疑いの目は晴れますか?
一度屋根の上に降り、感知を広げて見られてないかを確認する。住人が見ている気配も、敵意の反応もなかったため、改めて飛行を開始する。
「ひゃああっ!!飛ぶの楽しいねっ!」
「そんなこと言ってる暇ないでしょ。ほら、一番集まってそうな場所はどこ?」
「昨日のところだよ。ほら、あそこ」
呑気に飛行を楽しんでいるスピネルをたしなめ、わたしは案内を促す。スピネルが指差した方向へ飛び、数十秒で到着する。その場には何十人の【水人種】が集まっており、突然空から現れたわたし達に声も出ない様子だった。すると、一人の女性がこちらを指差し、
「スピネル!そしてあなた達はあの場所にいた……!」
と言った。どうやら先ほど現場にいた女性のようだ。もうすでにこちらに話をしに来ていたようだ。話がすでに終わっているためか【水人種】の人達の一部は猜疑の目で見ている。これは説得するのが苦労しそうな反面、話が通れば【水人種】全体に協力してもらえる可能性が生まれるはずだ。わたしはゆっくりと高度を下げ、水の上で浮遊している状態になる。
「すみません、いろいろと言いたいことがあると思いますが、話を聞いていただいてもよろしいでしょうか?」
わたしがそういうと、【水人種】の人達はお互いに目を合わせ、静かにこちらを見る。とりあえず野次が起きなかったことに安堵する。【水人種】の視線を受け、緊張したため一度深呼吸をし、改めて【水人種】全体を見渡してから話を始める。
「まず、コーラルさんを含めたお三方の件についてですが、わたし達はあの場に居合わせただけで何もしていません」
「あんた達、カーネリアンさんが来たときに逃げたって話だけど、やましいことがあったんじゃないのか?」
あの場で居合わせたのは「カーネリアン」という女性だったのか。わたしは話を続ける。
「あの時はこちらも動揺していて、お互いに冷静に話せる状況じゃなかったため、一度あの場を離れました。それに、わたし達にはあの三人を攻撃する理由すらありません」
「理由ならあれだろ?街の方で【真人類】が溺れてたって話。スピネルがやってしまったから、あんた達に頼んだんじゃないのか?」
男性の言葉にスピネルがビクッと体を強張らせる。同じ【水人種】の仲間にむかってよくもそんなこと──
「同じ【水人種】の仲間にむかって、よくもそんなことを言えるわね!!スピネルさんが【真人類】に酷いことをしたとしても、言っていいことと悪いことがあるでしょ!!」
わたしが思っていたことを、スピネルを庇いながらサラがそう叫んだ。わたしはサラを落ち着かせながら
「そうね。それに、仮にそうだったとしても、【真人類】と【水人種】の仲介役とも言えるコーラルさん達を攻撃する理由もないでしょ?それをしても、【真人類】との溝が無駄に広がるだけでしょ?」
サラとわたしの言葉に、【水人種】の人達は近くにいる人達と話をしている。すると、一人の女性が手を挙げる。あの現場で居合わせた女性、カーネリアンだ。
「それでは、お三方を殺害した人は誰だというのですか?【真人類】の人が溺れた腹いせに殺されたとでも?」
「それについては確証はないけど、【獣人類】が犯人だとこちらは見ています。理由としては──」
わたしは三人で話して出した結論を全員に話す。【水人種】からすれば、突拍子も無い話だろう。頭を抑える者、近くの人と話す者、青ざめる者、みんな反応は様々だ。だが、見当違いとも言えないわたしの話を聞き、徐々にことの重大さを感じてきているようだ。
「──ということで、わたし達としては『この地域の【水人種】全体が協力して行動』していただくのが一番だと考えています。この場を置いて、別の地域に逃げることも視野に入れた方が良いかと」
わたしの話が終わり、【水人種】達は何も言えなくなり、ただ黙っていた。そして、この場でまとめ役とも言える。カーネリアンに視線が集まる。視線を受けて、カーネリアンは考えるように目を瞑った。そして、目を開け、カーネリアンが出した結論を述べた。
「わかりました。全てを信じられるわけではありませんが、まずは私が広げてしまった噂の方を止めて、今の話を広げてみようと思います。ですが、やはり突拍子も無い話なので、混乱が生じると思いますが、まずはこの辺一帯の【水人種】全員で協力して対処したいと思います」
わたし達の確証のない話を信じていただき、なんとか疑いは晴れそうだ。サラとスピネルは安心したのか、サラは浮きながらその場に座り込み、スピネルは水の中に溶けていった。
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