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17話

魔力を外に出すのも、魔法を作り上げるのも全ては想像力。

佐藤大翔(さとうひろと)殿が間違われずにこの世界に生まれていたら…、そう思うと余計に申し訳なく感じてしまいます。



「クロガネ、もしかして…本当のヒロト君の事気にしてる?」


「リアム殿は心の中を覗けるので?」


「あははっ、私凄い!…じゃなくて、そんな顔してる。私じゃなくても分かるって。」


「小生ではなく、大翔(ひろと)殿がこの世界に生まれていたら…、そうしたら、きっと勇者とやらになれていたのでしょう。そう思うと…申し訳なくて。」


「んー…、でもクロガネが今ここに居るんだから、クロガネの好きに生きたら?ヒロト君に助けて貰ったって事は感謝しておいて、今の生活はクロガネの生活なんだから。それじゃダメ?」


「…リアム殿は前向きですね。でも、少し救われた気がします。……ありがとう。」


「ふわっ、笑うと余計にイケメンさんだ!」



リアム殿は時々分からない事を仰います。ですが、救われたのは本当です。

生まれてから10年、勇者として持ち上げられていました。勇者だから大切にして貰いました。小生は大翔(ひろと)殿ではないですが、母上も姉上も小生を愛して下さっていると理解しています。

しかし、大翔(ひろと)殿の生活を奪ってしまったような気がしてどうにも引っ掛かるものを感じていました。

小生を救おうとしてくれた彼に感謝する事を忘れず、小生は十回目の生活を楽しむ事としましょう。



「…生き物らしい顔だな。」


「小生は生き物です。」


「生きているかどうか分からん顔をしていた。…クロガネ、今ここに居るのはお前だ。ヒロトの代わりに生きるのも選択肢の一つだろう。…が、勇者になって魔族に牙を剥くなら容赦はしない。」


「いだだだだっ!吏漸(りぜん)、痛いですっ!」



吏漸(りぜん)が少し笑ってくれたと感じました。優しい言葉と共に撫でてくれて嬉しいとさえ思ったのですが、ギリギリと骨が軋むような音が聞こえそうな程に頭を鷲掴みにされました。リアム殿が止めてくれなければ頭が砕けたんじゃないでしょうか…。

シオドア殿は笑っているだけでしたし…。



「うぅ…、…魔族と人間は昔から仲が悪いのですか?」


「は?常識だろうが。んな事も教えて貰ってねぇの?」


「はぁ…、面目ない。」


「まぁまぁ、お兄ちゃん。んーと、何処から話そうかな…。」



今度はリアム殿が歴史の講義を始めて下さいました。

人間側の歴史では、魔族と人間は干渉せずに生きていたらしいのですが魔族がいきなり戦争を仕掛けて来たとのこと。人間側の敗北が濃厚になってきたところ数人の転生者たちで魔族を退けたのだとか。祭壇に現れる赤子は女神の子として大切にはされてきたらしいのですが、魔族を退ける程の力があるとは知られていなかった為にこれ以降転生者は勇者として崇められるようになったそうです。

そして、魔族は人間を襲う者として恐れられ、敵対するようになったのだとか。



「……勝手な事を…。アイツは、惚れた女にアプローチをしようとしただけだ。…方法は、悪かったがな。」



リアム殿の知っている人間側の歴史を聞いた吏漸(りぜん)は呆れたような溜息を吐き出しました。

彼の知っている歴史は違うもののようです。


魔族の青年が半人に惚れたそうです。

半人とは人間の見てくれに獣の一部を持つ人たちの事。半獣は獣でありながら人間のような知識と人間のような姿に変化出来る人たちの事。半獣と人間が番うと半人が生まれるそうで、魔族の青年が惚れたのは羊の半獣と人間の間に生まれた娘。

とても清浄な魂を持って生まれた娘に酷く惹かれてしまったそうです。まだ赤子であった彼女にもう一度出会えるようにと自分の魔力を注いで小さな小さな痕を残してしまった。しかし青年は魔族。闇属性の強い彼は魔族たちの中でも上位の存在であり、彼女の魂は清らか過ぎた。反発した魔力同士に()てられて、痕は呪いとなり彼女の身体を蝕む結果となってしまった。


彼女はその呪いを解くべく各地を回る事にしたそうです。もし解けなくても、沢山の物を見て沢山の事を知ってから死にたいと。

そんな折に出会った転生者の青年が魔族の魔力で作られていると気付いてしまいます。転生者である彼は強大な魔力と、全てが白金等級の能力を所持していました。当時は名前の無かった地、今ではゴートランドと呼ばれるこの地に仲間となった転生者を連れた青年が訪れます。

魔族を探して訪れたのです。


魔族の青年は魔将軍と呼ばれる男に成長していました。魔族たちを率いる立場になったのだそうです。

その為に責任が生まれ、彼はゴートランドから離れる時間を失っていきました。彼女の身体が病に蝕まれているなど、気付かないまま。


転生者の青年は襲ってきた魔物や魔族を打ち倒して進み、魔族たちは人間が襲ってきたのだと思った。

転生者たちは魔物や魔族を敵だと思っていたそうなのです。魔物も、魔族も縄張りを侵された為に攻撃をしただけで、中には和睦を試みた魔族も居たとか。

しかし転生者たちは聞く耳など持たずに目の前に現れる全てを倒し、魔将軍の駐屯する地へと向かっていったのです。魔力を探知する能力を持った転生者の一人が半人の娘に残された魔力から魔将軍の魔力を探知したのだとか。


魔将軍の元に辿り着いた彼等は正義を振り翳して戦いを挑み、そして敗北します。縄張りを侵し同胞を殺した転生者たちを赦す訳にはいかないと止めを刺そうとした魔将軍は、半人の娘が自分の魔力で病に侵されていると知って彼女に謝罪をしたいと剣を収め痕を残してしまった経緯を吐露します。

彼女を隷属させるつもりもなくただ、彼女を探す目印として痕を残しただけだと頭を下げたそうです。

しかしそんな彼の誠意を転生者たちは信じませんでした。



頭を下げた彼の首を落としたそうです。



転生者たちは魔王を倒したと凱旋し、魔将軍を慕っていた魔物や魔族たちが彼等を追って人間の住まう地に攻勢に出た時も転生者たちは表立って戦ったとのこと。

魔物も魔族も退けた転生者たちは勇者として崇められるようになったそうです。


そして転生者は勇者の素質のある者として、魔族は邪悪な者として認識されるようになったのだと聞きました。

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