どうして住処が離れているの?
スピネルはわたし達が来た方向とは反対側に進んでいく。スクーターを動かし、それに着いていく。進んでいる間に周りの建物を見る余裕があったので眺めていた。どうやらこの地域一帯は人気が少なく……というか、建物の荒れ具合から察するに人が住んでいる様子が全くない。
よくよく見ると建物も住居というよりも倉庫のようなものか。ところどころ錆びており、外装が剥がれて中の鉄骨が見えてしまっている。こんなに海に近いのだ。塩害とやらにやられてしまったのだろうか。
水路の突き当たりが見えてきた。スピネルは突き当たりの道の一本前の道を曲がっていく。わたし達もそれに続いて曲がっていく。そこから何箇所も曲がって進んでいき、ただでさえなさそうだった人気は完全にないと言える区域までたどり着いた。ここまで人気がない場所であれば【水人種】のような人前に現れない種族も住みやすいだろう。
「ねえ、ここまで案内なしでこれそう?」
「……うーん。流石に一回じゃ無理かな」
曲がり角を何度も曲がり、複雑な道のりになっていた。流石にサラもスクーターを運転させながらメモを取ることはできない。この街にいる間だけでも魔法で見えない印を曲がる位置につけておくべきか。
スピネルが止まる。ここら辺が他の【水人種】の住んでいる地域か。先ほどまでの水路よりは拓けたところだ。それにしてもスピネルと出会った地域と離れているな。今の所誰かいるようには見えない。スピネルが水の中に一度消える。恐らく仲間を呼びに言っているのだろう。少し待ったが出てくる様子がない。……この流れ、なんとなく既視感がある。
「サラ、こっちにきて」
「え……?うん……」
サラが近付き、わたしはスクーターごとわたし達の体を風で持ち上げる。その後、風でわたし達の体全体を球状に覆ったと同時に、周りの水が盛り上がり、弾ける。
「「「いえーーーーい!!!ようこそ!!!」」」
何重にも聞こえる男女の声。それと同時にこちらへ降りかかる水飛沫を先ほど纏った風で防ぐ。スピネルと会った時以上に大きな飛沫と波が起こり、しばらく収まりそうになかった。
「それで、気分は落ち着いたかしら?」
「あ、はい……スミマセンデシタ」
【水人種】の気分が落ち着いたのか、徐々に飛沫が落ち着いてきたため、スクーターを水面におろし、一旦スピネルだけを呼び出して問いただしている。歓迎しているのは質問もしやすいため有難いが、限度がある。
「いやー、他の人達も【水人種】以外と話すのは久し振りだって聞いたからつい……あっ無言で手を向けるのやめてくださいっ!」
わたしが右手を向けるとスピネルが怯える。まるで寸劇のような一連の流れが出来上がっている。
「まあそんなことは置いといて、ここまでいたのね……」
「それは海が近いからね……それだけ『僕達』と『水源』が切っても切り離せないからねっ!なんなら、こっちの地域にいる人達だけでこれだけいるから、この街全体や、海の方まで行けばもっと集められるよっ!」
ざっと見渡しただけでも五十人はいるだろうか。スピネルと出会った時同様、下半身が流動体になっている。これで混ざり合わないものなのだろうか。【水人種】の人達は早くわたし達と話したいのかじっとこちらを見ている。
「サラ、話してみる?」
「えっ!?私だけで!?」
「……やっぱり、怖い?」
「いや、スピネルさんを見てる感じ悪い人達じゃなさそうだから大丈夫だけど……」
「何かあったらすぐ呼んでね。折角の話せる機会だし、聞きたいこと色々聞いてきなよ」
「う、うん。わかった」
スクーターを動かしておっかなびっくりと言った様子で【水人種】の集団に向かっていく。すぐに【水人種】の集団に囲まれて、様々に質問を投げかけられてサラは戸惑っている。……これは聞きたいことを聞くまでに日が沈みそうだな。わたしは再びスピネルの方を向く。
「それで、この中で一番情報持ってそうな人を教えて欲しいのだけど、その前に一つ質問良いかしら?」
「教えるのはいいけど、質問って何?」
「ここにくるまで結構移動したけど、あなたと出会った場所とあまりにも離れすぎてないかしら?」
スピネルは考える素ぶりをする。そしてこちらに目を合わせ、
「特にないよっ!ただここが一番広くて、騒いでも街まで声が響かないところだからだねっ!」
……まあそんなものか。単純に【水人種】にとっての集会所といえる場所が離れていただけか。自分の中で納得をして、サラの方へ視線を向ける。視線が集まり少し緊張している様子だ。わたしは視線を動かしてしまったため、スピネルがした寂しそうな表情に気付く由もなかった。
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