二柱の眷属英霊 ―従わぬ荒ぶる魂―
カリナも笑みを浮かべて感謝を口にする。
「皆さん、ありがとうございます!」
「礼はいい、それよりケラブノスたちを助けてやってくれ」
「はい!」
カリナは勢いよく駆け出すと、開けた場所に立ち聖剣を抜刀して頭上へとかかげる。それを見てソフィアがつぶやく。
「あの子にはずっと甘さと無茶が同居していると思っていたけど、それはあの子の弱さじゃ無かったのね」
エルリックも彼女の言葉に同意する。
「あぁ、軍人らしからぬ、戦士らしからぬ、弱さと甘さ――、そして無謀――、それを含めて規格外なところこそがカリナの強みなんだ」
たしかにカリナは甘い。そして、心が弱い。だからこそ誰も見捨てず、真摯に戦いに向き合うのだ。
そんな確信を抱きながら二人もカリナの英霊召喚の姿をじっと見つめていた。
「エリュシオ! 英霊召喚するわよ!」
抜刀した金色の聖剣を頭上に掲げながらカリナは叫んだ。剣の十字唾の中心に嵌められている青く輝くクリスタルから神秘的な声が響いていた。
『お話はお聞きしておりました。リザードマン兵団のケラブノス様と、牙狼騎士団のゲオルグ様をご支援する英霊ですね?』
「えぇ! 数は出せないから、最強格を2柱選んで!」
『承知いたしました。すでに選択しております』
「それではやるわよ! 英霊召喚! 来たれ! リザードマンの戦士と、狼獣人の戦士を救う、太古の闘神よ!」
『英霊――蛇神ナハル・ニヴ、英霊――魔導戦士ケルヴェロス・スタール、召喚いたします」
天高く頭上に掲げた聖剣レギオンブレイド――その剣先から天空へと光の柱が伸びていく。そして、その光はさらに大きくなり光の扉を形成する。
そして――
――ガコンッ――
かすかに音を立てて、光の扉はひらいた。
――ザッ――
――ガッ――
大地を踏みしめる音が2つ響く。太古において活躍した、リザードマンと狼獣人の歴史的英雄にして、種族の中興の祖となる二人だった。
『妾は、ナハル・ニヴ――、鱗の眷属の母なる存在である』
『ケルヴェロス・スタール――、牙を持つ獣の民の始まりの者だ。俺を何故に呼び出した』
ナハル・ニヴはリザードマン種族が地上で勢力を増やす際に、戦いを率いて勝利を収めたと言う伝説の女性戦士だ。リザードマンとしてスリムな体つきながら、両手にはシャムシール剣を持ち、体にはわずかばかりの革鎧で身を守っている。
ケルヴェロス・スタールは狼獣人の歴史に名を残す狂戦士だ。魔族・人間問わず、狼獣人の生存のために生涯を戦い抜いた猛将――、狼獣人然とした風貌に、足にはグラディエーターサンダル、体には熊の毛皮を巻き、手にしているのは血まみれのスクラマサクス剣だ。
『正当な理由無く呼び出すのであれば、相応の報いが有ると知れ』
『俺達を地上に招いたのは貴様か?!』
リザードマンの祖と、狼獣人の祖――その太古の魂は荒ぶる魂であり、自らの眷属にのみ心を開く存在だった。明らかに敵意が見え隠れしている。場に居合わせた者たち全員が固唾を飲んで見守っている。やり取りを間違えれば、戦いになるのは明らかだからだ。
だが――
「はい、私がお二人を地上にお招きいたしました」
カリナは迷うこと無く凛として答えた。そこにナハルが問うてきた。
『現世勇者よ。我らに何を求める?』
ケルヴェロスも告げる。
『我らは共に自らの眷属のために戦った者、人間のためには戦わぬぞ?』
カリナの毅然とした態度に二人の敵意は和らいだが、まだ助力を願えるような状況ではない。だが、それでもカリナは畏れること無く毅然として立ち向かった。




