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侵蝕・崩壊世界

作者: 如月良平

「お兄ちゃん。明日、世界が消えてしまったらどうする?」

妹は不敵な笑みを浮かべ俺にそう言った。


***

今日は土曜日。快晴だ。

彼女と駅前で待ち合わせをしている。

少々早く来すぎてしまったようだった。駅の1番上にある時計台を見ると、本来の待ち合わせ時間より30分も早く来てしまっていることが分かった。


俺はスマホをいじるなどし、時間が30分経つのを待った。

しばらくしてだろうか、スマホゲームに熱中して時間の確認を忘れていた。時計台を見ると待ち合わせの時間2分前だ。


「そろそろか。」と俺が呟いた時だった。


地面に大きな影ができ、俺は空を見上げた。周りを歩いている大勢の人たちも同じく、空を見上げていた。

それはそうだろう。なんせ、今日は雲ひとつない晴天なのだ。先ほどまで雲ひとつなかったのにどうしてだろうと空を見上げるのはなんら不思議ではなかった。


空には大きな白い雲が何個か浮かんでいた。…と誰もが思った。しかし、その群衆の中で俺が1番に声を上げた。


「鯨だ‼︎」と…


見ると鯨が7匹空に浮かんでいる。

群衆はどよめきの声を上げた。

中には逃げていく人、中にはスマホの写真におさめる人など様々だった。


そして、俺は鯨の他にもう1つ気づいたことがあった。

空が歪んでいるのだ。歪んでゲートのようなものが浮かんでいる。



異常な事態でありながら、ほとんどの人達が逃げずに、それをただ眺めているだけであった。俺もその中の1人だ。


次の瞬間だった。

鯨が街を旋回し、大咆哮をあげた。

この時、皆が危機を感じ逃げ始めた。もっともそれはもう遅かったのだが…


鯨が発する白い霧によって、空、ビル、橋、人、全てが砂のように、消え去っていく。


何もかもが消え去っていくのに、俺はとてつもない恐怖心を抱いていた。それと同時に、俺の大切な人のことが心に浮かんだ。


「彼女は無事なのだろうか?」


霧が晴れ、辺りが見えてくるようになった。しかし、霧がなくなったところで、街は白いままだった。

青空は消え、真っ白に。建物も今もなお、白に侵蝕されていき、消えていった。

人も誰もいなくなっていた。


その中で俺は叫んだ。彼女の名前を…


しかし、当然返事はなく、俺は絶望というものに心を侵蝕されていった。


全ての日常が失われた。

ここから逃げたところで、世界中が白の無に侵蝕されていくのは時間の問題であり、逃げる気も起きなかった。



絶望の中、ふと昨日の出来事を思い出した。

昨日、妹が俺の部屋に来てこう言ったのだ。


「お兄ちゃん、明日、世界が消えてしまったらどうする?」

と不敵な笑みを浮かべて…


あの時は、「何を馬鹿なことを言ってるんだ」と追い返したのだが、一体妹は何を知っていたのだろうか?果たしてあれは妹だったのだろうか?


全ては、白という名の無の世界に消えていった。





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― 新着の感想 ―
[一言] 初めまして。作品を拝読させていただきました! 私には、ちょっと難しい小説でした。 鯨は何を象徴しているのだろう。白の意味はなんだろう。 ……と、考えてしまいました(笑)。。 淡々とした文…
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