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第2話 蹴り

今日は小さいお子さんのお話です。

「やーーだーー!!」


今日も子供の泣き叫ぶ声が聞こえる。


スーパーマーケットで子どもが泣き叫ぶ理由というのはだいたい3パターンで、


1. お菓子を買ってくれない


2.親御さんが商品を(レジに通すために)手から取ろうと

したら奪われると思った


3. 迷子


なのだが、今私のレジのところで泣いている子は、2番目のパターンである。


だいたい2歳ぐらいみ見えるその女の子ははお父さんに抱っこされながら大声で泣いており、耳元で大声を出されているお父さんはしかめっ面をしている。


お母さんに、


「ほら、手から離さないとレジにピッてしてもらえないよ?」


と優しく言われようが、


お父さんに、


「ほらいい加減離しなさい」


と強めに言われようが、両手でしっかりと抱え込んで何があっても離さないぞ!!と言わんばかりのギャン泣きである。


普通、こうなったら別の店員さんに同じ商品を持ってきてもらって、そのバーコードをスキャンするのだが、抱え込んでいるせいで商品名も見えない。


こうなったら奥の手を使うしかない、と思った。


まぁ別に奥の手と言うほどのものでもなく、ただ単にあまり人前でやりたくないだけである。


「ねーねー、それお姉さんに貸ーしーてー!」


そう、小さい子がよくやる「それ貸ーしーて」「いーいーよ」というアレである。


それはちゃんとその子に伝わったようで、少しだけ笑顔になった。


「いーやーよ!」


いやダメなんかい。


私はずっこけた。


そのうち、痺れを切らしたお母さんが、


「いい加減にしなさい!!」


といいながら無理やり商品を取り上げようとした。


すると


「やぁぁぁだぁぁぁ!!!」


とさらに大声で泣き始め、暴れ始めた。


足をバタバタさせてお父さんの抱っこ(拘束)から逃れようとしている。


このままでは埒が明かないのでどうしようか、と思っていたその時、女の子の足がお父さんの鳩尾に当たり、


ドガッ


という鈍い音がした。


それでも我が子を離すまいと抑えていたお父さんだったが、あまりの痛さについに女の子を降ろしてしまった。


あれはしょうがないと思う。


不謹慎ではあるが、とてもいい蹴りだったし、それがまたとてもいい位置に入っていた。


降ろされた女の子は急に泣き止み、笑顔でこちらに向かって歩いてくると、


「あい!これ!」


と、なんと商品を渡しにきてくれたのだ。


どうやら自分で渡したかったらしい。


お父さんは不憫だったが、まぁ子どもってそういうもんだよな、と思った。

私はあの蹴りを一生忘れないかもしれない、それぐらいいい蹴りでした。

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