐久間が横山さんの隣を通り抜けていつもの席に座ると、それを見計らったように例の美少女(佐久間は、名前を忘れていた)が近づいてくるのだった。
「おはよう!」
「あ、こんにちは」
「ねぇ! あとで民法教えてくれへん? わたし、代理がよく分からへんくて……」
「うーん、まぁいいけど……。俺もあんまり分かんないよ」
「やった。分かる範囲でお願いします!」
彼女の声は、いちいち弾んでいた。
附属図書館1階の奥には、「ラーニングコモンズ」と呼ばれる、議論用のスペースが広がっていた。佐久間は、以前、図書館の中を窓からのぞいたとき、隣り合って座っていたカップルがちょうどキスする瞬間を見てしまったことがあり、そのときから、ここでカップルのいちゃつき行為が行われることを「ラーニングコモンズの悲劇」と呼んでいる。ここは勉強・議論する場であって、勉強にかこつけていちゃつくための場所ではないのだ。
ラーニングコモンズは、期末試験前ということで、16時ともなると、ほとんど学生で埋め尽くされていて、とりつく机もない。そんな中でも木村さんは、ずんずん中へ進んでいき、ちょうど空いた机を自分のかばんで占拠して、場所を確保したのだった。あまりのしたたかさに佐久間は、彼女の勇姿を目を見開いて見ていた。その間にも木村さんは、ホワイトボードを確保していた。
「ほら、はやく!」
佐久間がぼけっと突っ立っているのを見かねてか、木村さんは、さっそく椅子に腰かけて、佐久間を手招きしている。木村さんは、膝上のスカートを履いているのにその長い脚を組んでいて、すらっと伸びてみえる素足がエロい。佐久間は、邪念を振り払い、その机のもとへ行く。
「今日は、代理について、ね!」
その日、附属図書館が閉館するまで、佐久間は、木村さんと代理について熱い議論を交わした。




