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闇を纏う写真

作者: 紫尾

 此の世で最も恐ろしいものは流れゆく時空の一片を切取り紙に残す写真である。其の切取られた一瞬の血の通わぬ無機質な私の顔をみる度、背筋に水が滴り落ちる様な嫌悪と果ての無い砂漠の様な恐怖を感じる。

 

誰かが言った、写真は世界を逆さに映し出す、そのため被写体は着物の衿を死人合わせにしてカメラの前に立つのだ、生者が死者を演じ、切取られた一瞬が生者となる、此の深い深い井戸の底に満ちる闇の様な歪みが私は恐ろしい。

 

 誰かが言った、写真の真ん中に映し出された者は早死にすると、其の奇怪な理不尽極まりない、無限に続く螺旋階段の階下の闇の様な歪みが私は恐ろしい。


 鏡は私を映し出す、私が消えれば鏡面の私も消える。私が此の世から消え去っても切取られた一瞬の私は消えてはくれない。私という存在が百年前にとっくに消滅しても切取られた一瞬の私は血の通わぬ無機質な顔で存在し続ける。消滅したはずなのに存在し続ける偽物の私、人はそれを遺影と呼ぶ。其の棺の隅にひっそりと広がる死の闇の様な歪みが私は恐ろしい。


 綺麗さっぱり、人知れず死に逝く猫の様に消えてしまいたいだけなのに、其の純粋な願いを邪魔し、無機質に嘲笑う切取られた一瞬の私、其の合わせ鏡に映る四番目の私の嘲笑う黒い口内の闇の様な歪みが私は恐ろしい。


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