見ていた人がいるの?<Ⅰ>
スピネルが水の中に消えた。しばらく待つと、一人の女性を連れて戻ってきた。黒髪がスピネル同様腰以上もあり、スピネルと比べると歳を取っている、いかにも「お姉さん」と言う感じの女性だ。
「『コーラル』と言います。リリアさん、よろしくお願いします」
「あ、はい。改めまして、リリアと申します」
コーラルが頭を下げるので、わたしも続いて頭を下げる。この騒がしい集団に混ざっていたとは思えないくらいに丁寧な物腰だ。
「私は普段、この街一帯の【水人種】の管理と、外部の【水人種】との会議に参加したりしております。……年功序列による代表にしかすぎませんが」
年功序列ということはコーラルがこの一帯で一番年齢が高いということか。それにしてはとても歳を取っているようには見えない。何度も言うが、【水人種】は明確な住処というものを持たず、水のある場所に勝手に住んでいる自由な種族だ。そのためか、上下関係というものも特になく、「トルマリンが長である」と言うのが決まっているだけである。
「『【水人種】の管理』と言うのは、どう言ったことを?」
「【水人種】の子達は、自由奔放というか、適当というか、飽きたら住んでる場所を変えたり、なんなら飽きなくても住処を変えることがよくあるので、昔は『誰がどこに住んでいるのか』を把握してなかったことによる不都合がいろいろ起きたのですよ」
「なるほど……。それを防ぐために『誰がどこに住んでいるのか』を把握する人が必要になったと言うことですね」
場所によってその担当が違うとは言っても、逐一【水人種】の行動を把握し続けないといけないのは大変だろう。この地域だけでも五十人──いや、「こっちの地域だけで」と言っていたか。そう考えるとこの倍は人数がいることになるだろう。
「なかなか大変な仕事ですね……」
「そうかしら……。まあ私は楽しいから良いのだけど、他の地域の子の中には『興味本位で始めたら思っていた以上に大変だった』と言う子もいるけどね」
コーラルは「ふふっ」と笑う。本人が納得しているのであればとやかく言うことはない。
「それで、質問はそれだけ?こんなことを聞くために読んだとは思えないのだけど……」
「そうね……まずは八年前のことについて知っていることがあれば教えて欲しいのだけど」
「スピネルちゃんも聞かれたと言う質問ね……貴方、エンリ様と何か関係でもあるのかしら?」
答えようと思い、口を開けようとするのだが、コーラルが右手をつき出し、わたしの言葉を制止する。
「いいのよ無理に答えなくて。それで、八年前の事件ね……といっても、私の話ではなく、前にその現場を見ていた子の話なんだけ──」
「現場……!?見ていた子がいるってことですか!?……あ、すみません……つい」
「ふふっ、良いのよ。それだけエンリ様のことが大切だったんだね」
つい前のめりになってしまったわたし。コーラルにそう言われ、ついフードで顔を隠してしまう。そんな姿を見て再び笑うコーラル。
「それじゃあ、そろそろその子の話をするわね。確か──」
その言葉を皮切りに、あの現場を見ていたと言う人の話をコーラルは話し始めた。
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