第3話 カフェベース
「薄めろ」って説明に書いてある物はちゃんと薄めましょう。
「暑いねー、喉乾いた!」
夏は、そんな会話があちこちから聞こえてきます。
私のレジにいるお客様も、そのような会話をご友人としていらっしゃいました。
「いらっしゃいませ、商品お預かり致します。」
「あ、お願いしまーす。袋いらないです。」
「かしこまりました。それではテープお貼りします
ね。」
そう言って置かれた商品を見ると、それはカフェベースだった。
皆さんはカフェベースというものをご存知だろうか。そう、とても濃いコーヒーのようなもので、牛乳とかで薄めて飲む、そのまま飲むととても苦いアレである。
それを単体で買うのは別に変ではない。が、ここでこんな言葉が聞こえた。
「あー、やっぱ暑いね、今の時期は。喉乾いたし。飲み物買わないとやってらんないよ。」
私は耳を疑った。
別に物を1つだけ買う方は珍しくないし、それがカフェベースであっても何も不自然ではない。
耳に入ってきた「喉が渇いた」という一言が無ければ。
「もしかしたらこの方は飲み物だと思ってカフェベー
スを買ったのかもしれない。」
そう思い、私はお客様に尋ねた。
「こちら、そのまま飲むものではなく、牛乳などで割って飲むものになっていますがよろしいですか?」
「あ、はい!大丈夫ですよ。」
その答えを聞いた時、あぁやっぱり流石にわかってるよな、と思った。
そのままお会計が済み、出口の方向へと向かうお客様。
私が次のお客様に声をかけようとしたその時、
「苦っ!!」
という声が聞こえた。
まさか、と思い声のした方を見ると、そこには先程のお客様がカフェベースを開けている姿があった。
私、さっき「これは薄めて飲むものだ」って言ったよな?ってことはそれを分かってて飲んだってことか?何でだ?
その疑問は次の一言で解消した。
「でもやっぱ目が覚めるわー。」
それはそうだろう。コーヒーの濃いのをそのまま直接飲んでるんだから。
それにしても、目を覚ましたいならエナドリの方が安いのにな、もしかして飲みすぎて効かなくなったのかな?などと思いながら時は緩やかに過ぎていった。