成就2
そんなわけで私の日常は非常に変化がなく、窓の外を見るか、勉強を終えて床に就く彼の姿を見るかくらいしかすることがない。
しかし、この少年、飽きもせず毎日一日中勉強しているらしく、小気味の良い鉛筆の音がずっとしている。このように少年が努力するればするほど、日中、窓外の木々や鳥でも見ながら過ごしている私の無為さが際立つ。窓外を見ていると少しずつ色が黒に近づき、やがて何の変化もなくなる。黒にあぶり出されるように星が見えるようになる。そんな星を見ていると、泥のように疲れ切った少年が床に就き、すべてが暗転する。そんな、一日が繰り返される。
達磨の終わりは祈りての願いが叶った時である。達磨はもう片方の眼にも色を入れられ、祈りての喜ぶ姿を見たのちに燃やされる。私は初めそれを知ったときになんて生涯だ、と感じた。彼の願いが叶うのは分かるが、何故私は燃やされねばならぬのだと。軽い絶望を感じたのである。
しかし、窓外の木々が青々と茂り、やがてカラフルに色付き、最後には落葉していく様子を、星がかすかに移動してめぐりゆく様子を見ていると、それはそれでいいかとも思えてくる。そんな変化の中でも彼はひたすらに机に向き合い、日付が変わると気絶するように眠るという変わらない日々を過ごしている。どうやら、彼よりも木々や鳥、星の方が充実した日々を過ごしているようなのだ。そんな彼を見ていると、私は彼の願いが叶ってほしいと思うようになってくる。彼の受験が終わり、やがて窓外の一部になってほしいと思うのである。彼もめぐりゆく季節の中で違う一日を過ごしてほしいと。その果てに燃える私があったところで、それはまあいいか、と。どうやら私は彼のことがいつしか好きになっていたのである。