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96話

カナタ殿が施した治癒魔法に因って、レイチェル殿もテラも動く事が出来る程には回復したようです。

姉上は目を覚ましたといっても未だふらつく様子。やはり血が流れ過ぎたのでしょう。姉上が現状を把握したいと立ち上がったので、肩を貸すように姉上を支えました。



「…こんなに、壊されてしまったんだね…。」



シオドア殿の姿が見えなくなっても雨は降り続きました。あの人の魔力も多いみたいです。

燃え盛っていた炎は徐々に小さくなっていき、多少の(くすぶ)りはありますが街並みは瓦礫(がれき)の山と化しています。

逃げ遅れた人が他にも居たかどうかは分かりませんが、焦げた匂いは鼻を覆いたくなる程です。



「結局、シオドアさんたちが助けてくれたの?」


「助けて…?まぁ、結果的には。」


「結果的に?」



小生の曖昧な返答に姉上は不思議そうな表情をしています。あれは助けてくれたという表現で良いのかどうか判断に苦しみます。アイツ等があれ程大きなリアム殿の宝石を出したから、このような結果になっているだけなのです。リアム殿の宝石が出て来なければ、放置されていたような気がします。リゼンは小生を甘やかして下さるので、本当の窮地に陥れば助けて下さったかも知れませんが。



「まぁ何にせよ、アンタが無事で良かった。どこも怪我とかしてない?」


「はい。姉上も…痛むところはありませんか?」


「うん、どこも痛くないよ。…ちょっとフラフラするけどね。」


「今日はもう帰って休みましょう。…宿に泊まれるかどうかが分かりませんから、一度城に戻るのが得策かと思いますが。」


「そう、だね。でもこんな状態の街を放って帰れないよ。家族とはぐれた人も居るだろうし、怪我した人も居るかも知れない。」


「……何の義理も無いじゃないですか。」


「損得でも義理とかでもないの。困ってる人が居て、私が動けるなら助けたいの。…教会で身に付いた博愛精神は根強いんです。」


「姉上は休むべきと思いますが…。」



姉上を説得するのは難しいのです。

此方に戻って来たカナタ殿たちも今日は休もうと言って下さいましたが、姉上は街の人が心配なのだそうです。助けられる命があるかも知れないと言うのですが、姉上が倒れてしまっては意味がありません。

いっそ抱え上げて無理にでも連れ帰ってしまいましょうか…。



「あ…、あんたたちか、魔族を追い払ったのは…。」



カナタ殿たちと共に姉上を説得して一時帰還する為に話をしていたところ少し離れたところから声が掛かりました。

逃げていた街の住人が集まってきているようです。あの二人はリゼンとシオドア殿が連れて行きましたし、シオドア殿の置き土産のおかげで鎮火しました。まだ雨は続いていますが、その内止むと言っていました。

現状では危険はないだろうと判断して出て来たのでしょう。



「私たちではありませんが、もう彼等は去ったみたいです。怪我とか、していませんか?」



姉上が駆け寄ったところ、声を掛けて来た年配の男性は姉上の手を払い退けました。

心配してやっているのに無礼な親父ですね。



「なんて事をしてくれたんだ!!」


「え…?」


「こうなったのはあんたたちの所為だ!!燃えた家を、失った家族を返してくれ!!」



この親父は何を言っているのでしょうか…?この状態はあの二人が破壊の限りを尽くそうとした結果であり、あのままでは街一つ滅ぼされてしまっていたかも知れないというのに…。

これが最小限の被害と言っても過言ではないと思うのですが。



「ぉ、落ち着いて下さい。確かに、もっと早く彼等を止める事が出来れば被害はもっと少なかったかも知れませんが…。」


「あんたたちが…、あんたたちが街を壊したも同然だ!!」


「俺達の力不足は認めますが、彼女を責めるのは違うと思います。復興の手伝いもさせて貰いますし…。」


「出て行け!!」



姉上が困惑しながらも謝罪しそうになっているところをカナタ殿が口を挟んでくれました。それでも先頭の親父と同じく人々からは批難の声が上がります。


人の群れを掻き分けるように出て来たのは領主だという男でした。

この男…、道を間違えた際に襲ってきたフードの男と一緒に居た男…。



「勝手な事をしてくれたと言っているんですよ。この街は彼等と共存していたのです。」


「な、にを…?」


「食料を提供する事でこの街は襲わないという契約が成されていたのです。この街の武器などは購入して下さる大切な顧客でもあったのです。それを…。」


「ま、待って下さい。では彼等が襲ってきたのは私たちに原因があると言うんですか?」


「交渉中に邪魔をしたじゃないですか。それに彼をああも簡単に制してしまって…。敵意があると判断されてしまったんですよ。どうしてくれるんですか。」


「交渉中…、…あの時の!?でも、あれはいきなり襲ってきたじゃないですか。」


「大人しく口を封じられていれば良かったんです。それを、返り討ちにしてくれて…。」



生まれたばかりの頃は日本と言語が異なる事で混乱しましたが、今では読み書きも普通に出来ています。ですが、この男の言葉が理解出来ないのです。




暗がりでフードの男と交渉をしていたらしいです。そこに道を間違えた小生たちが居合わせてしまった。

自称魔族と街が結託している事を知られたくなくて口封じに襲ってきた。そして取り逃がしてしまったとはいえ姉上に返り討ちに合った、と。

それを彼等は脅威とでも判断したのか、街を襲う口実を得たとでも思ったのか街の破壊へと方針を変えたという事らしいです。


小生たちに非があると言いたいらしい街の連中の頭の中がどうなっているのか確認したいですね。



「彼等の要望に応えていれば街は安全だったんだ!それを…っ。」


「家族を返してくれ!!」


「こんな酷い事になったのはあなたたちの所為よ!!」


「全財産が燃えたんだ!返して!」



姉上とカナタ殿が困惑しながらも街の連中を宥めようとしています。レイチェル殿とテラは寄り添うようにして戸惑っている様子。


あぁ、だから。

シオドア殿が姉上を冷たい眼差しで見ていたのはこの事に気付いていたからなのかも知れません。他に意図があったかも知れないですが、恐らくはこの事でしょう。

姉上と共に聞き込みをして、自称魔族たちとの交渉に因って平穏を得ている街だと感じたのだと思います。それを気付かずに些細な違和感しか感じられていなかった姉上を憐れんでいたのかと思います。憐れむ、というよりは蔑んでいるようにも見えましたが…。

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