11.
よろしくお願いします。
少し薙の父視点。
「いがらしってひとはなにものなの?」
俺の娘、樫木 薙が言った言葉に凪いでいた心が一気に荒波と化した。
五十嵐 柾。俺が二度と会いたくない男。華に執着し、監禁した男。
「えっと……私は四条 華といいます。助けてくださってありがとうございます。その、お名前を伺っても……?」
「ああ、俺の名前は樫木 藤。四条さん、次から気をつけなよ。君、結構可愛いからさ。」
「かかかかか、可愛い?!」
「へ?なんで真っ赤になってるの?」
「そ、そんなこと言われたのはじめてです……でも、嬉しい。樫木さん、ありがとうございます。」
「は、はあ……。」
俺と華の出会いは蛍ノ光学園。ガラの悪い男たちに絡まれていた彼女を助けたのがきっかけだった。
「あれ、四条さん?」
「あっ……樫木くん。」
「一人でお弁当食べてどうしたの?」
「えっと……その……。」
「まっ、いいや。俺ここで食べていい?」
「うん……」
屋上で一緒に弁当を食べるようになって……
「好きです。付き合ってください。」
「え……。」
「好きです。」
「その…私も好き、です」
俺から告白して恋人になった。
五年後、そろそろ彼女にプロポーズしようと思った時だった。
「華が、いなくなった……。」
彼女が消えたのは。
「っ!華、大丈夫か!?」
「ふ、じくん………。」
華は近所の大学生で顔見知りの五十嵐 柾に監禁されていた。
俺が発見した時の華はとても衰弱していて…………
次々とあの頃の思い出が蘇る。
「知って、薙はどうするんだ?」
無意識に冷たい声を出してしまった。俺は華が傷付くことに関してやたら敏感だ。まだ五歳の最愛の娘に酷い態度をとってしまうほどに。
「なぎは……」
それでも、一瞬固まった娘は震える声で答えた。
それはとても薙らしい答えだった。
「知って、薙はどうするんだ?」
その冷たい声にどう答えればいいのだろう。この五年間向けられてきた暖かい声とは違う温度に体が強張ってしまう。
覚悟を決め、ギュッと拳を握る。冷や汗がつうっと背中を伝い、震え声が唇から零れ落ちた。
「なぎはママがきずついたりゆう、しりたい。しって……」
「知って?」
「………しって、なにもしない。」
「は?薙、どういうこと?」
「なぎはなにもしない。だって、いまのなぎにはなにもできないから。」
今の私には何も出来ない。だから、何もしない。
「でも、しってるのとしらないのではちがうもん。」
でも、知ってればいま出来なくても後になって出来ることはあるんだ。
ありがとうございました。
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