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決戦、魔王軍対勇者の軍勢:グリムフォート要塞攻略戦

【――グリムフォート要塞――】


 そして残るは2つ、魔王城本城の外縁で防衛戦力の主力を待機させている魔王軍戦力の最重要拠点であるグリムフォート要塞だ。傾斜地に設けられた星型城塞の構造をしており、戦力、武装、共に強固だった。

 その難攻不落の要衝を攻めるのは、祖国ネルガル喪失の悲劇から這い上がり祖国復興の足明かりを苦難の末に掴んだネルガル解放義勇軍の代表であるレグナントだった。


「いよいよだ! これまでの苦難はこのときのためにある! あの魔族戦力の最大の牙城を切り崩し、勇者カリナ様の悲願達成の力となる! 全戦力蜂起! 敵要塞攻略作戦開始!」

「おう!」


 グリムフォート要塞攻略に望むネルガル解放義勇軍兵は、そもそもが祖国復興を願うレジスタンス活動から始まった軍隊だ。そのため、華美な装飾よりも軽量で動きやすい実用本位を旨としていた。

 革製ヘルメット、レザージャーキンジャケット、金属プレート付レザーレザーアーマー、簡易ガントレットとしてのレザーグローブ、編み上げの山岳ブーツと言う出で立ちである。武器は多彩であり、基本は実用を兼ねたハチェットを近接武器とし、ショートボウ、ジャベリン、スタッフスリング、ウォーハンマー、ハルバード、ハーフパイク、と言った物を主体とし、技能に長けたものは、フリントロック(燧石式)銃や、新開発されたピルロック(雷火式)銃などでの射撃を担うこともあった。新規の戦闘手段の習得に貪欲であり、古い伝統に固執しない軍隊である。

 指揮官であるレグナントも、一般兵と同じ装備に身を包み、特別豪華な衣装は身につけて居なかった。彼自身も失われた祖国の下士官をしていた人物である。


 その彼が、全部隊に指示を出す。レジスタンス活動をしているときには離れた位置での相互連絡の技術を常に磨いていた経緯がある。よく用いるのは光魔法による明滅信号や、風魔法を駆使した音声伝達だ。このときも専門の風魔法技術者が、全部隊の隊長格に向けて音声伝達網を構成していた。これを用いてグリムフォート攻略の作戦を伝達するのだ。


「作戦の要諦は我々ネルガル兵が敵の注意をそらす〝(おとり)〟となり、その間に トロール部隊が攻城砲を展開して要塞の要所を破壊する。破壊対象は〝砲台〟〝見張り塔〟など、特に特に星型城塞の特徴である突出部(バスティオン)を狙いこれを崩壊させる」


 まずはこれが序盤となる。


「次に砲撃の成果を鑑みながら、ネルガル兵が城塞に接近し突入路の確保を行い、巨人種族部隊による突入の突破口を開く。最後に一気に全軍突入だ!」

「了解!」

「了解です」


 各部隊から返答が集まる。それを聞き終えるとレグナントは号令をかけた。


「即時作戦開始!」

「はっ!」


 号令とともにネルガル兵全部隊とトロール部隊が動く。ネルガル兵の部隊が牽制攻撃を行い、要塞の守備部隊を周辺地域に引きずり出した。


「よし、このまま要塞外部での戦闘を維持して、そちらに敵の関心を集中させろ! その間にトロール部隊とネルガル兵砲火部隊は砲撃戦の準備!」


 要塞の構造は、これまでの魔王軍との戦いの中で、多くの犠牲を払いながら詳細に調べ上げていた。


「要塞の弱点はすでに判明している! これは我々の友軍たちの犠牲が勝ち得た価値ある成果だ! 何としても勝利に結実させるぞ!」


 レグナントの言葉にネルガル兵もトロールたちも奮い立った。要塞からの砲撃をかいくぐりながら、ネルガル兵の歩兵部隊が陽動の牽制攻撃を継続する中、砲撃の準備は進む。


「大砲、一番から七番まで設置できた」

「かやく、たまこめ、準備良し」

「ひもをひいてつなげ」


 トロールたちの運用する攻城砲は前後分割式だ。それを頑強な繋索(けいさく)で引き合い接続する。それと並行してネルガル兵による野戦砲部隊も動いていた。青銅製の可搬式の対人野戦砲が次々に戦場に並べられてゆく。


「可搬式野戦砲展開急げ!」

「準備でき次第、屋外戦闘への支援砲撃開始だ!」


 そして――


大砲(攻城砲)、準備できたぞ!」

「支援攻撃用野戦砲、準備良し!」


 トロールが運用するのは一般にオルバン砲と呼ばれる大型の攻城砲だ。人間なら数百人規模で運用するのだが、もとから巨躯で腕力にも優れるトーロルだから数人から10人程度で運用可能なのだ。野戦砲と攻城砲の展開が完了し、戦いは第二段階に移った。

 レグナントの号令が響く。


「目標確認! 照準定め!」

「狙いいいぞ」

「照準良し!」


 望遠鏡で戦場を確認しながらレグナントは高らかに叫んだ。


「撃てぇ!」


 次の瞬間、砲声が大地に響いた。


――ドッゴォオオオオンッ!!――


 攻城砲から人間の身の丈程のある巨大な砲弾が放たれ、弧を描いて宙を舞う。そして――


――ズドォオオオオンッ!!――


 初弾が要塞城壁に命中して、その城壁の一部を破壊する。それを攻城砲の扱いに熟練しているトロールたちは再度砲撃を試みた。


「あたった」

「だめ、城のトンガリ(バスティオン)に当たってない」

「全部の大砲をずらせ」

「分かった」


 大型砲であるオルバン型攻城砲は設置すると修正が効かないのが常識だった。だが、扱うのはトロールだ。設置用の基礎枠ごと全員で担いで修正したのだ。


「みぎ、みぎ、みぎ――とまれ」

「ぶんかつして、火薬と弾を入れろ」 


 愚鈍で鈍重とされたトロールたちが卓越した職人のように大型攻城砲を扱う姿は脅威ですらある。その光景に要塞側からは、あっけにとられた視線を感じずにはいられない。


「たまこめできた」

「じゅんびいいぞ」

「撃て」


 トロールの(かしら)であるドゥロックが淡々と命じる。その目には魔族と魔王軍に対する静かな怒りが宿っていた。


――ドッゴォオオオオンッ!!――


 第2射で攻城砲の大型砲弾は見事、突出部(バスティオン)に命中した。星型城塞の構造をとるグリムフォート要塞は突出部(バスティオン)に砲撃装備が集中しているため、ここを破壊されることが最大の急所なのだ。


「よし!」


 ドゥロックは口元に笑みを浮かべる。成功を確信する笑みだ。


「ねらい、定まった、どんどん撃て!」


 ドゥロックの指示に仲間のトロールたちも全ての攻城砲を炸裂させる。その猛攻の前にグリムフォート要塞は早くも沈黙を始めた。要塞外への対抗攻撃が阻害され、周囲に展開していた敵守備部隊も孤立、可搬式野戦砲の支援が加わったことで、敵守備部隊とネルガル兵部隊の戦闘は趨勢が決した。

 レグナントに部下からの報告が届いた。


「報告! 敵要塞城壁に重篤な損壊を確認、周辺領域に展開していた敵守備部隊もほぼ壊滅」

「よし! 最終段階だ! 突入部隊に号令! 巨人種族部隊にも出動を命じろ!」

「はっ!」


 命令は伝達され、それまで後方で控えていた〝巨人たち〟もついに動いた。トロールを超えて天を突く巨躯の巨人たちが立ち上がり、大地を踏みしめ進軍を開始する。もちろん、ネルガルの兵たちとともに――

 巨人たちの頭目であるオーガのバルグジンが怒号をあげた。


『進め! 勇者カリナの名のもとに、我らは魔族の脅威を地上から一層するのだ! 我ら巨人はそのための礎となる!』

『おおおおっ!』

『進めぇ!!』


 オーガ、ミノタウロス、サイクロプス、タイタン、アルゴス、スプリガン――、バルグジンの後に様々な巨人たちが続いた。それが横隊で戦列を成し進軍する姿は敵から見ればまさに絶望そのものだろう。だが逆にそれは、自由連合軍に属する者たちから見れば魔王軍打破のための希望でもあるのだ。

 レグナントは叫ぶ。自ら剣を振りかざして。 


「巨人たちに続け! 今こそ要塞攻略の時! 故郷の大地に我らの旗を揚げよ!」

「故郷の大地に我らの旗を揚げよ!」


 それはネルガルの突撃の合図だった。


「突撃!!」


 そして、ついに要塞場内にネルガルとトロールと巨人たちの一団は怒涛と成って流れ込んだ。グリムフォート要塞攻略戦は勝利へ向けて一気に加速したのである。


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▼ 勇者カリナの、その後の物語

魔王軍との最終決戦を終えた少女勇者カリナ。
次に彼女が辿り着いたのは、AIと戦闘機械が支配する未来世界――。

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―魔王を倒した少女は、AI戦争の未来世界で、聖剣精霊と豪剣人機とともに人類を救う―

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