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旅立ち

「なるほど、今日にでも出発すると言うことじゃのぅ」

「ええ、師の挨拶は昨晩中に済みましたのでこの町に長居はしません。またここへ訪れる時はもう少し立派な花を持って来ます。今回供えさせた花は少し申し分ない程度でしたので」

「ほっほっほ〜それは兄者も喜んでくれるじゃろう。しかし済まんかったのぅディルよ、いきなりに呼び出した挙句アルマちゃんを任せてしまって」

「いえ、アルマのことは気にしておりません。師の恩義に比べれば大したことでないです。面倒を見てやるのは今回が初めてと言う訳ではないので」

「そう言ってくれるとありがたいのぅ・・・・・・アルマちゃんのことよろしく頼むぞ」


 長老は嬉しそうに礼をされた。

 その表情は俺だからアルマを安心して任せられると思っているからだろう、心配な表情は一切なかった。


「さて、朝食の頃合いじゃと思うのだがアルマちゃんの姿がまだ見えておらんのぅ」

「多分まだ寝てるんでしょう」

「そうかそうか、まぁこの地上界に来て一日も経っておらんからのぅ、体が慣れておらんのじゃろう」

「仕方ない起こしに行くか・・・・・・」


 いつまでも寝ていられるのも困るので叩き起こしにアルマのいる部屋に向かいドアをノックした。

 やはり寝ているのか向こうから返事が返って来ないので、部屋の中へ入ろうとドアノブを回すとドアが開いた。

 鍵をかけていなかったらしく不用心と思いつつ中へ入りベッドに目をやるとそこにはアルマが横になって寝ていた。

 布団を蹴飛ばしたのか床に掛け布団が転がり寝巻きは乱れ腹を出した状態で大の字で寝ている。

 長い髪故に乱れに乱れ、寝癖が相当なことになっている。

「おい、アルマもう朝だいい加減目を覚ませ」


「こっこのごはんがあぁ〜っおいひいれふ・・・・・・んふふ」

 声を掛けたが一向に目覚める気配がなく更に夢の真っ最中のようだ。

 どうしたものかと頭をかいて考えていると丁度テーブルにビンに入った飲み水が置かれていたので俺は躊躇らうことなくその水をアルマの顔にブチまけた。


「ブホッッ!!ッゲホゲホ!!?」

「いい夢の途中で残念だがいい加減起きてもらおうか」


 いきなり水を被り何が起きたのかまだ頭が回らず暫く目を見開き放心してたが、ようやく落ち着きを取り戻したかと思いきや慌てて喋り出した。


「いま私の目の前に食べきれないほどの食べ物があったのにディル一体どこに隠したのですか!?」

「まだ頭ん中寝てそうだなおい、もういっぺん水被ってみるか?」

「・・・・・・あれっ?私ってもしかして寝てたのですか?」

「・・・・・・?寝てるのかもなにも夢まで見て気持ち悪い顔してたぞ」

「失礼ですねー女の子の顔を気持ち悪いというなんて!!それよりも昨日この部屋に入って急に体が重くなって目蓋も次第に重くなっていったのは覚えていたのですが、その後の記憶がさっぱりなんですよ」


 どうやら察するに今まで死神として生きていた間は睡眠を知らないで生活していたみたいだ。

 今まで不眠でもなんの問題のなかった体であったが地上界へ来て人間としての体になったことで初めて睡魔というものを体感したようだ。


「そりゃ心配はいらない。お前がこっちに来て人間の体になったからだな」

「そういうことなんですね・・・・・・これが人間が必ず取らなければならない睡眠というやつですぅぅふぁぁぁ〜」

「・・・・・・とりあえず早く着替えて下におりて来いよ。朝食食べてからこの村を出発するぞ」


 先に俺が宿の一階へと降り暫く待っているとようやくアルマが支度を終え降りてきた。

 この宿は朝食が用意されないのでギルドが運営する食堂まで足を運び朝食を取ることができる。

 食堂へ到着しゆっくりと食事をしているとギルド受付のリリアが現れた。


「おはようございますー!ディルさんアルマさん昨日ぶりですね!」


 元気有り余るいきなりの挨拶に俺は左手を挙げ挨拶することしかできなかった。


「んもぅー声だして挨拶くらいして下さいよー!」

「そりゃすまんかったな。そんで朝早くここに来たのは俺達になんか用があるのか?」

「はい、実は食事後にでもお話をしておこうかと思いましたが長老からすぐに旅立たれるとお聞きしたので、失礼ながらこの場でお話しさせて頂こうかと思いまして」

「それで話の内容は長いのか?」

「いいえ、すぐに済む話です。アルマさんにこちらをお渡しするだけです」


 リリアはそういうとテーブルの上に小さな袋を置いた。


「こちらは長老からの御厚意からでして中身は5万レットのお金が入っています。初めての世界でこれから旅をするにはお金が必要になってくるので使ってくれとのことです」

「長老様が私に下さるのですか?ありがとうございます!後でお礼をしなくっちゃ」

「ああ、あとアルマさん。追伸なんですが・・・・・・」

「なんですか?」

「そのお金はいつかでいいので生きているうちにワシに返してねっとのことです」

「あっじゃあ・・・・・・お借りしますね」

 

 ものかなしそうにアルマはそのお金の入った小袋を手にした。

 まぁ単純にお金の価値についてなにも分からないとなると、借りたら返せと言われたことにショボくれてるのだろう。

 その後朝食を終え旅立つ支度ができたので長老の元に挨拶へと向かった。

「ホッホッホ〜早速きたようじゃのぅ〜」

「長老お一人だけですか?ガルドはどちらへ行かれたのですか?」

「あやつはすでにこの世界のどこかへ出かけおったわい。お主らの儀式を終えてもう心配はいらんと言ってたしのう」

「はぁ・・・・・・そうですか」

「まぁあやつもフラつきたくてこの世界に居る訳ではなさそうじゃし何か目的があるんじゃろう。そのうちどこかで会えるじゃろうて」


 死神だからなのか本人の性格なのか分からないが、気持ちがいいほどにサバサバしている人なことだ。

 まだ死神について聞きたいことがあったのだがまぁいつか会う機会があれば聞くことにしよう。


「旅に出る前に一つ聞いておきたいことじゃが、お前さんは次に向かう当てはすでに決めておるんかい?」

「ええ、、まずは元老院へと行くつもりであります」

「なるほど・・・・・・元老院のぅ」

「げんろういん?」


 アルマが当然のことながら分からない仕草を取り聞いてくる。


「うむ、元老院についてはリリアの説明の中で説明し忘れておったのぅ。元老院とは簡単に言うとじゃ、ランク銅以上の実力を持つギルド資格者を管理する機関じゃ」

「普通のギルドとは違うのですか?」

「左様、世界中にいくつも拠点を持つギルドと言えど何万人もの冒険者を管理を行うというものは中々骨の折れるものでのぅ、更に銅以上のランクを持つ冒険者というものは町一個殲滅できるほどの実力を兼ね備えていると言われておる。その者の目を見張るというはギルド側でも限界がある。そこで銅ランク以上の冒険者の管理だけを行う元老院というギルドの最高機関を設けたのじゃ」

「おおーなんか凄い所ですね!!銅以上の方々を管理する人ってどれだけ強いんでしょうかね?」

「役員共は強いって訳ではないんだが・・・・・・まぁ化け物もいるな」

「ディルが化け物って言うなんて・・・・・・私生きて帰れるんですか・・・・・・」


 足を震わせ俺の裾を引っ張って確認してくるアルマはまるで怯えた子羊のようだった。


「安心しろ、そんなことするようなとこじゃない」

「あっそれなら安心しました。ディルが言うのなら大丈夫ですね」


 信用してもらえるのはありがたいことだがこうもサバサバしている性格をみるとガルドも然り死神はこういうのが普通なのかと思ってしまう。


「まぁそういう事です長老、暫くここに戻るのは無いかもしれないですが戻るときはまた宜しく頼みます」

「ホッホッホ、いつでも待っておるわい。達者でな」


 俺はゆっくりと頭を下げ、アルマは元気に手を振りアルヴァンドの町を後にした。

 これから元老院を目指し旅出した。

ようやくアルヴァンドの町を抜け元老院へ向かい世界へと旅立ち始めます。

次回からは色々な登場人物が増えてくるとおもいます。

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