シロアオキアカミドリクロ
イメージの塊。ストーリーはありません。
――白い世界。
上下左右、三百六十度と三百六十度、どこまでも続く白い世界は、歩いても歩いても、ただただ白い地平が見えるばかり。
地面は丸いのか四角いのか、平面なのか立体なのか、線なのか点なのか、歩いている自分にもわからない。
私の格好も、白い。着ているものも、履いているものも、肌、髪の毛の色も、白い。
白、白、白。
なぜ白い?
白い世界で白いブロックにぶつかった。
一辺が二メートル程の立方体。
白い世界にぽつんと佇んでいる。
その寂しげな前面を撫でると、立方体は飛んでいった。
数百メートル飛んでいった。
立方体はコロコロと転がり、立ち上がると、悲しげに、すごすごと何処かへ去っていこうとする。
いきなり触るなんて、どうかしている。私の頭は狂ってしまったのだろうか。
謝ると、立方体は微笑んで、白い地面にずぶずぶと沈んでいった。
罪滅ぼしに、その上を歩く。
そこから先、足下が柔らかくなっていた。
気をつけないと、一瞬で沈んでしまう。
白い四角は許してくれないらしい。
沈んだ気分で見上げたのに、白いバケツは浮いていた。
バケツからは白い糸が垂れ下がっている。
手をのばし、糸を引く。
するとバケツはひっくり返り、青い液体をどくどくと流し始めた。
長い時間をかけて、世界は三百六十度と三百六十度、青に染まった。
バケツは色を使い果たしたのか、黄色くなっていた。
白い私は青い世界を進まなくてはいけなくなった。
黄色いバケツを見ると、バケツはふるえて丸くなり、上方へ飛んでいった。
みるみる上昇していった。
青い空に、黄色い染みができた。
青い世界は白い世界よりも進みづらかった。
足が張り付き、どうも歩きづらい。
ふと見ると、足がつけ根までズクズクと、青に染まっていた。
あれからの二千十三万八千七十三歩の間に、
足が青を吸ってしまったらしい。
しぼればジュウジュウとでてきそうだ。
ふりかえると、白い足跡がずらりとならんでいる。
間違えた。
青を吸ったんじゃなくて白を置いてきたのか。
試しに後ろ向きに二歩歩いてみると、白は返してもらえた。
しかし三歩目で飽きてしまった。
しかたがないので足をしぼる。
やはりジュウジュウとでてきた。
すべてだし終えると、足はすっかり白く軽くなった。
青い世界はなかなかやさしい。
しかし、私はなにをしたいのか。
後ろから、赤い丸いモノがフワフワと飛んできた。
ちょうど、私の手のひらくらいの大きさだ。
こんにちは、と声をかけると、さようなら、と返された。
帰るのかい、とたずねると、赤は小さく頷いた。
気をつけて、と手を振ると、気をつけて、と返された。
私も帰ろう。
緑の雨が降ってきた。
緑の雨は強烈だ。
容赦なく、ザンザンと私の体を打ちつける。
私の体は全身すっかり緑に染まってしまった。
しようがないので、雨宿りが出来るところを探す。
が、いくら見回しても地平線を遮るモノは何もない。
ならば雨の上にいこう。
止まっている雨粒を選びその上を歩く。
慣れれば階段のようで、スイスイと進めた。
雨の上に着くと、雨の親がいた。
雨の親は、私を見て怯えているようだ。
私は体を絞り、緑の子を返す。少し白が混ざってはいるが、緑の親は喜んでくれた。
受け取った緑の子を、緑の親は小さくちぎり、青い世界へばらまいた。
緑はヒラヒラ、青い世界へ飛んでいく。
緑の親は願いを一つ聞いてくれるというので、世界を白に戻してほしいと頼んだ。
しかし緑の親は悲しげに、それは無理だとつぶやいた。
そうだった。
白など、最初からない。
最初すらない。
世界もない。
緑の親が消えた。
緑の子も消えた。
赤い丸も消えた。
青い世界も消えた。
黄の染みも消えた。
白い私も、消えた。
世界は真っ黒になった。
わけわからん、という感想で正解です。 たまにはこういうのもいいですよね。