夢のない約束
「お父さん私おじさん達と行く事にしたのよ」
「楓が良いと言ったのか何?」
「そうなんですけど」
「止めても一人で行くとでも言ったんでしょう」
「そう、なんですけど」
薫は何かを堪えるような顔していた。
「ミコトが本気ならもう止めないよ」
「ありがと」
悲しげな顔をするミコト
「最近は寝たきりになる人が急増しているみたいだよ、皆んな同じ夢を見る頃かな世も末だね。そうだお父さんも夢に入ろうかな?」
「らしくないのよお父さん、お父さんにも元気で生きてて欲しいかしら。」
「お父さんはミコトといたいんだよ。お母さんの寿命ももう長くないよ」
「わかってるのよそんな事」
ミコトはお父さんの考えがわからなかった。
ミコトは母の病室に入りゆっくりと手を当てた
悪夢に入ると夢の主人のような黒い人型のような影があり、それが誰なのかミコトにはすぐわかった。
「ツトム君かしら」
「お前が母さんを殺したんだ」
その声は怒りや憎しみだけの亡霊の叫びであった、ツトムはあの夢での出来事を思い出したのだろう。
「あなたのお母さんはもう亡くなっているのよ、亡霊となってもう一度合ったあのお母さんはもうツトム君のお母さんじゃないかしら」
ミコトは事実を冷静に言い返すだけだった
「あれは僕の母さんだ死んでも僕のために会いに来てくれたんだ、それをお前はまた殺したんだ。あの時は楽しかったんだ、なのに」
「いつまでも楽しかった過去を繰り返しても何も進まないのよ、そんな偽りの幸せじゃなくて本当に今あなたを大切にしてくれるもの自分自身ものと向き合うべきかしら。あなたにはそれをして欲しいからたすけたのよ」
少しミコトの顔が歪んだ
「そんなの無い、僕はいらない。母さんを殺した罪をここで一生償って貰うから」
ツトムの真っ黒い体が地面に染みてしずんで行った。
「私は何のためにあなた達を殺したのかしら」
ミコトは自分を責めるのを止められなかった。
「君が神藤の言ってた娘か、元気無さそうだけどなんかあったか?」
ミコトは楓の言った通りに廃病院に向かって歩いていた。
そこで声を掛けて来たのは楓の仲間である犬鳴 通子であった
「あの、あなたが誰か知らないんですですけど」
「ああ、私わ道子って言うんだ。楓からミコトちゃんが来る事は聞いてたからな、少し見にきたんだ。」
明るくて気の強そうで男勝りな女性というのがミコトの第一印象の感想だった。
「まだ中学生なんだってね、その年でここに来るなんて度胸あるじゃないか、でもちっと君には早すぎると思うけどね。」
「大丈夫かしら、何回もここに来て鍛えてるんで心配の必要は無いんですけど。」
ミコトはいつも通りにしようとしていた。
「そうか、さっきはなんか萎れてたがどうしたんだ?」
顔が曇る。
「この前に夢から助けた子が亡霊になって現れたのよ、罪を償わせると言ってきえたかしら。こんな事初めてじゃあないし気にする事でも無いんですけど。」
「ミコトちゃんはこの仕事頑張ってんだな偉いよ、
嫌なら辞めたって誰も文句を言わないよ。」
「私は別に頑張ってないかしら、最近はお母さんを助ける為の事しかしてないし、どんどん夢が広がって寝たきりの人が多くなってるのよ。」
「それでも一人で夢の主人と戦ってよお母さんを助けようとしてるミコトちゃんは凄いよ、良く頑張ったよ。」
ミコトは犬鳴に頭を強く撫でられながら少し救われる気がした。
「私はそんなすごくないかしら。」
「そんな事無いって」
「ええそうですね。」
「来たのか神藤」
ミコトは楓の不意な声にビクッとした。
「それより外では寝たきりの人が結構増えてるみたいだね。」
「ニュースにもちょとなってたかしら。」
「世も末かな」
考え込むように薫と同じ事を言う楓を見てミコトは少し可笑しく思った。
「そんな事言うなよ、ミコトちゃんは生きてんだぞ。」
「そうでしたね、すみません」
「全く神藤はよー」
「別に大丈夫かしら」
「ごめんなミコトちゃん。」
三人で自我を失った者たちを避けて廃病院に着いた、着いた頃には犬鳴とミコトは打ち解けて会話をしていた。
「ここが道子達の拠点?」
そこには拠点と言うにはお粗末な物であった。
「そうだ、拠点と言っても何にも無いただの廃れた病院だけとな。」
「私達は夢の中で暮らしているので何も必要ないんだよ。」
「まぁそうゆう事だ、それとその辺にいるのが私達の仲間だ、26人居る。昔はよく騒いだりしたものだがな」
犬鳴は昔を懐かしでいるようだったがミコトはその仲間達を見て不安になった。
「自我は大丈夫なのかしら?」
呆然と立ち尽くす者や壁を見て座り込む者などミコトには廃人にしか見えなかった。
だが皆戦いの時を待っているのだ、最後の仇花を咲かせる時を。
「ああ見えてもまだ保ってるだ、だがもう時間のもんだだな。コイツらとは最後に奴の所に行って一発かましてやる約束なんだ。」
「一月後には夢の主人の元に行きます。」
「えっああそうだったな。」
「一月後までに強くならないといけないのね。」
ミコトは予想外に戦いが近い事に少し驚いたが覚悟はもう決まっていた。
「すみませんね、見ての通り皆限界なんだ、これ以上時間を掛ける訳にわ行かないんだよ。」
それからミコトは道子に鍛えてもらうようになった
「ミコトもう終わりか?」
「まだまだ大丈夫かしら。」
犬鳴の心器錬成は大剣の様であり炎を纏う事出来た、炎を纏った大剣を軽々と振るう姿を始めてミコトが見た時はテレビで見たファイヤーショーを思った。
「ミコトの高速移動で死角に周りこむのは悪くないが、神藤に追いつくにはまだまだだ。」
ミコトは瞬間的に高速移動する事が出来たが神藤も同じ力を持っていた。
ミコトは神藤を目標として鍛え始めたが焦りを感じていた、神藤や犬鳴達がどれほど強くなる為に時間を掛けたのか鍛えれば鍛えるほどに感じる「一ヶ月では足りない」そんな焦りであった。
「焦らなくて良いんだぞミコト、ミコトは十分強い」
「でも後10日も残ってないのよ。」
「焦りは禁物だよ、今日はもう時間だから終わりにしよう。」
「おじさん」
不意な楓の声にももうなれていた。
「それと明日は休みにしよう、最近はずっと鍛えてたからね。ミコトちゃん薫によろしく言っといてね。」
「でもまだ…」
犬鳴がミコトの頭をなでた。
「ミコト無理はいけない、明日は休んで好きな事して過ごしなよ。」
「…仕方ないのよ。」
不満そうに了承してミコトは夢から醒めていった。
「神藤行くか?」
「申し訳ないねミコトちゃん。」
神藤と犬鳴はミコトを夢の主人達の元へ連れて行く気は無かった、それはまだミコトに生きて欲しいという二人の願望であり過去の仲間達を何もさせずにただ廃れさせる事は出来なかった。
二人は過去の仲間たちと共に廃病院に入って行った。