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盟約の儀と協力者(リーヴァラス)

「これより盟約の儀を取り交す。アルマよ冥界から預かってきた水晶をだしてみろ」

「はい、こちらの水晶でよかったのでしょうか?」

「うむ、間違いない、その水晶が盟約の儀に使う水晶だ」


 ガルドは差し出された水晶を確認し本物であることを確認するとうなずいた。

 儀式の行い方を知っているかどうかをアルマに確認したところ「問題ありません」とアルマは返事を返した。

 これから俺が正式に死神の協力者としの契約を交わす盟約の儀が始まろうとしていた。


「さてこれから盟約の儀を始める。儀式自体は難しいものではないので心配はない」

「それはこちらとしても助かる」

「儀式を始める前に説明を行う。今アルマが手にしている水晶が盟約の儀に必要となるものだ。この水晶は冥熾霊装(めいしれいそうの源となる霊火に触れると溶解を始める。溶解した水晶を協力者の死神から刻印を体の一部に押すだけだ」

「そんなことができるんだな」

「うむ、そして先ほどから死神と共にする契約のことを協力者として呼んでいるが、冥界では協力者のことを”リーヴァラス”冥照らす友という意味として呼んでいる」


「・・・・・・リーヴァラス」


 冥照らす友か・・・・・・儀式の内容自体はどちらかというと冥界へと誘われているような気もしないではない。

 だが友として呼ばれているということは死神から受け入れられているのだろう。


「わかった。俺も死神の友としてこれから協力者のことをリーヴァラスと呼ぼう」

「呼び方はお前に任せよう、さて最後に確認だが刻印を体に刻むに当たり其方(そなた)がどこに刻むかを聞いておく必要がある」

「刻印の刻む位置なんて自由に選べるものなのか?」

「うむ可能だ。その刻印が冥熾霊装を発現させるのに必要だからな」

「必要?刻印に対して何かかざして呪文でも唱えなきゃいけないのか」

「そういう使い方はしないが、刻まれた刻印から霊火を呼び起こすゲートの役割になっているのだ」


 つまり点火装置の役割を果たしているみたいだ。

 魔術の多くは魔方陣や詠唱など何かしらの媒体や手順を施して呼び出しているので特に変わったことではないだろう。


「使い方は盟約の儀の後からでも良いだろう」

「じゃあ始めるとするかアルマ」

「わかりましたディル様」

「あと、俺に対して様をつけるのはやめてくれ。お前に様と呼ばれたくはないんだ」

「!!・・・・・・私にとって協力者は様をつけるのは当然だと思っています。それでも様を付けてはだめなのでしょうか?」


 割とショックを受けているようで、飼い主に捨てられたかのような子犬のような目をしている。

 そこまで上下関係の覚悟が決めていたのだろうか・・・・・・いやこいつの場合こだわりなのかもしれない。

「いや、ダメとかでくて俺にとってもお前にとっても協力者(リーヴァラス)っていうのは友なんだろ?なら友に様をつける必要なんてないんだ。気軽に名前で呼んでくれ」

「・・・・・・うーん。友であるなら上下なんて関係ないですかね・・・・・・わかりました」

 少ししょぼくれ何か腑に落ちないような態度であった。

 そしてようやく気持ちを切り替えたアルマは片手に手にした水晶を俺の目の前に差だした。

「ではディルさ・・・・・・ディル、これから盟約の儀を始めます」



 儀式の始まった。

 アルマの瞳と髪がみるみる光放つ青色に変わっていく。

 そして水晶を持つ手から青い炎が現れ始め、炎に覆われた水晶はみるみると形を崩し始めゼリー状の液体へと変化していった。


「ではこれからこの水晶を紋章の型を作り出します。ディルさ・・・・・・ディルは自身の体に紋章を刻む位置を私に教えてください」

「わかった。俺の左手の甲に紋章を刻んでくれ」


 体の好きな個所に紋章を刻めると言われはしたが、安直に使い勝手を考えると手の甲に刻んでいれば困ることはないだろう。


「わかりました。では間もなく手にした水晶が紋章へと変わります。ディル・・・・・・手を私の前へと差し出してください」


 俺は左手をアルマへ差だした。

 アルマが溶かした水晶は魔方陣のような型をした紋章へと形ができあがっている。


「ではディル参りますよ。その左手に死神と力を宿し、死神の友として、そして私のリーヴァラスとして死神を力を授けましょう!!」


 そして炎を纏いながらも形作られた紋章はゆっくりと俺の左手の甲へとかざしされた。

 その瞬間、火に直接炙られる熱さと痛みに襲われ俺はその強烈な痛みに顔を歪めながらも耐え、歯を食いしばり儀式が終わるまでじっとこらえ続けた。

 次第に炎は消えていきどうやら紋章を刻み終わったのだろうか、アルマがゆっくりと俺の左手の甲にかざしていた手を離した。

 そこにはしっかりと先ほど描かれていた紋章が綺麗に左の甲に刻まれていた。

 先ほどまで手に焼かれる痛みがあったのがいつの間にかその痛みが引き、見た目も腫れているような感じもなく紋章がある以外は普通の手へ戻っていた。


「儀式はこれで終わりです。これでディルも冥熾霊装の力を引き出すことができます」


 儀式が終わったと同時にアルマは霊装を解除し瞳と髪は黒色に戻っていた。


「さて、儀式も終わったようだな。最後にその紋章の使い方について説明をおこなおう」


 隣で腕を組み儀式が終わるのをずっと待っていたガルドが動きだした。


「早速だが、その左手に意識を集中させてみろ、次第に紋章がその意識に反応して紋章が青白く光りだすだろう」

「意識を集中・・・・・・それだけで紋章が光りだすのか?」

「前に共にしていた私のリーヴァラスから聞いたことになるがイメージとしてはそれだけで十分であると言っていた。私自身すでに死神故に紋章を刻む必要がないのでどのようにと教えることができん」

「兎にも角にも集中してやってみろってことか」


 一呼吸したあと、言われるがままに左手に意識を集中ししばらくするとガルドが言ってた通り紋章が光始めだした。


「よし光始めだしたな。次に霊火を引き出す方法だがそのままでは霊火をだすことはできない。その紋章になにか物を当ててみろ。右手でもいい剣でもいい」

「これだけじゃダメなのか」

「火打石のように扱わないと火が出ないと思えばよい。紋章であるが故の発火方法だ」

「・・・・・・そっそうか」


 とりあえず言われるがまま背中に背負っていた剣を鞘から抜出し、剣を左手の甲に擦り付けるように当てた。

 次の瞬間剣に青い火が現れ刃を纏うように燃え盛っている。


「こっこれは・・・・・・!」

 剣を纏って燃え盛る火は熱くなかった。

 直接手に触れても熱さを感じない、とても無機質なものに近い。

 ここで、ある一つの疑問が生まれた。

「ガルド、なぁこれは剣に火が付いたが冥熾霊装といえるのか?」

「冥熾霊装はこの地上界に霊火を呼び寄せることをことを言う。死神はそもそも体に取り込んでいる霊火を体の内から発している。霊火を呼び出すというのは同じだが呼び出し方は根本的に異なる。そういうものだと思い扱うしかあるまい」


 アルマのように体に纏って戦うというスタイルは取れないのか。

 使用する条件があるという時点で死神の扱う冥熾霊装とは別物なのだろう。


「死神とは異なるが霊火というものには違いはない。試しにそこに咲いている花に火を近付けてみろ」


 ガルドに言われるがままに火が燃え盛る剣を花の傍まで近づけてみた。

 すると青々しく咲いていた花が急に萎み枯れていくではないか。


「花が物凄い速さで枯れて行っているぞ・・・・・・!」

「先程戦いの中でアルマが言った通り霊火は生命のエネルギーを奪う。花も例外なく生命エネルギーを得て咲いている。そのエネルギーを奪ったにすぎない」


 なるほど、急激に枯れるというのはそういう事か、しかし花にはなにか悪いことをしたな。


「ついでに言うとディル、その燃えている火は其方の生命エネルギーを燃料として火を灯し続けているにすぎない。冥熾霊装を使用している間は疲労が溜まりやすいことを忘れてはならない」

「それって使えば使うほど俺自身が年老いて行くってことなのか?・・・・・・」

「心配はいらぬ、その紋章が抑制しており老けるほどまで奪うことはない。先ほどのアルマ同様に食事のように外部から体に取り込んだエネルギーまでを燃料としている。空腹と疲労感に悩まされることにはなるだろうが、それ以上エネルギーを消費しようと思えば自然と火は消える仕組みだ」


 つまり食った分だけ使える時間に反映されるということだろう。

 こうして俺はアルマのリーヴァラスとなり長い一日を終えたのであった。

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