昨夜のうちに何が起きたのですか?<Ⅲ>
スピネルが抱きかかえていたコーラルをゆっくりと水面に横たわらせる。わたしは先ほどの二人と同じように傷口の確認を行う。やはり火傷痕のように皮膚が赤くなっており、腫れている。
「一応聞くけど、今回の件に心当たりとかないよね?」
「さっぱりだよ…… 【獣人類】がこの辺にいるって話も聞いたことない」
当てがあったらそもそもコーラルが警戒していないとは思えない。そもそもこれはわたしを追って来た者の犯行なのだろうか。これがわたしを精神的に苦しめるための行動なのであれば成功なのだろう。そうだとすれば巻き込んでしまった【水人種】の人達には申し訳ない。
だが、もしわたしなのではなくコーラルを、もしくは【水人種】を狙った犯行なのであれば、目的は一体なんなのだろうか。どちらにせよ、【水人種】の目をかいくぐって潜伏し、さらには三人を殺害したこの敵は只者ではない。もちろん、【水人種】に潜伏と殺害を手伝った裏切り者がいないと言う前提なはなるのだが。
「そういえば、昨晩街の方でも【真人類】の人が亡くなったのだけど、それについても何か知っていることはない?」
「ううん、知らない。もしかしたら他の【水人種】の中には知っている人もいるかもしれないけど……これも同じやつがやったのかな……?」
夜の間に二つの事件。この二つは果たして繋がりはあるのだろうか。もしそうだとすれば敵の目的は──
「おい!何があったんだ!」
スピネルの後ろ、わたし達が普段ここに来るときに通ってきた道の方向から声がした。そちらを見ると、一人の女性がこちらに近付いている。昨日見た記憶はないが、下半身がスピネル同様流動体になっているため、【水人種】の一人のようだ。
「時間になっても帰って来ないと思って来てみたら……どういうことだ!」
「よかった……実は──」
「もしかして【真人類】がやったのか!?」
スピネルの言葉を遮り、そう言われた。まずい、このままでは──
「違うよっ!この人たちは関係ないっ!話を聞いてっ!」
「黙れ!貴様も関わってるのか、スピネル!お前が関わるとろくなことにならない!ここに来るときに【真人類】が溺れて死んでいたらしいが、それも関係があるのか!」
「待ってください!まずは話を──」
「ああ、拘束してから話を聞いてやる」
【水人種】の女性はそう言うと右手をこちらへ向ける。わたしは後方へ跳び、スピネルは水の中に潜む。わたし達がいた場所を囲むように五本の水柱が立ち、鳥籠の形を作った。それが崩れ、今度はこちらに向かって五、六本の水が蔓のように伸びてきた。
「今は逃げるよ、サラ、スピネル」
「うわっと……!」
サラを抱え、聞こえているかわからないがスピネルにも声をかけ、飛行して逃げる。スクーターは置いていくことになるが仕方ない。捕まって説明したほうが良さそうだが、どれだけの時間拘束されるかわかったものではない。
「待て!」
女性は追いかけようとしたが、三人の死体を見て、そちらを状態良く保存しておくべきか、こちらを追うべきかの二択で揺れているようだった。その隙に速度を上げて遠くへ逃げることができた。
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