決闘(しけん)
「さて話は終わったことだ・・・・・・ディル殿。これから協力者としての試験として死神アルマと戦って頂きたい」
「ちょっと待ってくれ。今試験と言ったか?俺は対決に関しては聞いてたがこれを試験なんてものは聞いてないんだが」
「心配することではないディル殿。これは試験といえど互いの実力をまず知るための小手調べにすぎん。其方以外に今は死神の協力者が務まるおらぬ」
協力者はそう何人も適応する人間はいないものなのか。
魔力を持たない人間なんて世界を探せばいくらでもいそうな気がするがそれだけでは死神とは釣り合わないものだというのだろうか。
いずれにせよアルマの実力をまず初めに知る対戦であるし、いいとしよう。
・・・・・・しかし、いつの間にか話の流れに任されっぱなしだったがこれからアルマと共に魔物討伐の流れになってしまうのか?
今更悩み始めてもしょうがないと言えばしょうがない、そもそも当初は俺の師匠に当たる弟のディプト長老からの依頼ではあったので断る理由はなかったのだがアルマという名の死神を見た後に何故かロクでもないことが身に降りかかりそうな気がしている。
ただそんな勘だけの理由で嫌々な気分になってしまっている。
「ちょっと待ってくださいガルド師匠!ディル様と対決なんて聞いていませんよ!それにディル様を倒してしまったら地上界で協力者いなくなってまた冥界に戻るハメになるじゃありませんか!」
ん・・・・・・?
なんだいつの間にか俺が倒されるのが前提で話されてるよな。
さっきのでアルマは"バカ"なのは分かったがバカにバカ呼ばわりされたのは流石に気に食わない。
「おいアルマ。いつお前に俺が負けるって決まったんだ?」
「あっ・・・・・・ディル様申し訳ありません。そういうつもりで言ったわけではないんです。人間と死神で戦えば戦わなくても結果なんて最初から決まっているものだったので・・・・・・今まで死神と人間の協力者が戦って勝った協力者はいなかったと聞いていたのでつい」
今まで何千年も死神と人間の強力関係はあったのだが死神が協力者の人間に負けたことがないってことはやはり死神は相当強いってことになるんだろう。
・・・・・・それでも単純な理由でコケにされたら引き下がるつもりはない、ってかプライドとかそんなものよりもアルマに言われたのが一番頭にきた。
「ああいいぜ。その試験・・・・・・受けて立とうじゃないか。俺が負ける前提でも構わない。俺はこの試験に全力で戦ってやる。だからアルマ、お前も全力で戦えよ」
「ディル様がそう言うのであればわかりました、戦います」
「ふぉっふぉっふぉ~ではアルマちゃんも本調子を戻したようだし早速試験を始めようかのぅ」
試験と言う名の決闘の為に表へ移動し、ガルドが審判としてアルマと対決することになった。
辺りはすでに夜が更け、月夜の光が対決場所を明るく照らしている。
アルマが持つ武器は言わずも薙刀を片手に携えて戦いに臨むのであろう。
「さて、そろそろ勝負の初めても宜しいかね?」
「ああ、構わない」
「いつでも宜しいです」
「では勝負・・・・・・」
「始め!」
開始の号令が言い渡し初めてまず動き始めたのはアルマだった。
もの凄い勢いで俺に距離を縮めてきた。
速い・・・!
既に俺の目の前まで到達し薙刀を振り下ろす構えまでしている。
口先だけだとは思っていなかったが身体能力は相当高いのものだとすぐわかった。
武の才能は高いと言っていただけある。
おまけに突撃を繰り出してきたアルマの髪は黒髪のまま、つまり死神の持つ能力の冥熾霊装を使っていない状態でこの速さだ。
そしてアルマは薙刀を俺目がけて振り下ろして来た。
だが俺は背中に背負っていた鍔の無い剣を引き抜き向かいくる薙刀の攻撃を受け止めた。
キィィィン!!
薙刀と剣がぶつかり合い金属の擦れる高い音が辺りに響いた。
「アルマ・・・・・・動きが早い。流石死神だな。少し鞘から剣を引き抜くのが遅れてたらやられてたよ」
「ディル様も流石です。私の全力を受け止めるなんて思ってもいませんでした。でもこれからですよ」
アルマが笑みを浮かばせそう言った次の瞬間、アルマの髪が一瞬にして青く変化した。
霊装だ。
そしてアルマが霊装を纏った瞬間、俺の体に変化が現れたのだ。
身体が重い・・・・・・!これが霊装の力なのか・・・!
いや・・・・・・違う。
なんだこの感覚は、体の力が抜けているのか・・・・・・!?
「ディル様。お気づきになりました?霊装は相手の力を無力にするだけじゃないんですよ。相手の力を奪うことだってできるんですよ!」
無力化だけじゃなく力まで奪うのか・・・・・・クソッこのまま鍔迫り合いはマズイ。
残りの持てる力を振り絞り押し返し、一気に後ろへと後退した。
恐ろしい・・・・・・一度力を奪われたことですでに体力の半分近くが持っていかれた気がする。
これが冥熾霊装の力か。
このまま攻撃を避ける続けて戦うにしてもアルマの瞬発力から避けそうもできないし、剣で受け止めようとすれば力を奪われて倒れてしまう。
それなら迷う必要はない、いつもの俺自身の戦い方で相手するしかない。
「一撃を受け止めてまだ立っているなんてすごいですディル様。一応あれ私の必殺技でもあったんですが」
本当に一発で俺を沈める気だったみたいだ。
「正直に言うと今のでかなりヤバイな。次でアルマに攻撃喰らったら俺は負けそうだな・・・・・・けどなこれから目に物言わせてやるから覚悟しろよ」
左脚に着けていたホルダーから銃を取り出し、銃口をアルマに向けて構えを取る。
この銃の銃弾は魔力が予め蓄えられており、引き金を引くことで魔力を爆発させ弾を射出させる魔銃と呼ばれるタイプだ。
弾さえあれば魔力を持たない俺でも俺でも扱える武器である。
「魔銃ですね、初めて見ました。でも銃の技術は浅く開発が中途半端な武器と習っています。魔力で鉛を飛ばすだけの武器で倒せるんでしょうかね?」
こいつは計算して台詞を口にしてるとは思ってないが、人を煽る才能はピカイチだな。
「武器や道具は性能で図るもんじゃない。これから銃の使った戦い方を見せてやるから楽しみにしろよ。」
一発目の弾を放った。
打ったと同時に俺は全力で横に走り始めた。
アルマに向けて打ち込んだ弾丸は何事もなかったかのように真っ二つに切り裂いて俺を追いかけ始めた。
全力で駆け抜け一発、また一発と寸分狂うことなくアルマの額に目掛け撃ち込むが全弾斬り落とされてしまう。
徐々に俺とアルマとの距離が縮まってきた。
「これが銃の使う戦い方ですか?ただの鬼ごっこならもう十分ですし負けを認めたらいいんじゃないんですかディル様?」
「じゃあそろそろ終わりにするか?」
俺は走ることを止め、再度アルマ目掛け銃を構えた。
「何度も銃で私を倒そうとするなんて無理だと分からないのですか?でもその悪あがきも嫌いじゃないですよ・・・・・・!」
アルマは躊躇うことなく俺の目の前まで詰め寄り薙刀を振り下ろす構えた。
「さぁ!!これで私の勝ちですよ!!」
「どうかな・・・・・・!」
引き金を引き、弾丸が放たれアルマに向かって飛んで行く・・・・・・。
いや狙っているのはアルマじゃない、俺が狙って打ち込んだ先はアルマの薙刀だ。
次の瞬間、薙刀の刃に銃弾が当たり金属がぶつかり合う音が響いた。
アルマは再び自身に目掛けて飛んでくると予想していたのだろう、予想していなかった軌道に驚いていたが直ぐに体制を直して飛びかかってきた。
「てっきりまた同じ場所を狙ってくるのかと思いましたが手が滑っちゃいましたか?さぁ今度こそおわ・・・・・・えっ?」
「誰が銃だけで戦うって言ったか?ほんの僅かでいい、コンマ数秒隙を作れば走りながら仕掛けて置いたワイヤーを手首に縛れる。終わりなのはお前の方だ!」
薙刀を振り下ろすことができなくなったアルマを足払いで宙に浮かせた。
更にアルマの顎を手で掴みそのまま地面に頭ごと叩きつけた。
その威力は頭が地面にのめり込む程に。
「そこまで!!」
ガルドが号令を上げ死神アルマとの決着がついた。
彼女は言うまでもなく足をビクつかせ地面で伸びていた。