情報だけもらえると思っていたのですか?
「ここまでの話、ありがとうございました」
ひと通り話が終わり、わたしは話してくださったコーラルに頭を下げた。
「ふふ、良いのよ。こんなお話でもあなたの為になったのであれば」
コーラルは笑いながらそう返す。確かに噂話でしかなく、この話全体が確証があるものではないのかもしれないが、それでも最後の部分を除けば、誇張されているとは感じなかった。わたしの勘でしかないが、信じても良い情報だ。
「そういえば、他に事件の情報を知っているという……かた、は……。あの、どうして近付いているのですか?」
「ふふ、まさか何事もなく情報だけもらえると思っていたのですか?」
「そうだぞっ!僕、ここでずっと待ってたんだぞっ!」
コーラルとスピネルが笑顔でこちらににじり寄っていた。何をされるのか……いや、あそこで質問責めにあっていて、【水人種】が立てたであろう水飛沫でビチョビチョのサラを見れば答えは自ずとわかるはずだ。
「次はこっちの番ですよ。ふふ、こんなに小さいのにスピネルちゃんを脅す胆力……実力のそこも測れないですし、色々と気になっていたのですよ」
「僕も脅されるだけじゃないのだっ!昨日聞けなかったこと、外の話色々と聴かせてもらうのだっ!」
「おっ、そちらの嬢ちゃんも空いたのかい?」
「本当?こういう日のために『【真人類】の旅する人に会ったら聞きたいこと百』を考えてあるのよ!待っていなさい!」
「はいはーい!ワイはこの子には聞きたいこと聞いたからそちらに行きまーす!」
サラへの質問が終わったものや、しばらく質問ができそうになくて暇をしていたものがぞろぞろとこちらへやってきた。情報をもらった手前、これを断るということはできまい。
「……お、お手柔らかにオネガイシマス」
とりあえずサラと同じ状態にはなるまいと思い、風をわたしの全体に鎧のように纏い、濡れないようにだけした。
「ごめんね……乾かしてもらっちゃって……」
「いいのよ。帰ったらしっかりお風呂に入って温まりましょ」
「今日も海鮮はお預けかあ……」
質問攻めにあい、十時間程経っただろうか。日がまだ登っている時に話し始めたはずなのに、すっかり日が落ち、夜空すら見え始めている。コーラルとスピネルの案内を受けながら、元来た道を帰っている。
「こちらこそごめんなさいね。【水人種】も他の種族のこと話すのは初めての子もいたから、ついはしゃいでいたようね」
「いえいえ、コーラルさんが謝ることではないので、でも、今日話してみて良かったです。養成所だと、『他種族は恐ろしいものだ』というように習ってまして……でも、【水人種】の皆さんが悪い人たちには見えなかったので、良かったです!」
「ふふ、そう言って貰えるのは有難いわね」
全身を濡らされてもこの感想が出るのは、流石サラといったところか。見覚えのある道に戻って来たため、案内はそろそろ終わりのようだ。
「それでは、明日は反対側の子たちの話を聞きたい……ということで良かったかしら?」
「はい。……すみません、何から何まで……」
「ふふ、反対側の子達からも同じようなこと聞かれると思うから、覚悟しておいてね」
「はい、ちゃんとサラにも風をまとわせて濡れないようにしておきます」
「ふふ、最初に集まる場所はここで良いかしら?ここから人目がつかないように案内をさせてもらうわ」
「はい、ありがとうございます」
そんな話をしながら二人と別れようとする最中、コーラルがこちらに向けて手を振る。わたしのことかと思い自分自身を指さすと、合っていたのかコーラルが頷く。コーラルのところによると、わたしの耳に顔を近付け、ヒソヒソと小さい声で話をした。
「スピネルちゃんのこと、よろしくね」
「えっ」
突然の言葉にわたしは困惑する。コーラルは続けて、
「あの子、前にこの街の子と話したくて、結果的にその子を溺れさせてしまったことがあるのよ。それが大事になってしまって、【水人種】の中にもあの子から距離を取る子も出て来てしまったの」
「……」
「でも、貴方達が来て、たった二日しか経っていないのにあの子が元気になった様子を見ることができてとても良かったわ」
「そう、だったんですね」
スピネルと他の【水人種】の人との謎の距離感はこのためだったか。よくよく考えてみると、昼間の間もサラの方へは行かずに、コーラルとわたしが話しているところにずっといた。
「それに、スピネルちゃん外の世界にも憧れている節があるのよね。もしよかったら一緒に旅なんてどうかしら?」
「……それは色々と難しい気がしますね」
種族が違うため、連れて行くにも限度がある。わたしのように服などで素性を隠すのが一番良いのだが、【水人種】であるため、水分が吸われてしまうのはどうなのだろうか。仮にそれがなんとかなっても、色々と問題はあるだろう。
「……ごめんなさい、変なことを言って。でも、この街にいる間だけでもいいから、あの子のこと、よろしく頼むわね」
「……はい」
コーラルはこの街一帯の【水人種】を管理してるだけあって、その中であぶれてしまっているスピネルのことを気にかけているようだ。こちらも質問を聞いたり、他の【水人種】を紹介して頂いている手前、できる限り答えよう。
「出会いざまに人を窒息させようとしないよう、注意しておいてくださいね」
「ふふ、わかったわ」
そんな話をしてわたし達はコーラル、スピネルと別れた。スピネルは手を振って、
「また明日ねっ!」
と大きな声で言っていたので、わたし達も手を振り返した。次の日、あんなことになっているとも知らずに──
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