昨夜のうちに何が起きたのですか?<Ⅴ>
「トルマリン様をっ!?なんでっ!?」
「確かに、【真人類】以外って手を組んでいるんだよね?」
「それは、『邪魔だから』だと思うよ……七種族は組んではいるけど、穏健派の三種族……【森人類】、【水人種】、そして【地人類】は『手を出されたらこちらからも攻めるが、こちら側から積極的に争いを起こすつもりはない』という姿勢を見せているからね。性格柄、単に好戦的じゃないっていうのもあるけどね」
ただ、呼び出したからといってそう簡単に勝てる相手ではないはずだ。トルマリンがどういう人物か知らないが、「未来が視える」という点のみで【水人種】の長を務めている訳ではないだろう。そう考えると、敵側も何か策があって呼び出そうとしているはずだ。
「十人……いや、二十人以上は必要か……師匠と同じくらいの力と考えると……もしかして長か副官が出て来る可能性も…………」
「……リリアちゃん、また一人でブツブツ考え込んでるよ」
「む、ごめんなさい」
気付くと、サラとスピネルがこちらをじっと見ていた。考えていたことが口から漏れてしまっていたようだ。わたしはこほんと一息ついてから話し始めた。
「ここまでいろいろ考えたけど、相手がどこまで想定してるかはわからないから、下手に騒がずに慎重に行動しよう」
「『行動』って、具体的には何をすれば……」
「理想は『敵の目的をあぶり出し、それを止める』ことだけど、それは危険だね。コーラルさんとあのお二人がどれくらい強いかはわからないけど、水辺の【水人種】三人をほぼ一撃で殺害できるだけの実力者がいることは確定しているからね」
「コーラル含めて戦っているところは見たことないな……そもそも戦わないし。ただ、コーラルだけでもあの水路一本分は操れるよ」
あの水路は建物四、五軒分の長さはあっただろうか。戦い慣れていないといっても、それだけの水量を操れる相手に勝てる相手がいるのか。
「やっぱり、一番にやるべきことは『この街の【水人種】全員と結託する』ことだね。敵がどこまで準備しているかわからないけど、【水人種】約百人集まって、水のある場所で戦えば負けない……はずだよ。ここから一度逃げ出して落ち着くまで海に潜んでいれば、流石に追って来ないだろうし……」
「『【水人種】全員』……か。つまり……」
「そう。まずは誤解を解かないといけない。あれから二十分くらい経ったかな。【水人種】の話ってどこまで早く広がるかな?」
「二十分あれば片方の地域全体には伝わるかな」
まずいな。早く止めないと誤解を解くことすらままならなくなってしまう。昨日わたし達と会った人達は誤解しないと信じたいが。わたしは立ち上がり、一応サラに確認をする。
「サラ、今回の敵は実力も数も未知数だけど──」
「まさか、『わたし達は狙われてないから逃げる選択肢がある』なんて言わないよね?もちろん逃げないよ。……私にできることがあるかわからないけどね」
わたしの目をしっかり見つめ、そう答えた。サラが笑い、わたしが笑い返すと、スピネルが涙を流しながら勢いよく抱きついてきたため、わたしは風の防御を挟む暇もなく、尻もちをついてしまった。
「ごべんねえっ!!僕達の問題だのにいっ!!」
「手伝うのはあくまで手掛かりにつながると思ってるからだよ。そこまで思わなくても大丈夫だよ」
「リリアちゃん、心の中で『もしわたしが原因で【水人種】の人達が狙われたのだとしたら、責任はわたしが取るべきだ』って思っているはずごふっ!?」
わたしは空気の塊をサラのおでこめがけて発射した。頭を抑えるサラとまだ涙を流しているスピネルを抱え、飛ぶための魔法を展開する。
「まずは昨日会った人達と話そう。一番人が集まる場所に案内して」
「ゔん……わがった…………」
風がわたし達を包み、体が浮く。壊れた屋根の隙間から飛び、スピネルの案内のもと、目的の場所への飛行を開始した。
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