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別れ編

2003年、僕らは結婚生活を満喫していました。

お互い結婚の実感がないまま、恋愛の延長で同棲生活を楽しんでいたとの感は否めないものの、それでも幸せの真っ只中にいたのは間違いありません。

暇さえあれば日本中どこへでも出掛けていたのもこの頃です。

少しずつ、しかし着実に夢の国へと歩を進めているはずでした。

あの出来事がおきるまでは。


久しくスキーにいっていなかった僕は、スキーに行かないかと妻を誘いました。

しかしスキーをやらない妻は頑なに拒否したのです。

そこで、飲み友達、職場の同僚、昔からの友達にメールを一斉送信しました。

割引チケットの関係で日時は限られています。

当然のことながら、なかなか人が集まりません。

ようやく都合が付いたのが、職場の女性のみ。

残りは検討となったのが一人二人。

この事実をしかし妻は受け入れたのです。


年が明けて2004年

正月を妻の実家で過ごし、その時にお母さんにも話し、妻が良いって言うなら良いんじゃないのと、あっさりと認められました。

こうして僕は女性二人と一泊温泉スキー旅行へと出掛けたのです。


スキー旅行中、男女二人、何かが起こってもおかしくないのですが、さすがにそこは新婚ホヤホヤ、ただただ気を使うだけのとても疲れる旅行となりました。

今思えば、こけからボタンの掛け違いが始まっていたのかも知れません。


それからそれ程た経たないある日。

職場の同僚4人で飲んでいました。

同僚一人の終電がなくなりそうになり、ウチに泊まるかとの話しになり妻に電話。

しかし、いきなり言われても困る。連れてくるな。朝まで相手してろ。と言われ、朝まで飲む覚悟を決めました。

しばらくして妻から電話。

早く帰って来いとのこと。

しかしすでに終電がなくなってしまった同僚を置いて行くわけにもいかず、しばし妻と口論に。

結局、朝まで飲んでろと言われ電話を切られました。

それから間もなく、またしても妻から電話が鳴りました。

連れて来ていいから帰って来いとのこと。

すでに僕の終電もなくなり、帰る術は数千円かかるタクシーのみ。

二転三転する妻の言葉に酔った勢いも手伝い、そのまま電話口で喧嘩となってしまいました。

思えばここで無理してでも帰っていれば、悲劇は避けられたのかもしれません。


翌日そのまま仕事へと向かい帰宅した夜。

当て付けのつもりか、飲んできたらしく珍しく帰宅の遅い妻。

寝ようと布団に横になったころ、突然妻がつぶやきました。

別れましょう。

あまりにも突然過ぎる言葉に動揺する僕。

しかし妻は泣きながら、このままでは長野に行けない。別れましょう。と繰り返すのみ。

なんとか落ち着かせ、酔ってるみたいだしとりあえず寝よう。明日、落ち着いてゆっくり話そう。と、無理やり寝かせました。


翌朝起きると、妻が一言。

今、お母さんが向かっているから。

お互い仕事のため家を出たものの、先ほどの言葉が頭を離れません。

仕事が終わり帰宅するものの人気のない我が家。

電話をするも不通。

妻の実家に掛けるも要領を得ないお父さんの返事。

混乱の中夜が明け、寝不足のまま職場へ。

お昼ころ、ようやく妻から電話がありました。

明日引っ越します。

混乱した頭で早めに仕事を済ませ帰宅。

相変わらず妻の携帯は不通。

妻の父も二人がどこにいるかは分からないとのこと。

念の為実家に電話するも連絡は無いとのこと。

共通の友人に電話するも分かるものは誰もなし。

2日続けて寝れない夜を過ごし、仕事へ。

仕事が手に着かないまま、時間は過ぎ帰宅。

玄関を開けた僕の目に、信じらんない景色が広がっていました。

まさに蛻の殻とはこの事を言うのでしょう。

お情けで残されたレースのカーテンが虚しく揺れるのみ。

妻と妻の母親が一円でも出した物は全て運び出された後でした。

一人暮らしの頃使っていた布団はすでに処分していたため、今夜はコタツで寝るしかありません。

こういう時、人間は笑う事しかできないのだと思い知らされました。


翌朝、職場へは事情を話し休みをもらい、温もりを求めて実家へと向かいました。

事情を説明し、とりあえず必要な日用品を買いに行き、連絡があったら教えて欲しい事だけを告げ、慌ただしく東京へ戻ると、一通の郵便物が。

中には妻の署名捺印された離婚届。

しばらくして母から電話が鳴りました。

さっき妻のお母さんから電話があり、離婚届を送ったから署名捺印後提出して欲しいとのこと。その話しを聞いて親父は激怒し、あんな家族とはさっさと縁を切れとのこと。

妻と話し合いたいからそれまで待ってほしいと告げ電話を切りました。

しばらくすると妻から電話が。

離婚届を提出してほしい。

そうしないと母が納得しない。

話し合いたい旨伝えるものの、母が許してくれないから無理だと思うと繰り返すのみ。

やがて事情説明を求めて親父が長野に電話。

妻の母はただ僕と親父を罵る事に終始していたとのこと。

ここに僕の親父と妻の母親との間に、決定的な亀裂が生じ、もはや修復不可能な状態へと突き進んで行きました。

騒動後一度も妻と合うことなく、連絡も妻からの一方的なもの、頻繁にやってくる僕を責め立てるメール。

心身ともに疲れ果て、進退極まった僕は、離婚届の提出を決意しました。


ここに僅か10ヶ月の結婚生活にピリオドを打ったのです。


二人一緒に目指していた。

必ずあると信じていた。

そこに行けば幸せになれると思っていた。

その国はしかし遠く険しい道のりだったのです。


二人にとって。

夢の国はあまりにも遠かった…

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