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魔女は「答え」を希う  作者: でしりっとる
Ⅰ章
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師匠、いなくならないよね?<Ⅲ>

 さらに2年の月日が過ぎたある日、ルーペンスという大きい街に二人は滞在していた。次の場所に向かうために必要なものを買い、少し日が暮れたため移動は次の日とし、宿を取ることにした。


 宿に荷物を置き、リリアはいつものように魔力を効率よく循環させる訓練を行っている。深呼吸をしながら全身に魔力を行き渡らせる。その後、右足のみに力を集中させ、その力を左足へと移動させる。その後胴、右手、左手、頭へと魔力を循環させる。それを繰り返す。


 魔力の循環もスムーズに行えるようになってきたことを確認し、私はリリアに夕食の時間であることを伝える。一通りの訓練が終わり、


「わかった」


とリリアがベッドから立ち上がる。宿から少し離れた食事処へと移動し、夕飯を食べながら今後の話を続ける。


「次は南西の方にあるガラシア村へ移動、あの村には一度行ったことがあるから大丈夫だよね?」

「うん、水が少ない村だからたくさん買ったよ」

「少し過酷な環境だけど、そういった場所で生活していく術は目を見張るものがある。風土柄、火と風の魔法に精通しているから、改めて学ぶと良いだろう」

「3日間滞在した後はディラの街に向かうんだよね?」

「ああ、あそこには少し寄るだけだが、18歳になってから証明書を取るための試験場としては最適な所だろう。あそこは魔法使いの養成所との連携があるが、外部からの参加にも寛大だからな」


 そんなたわいのない話をしていると、何やら外が騒がしくなっていることに気付く。急いで会計を済まし、外に出るとその理由がわかった。


 燃えている。私たちが泊まる宿が。なぜそうなったかを考えるよりも先に二人とも体を動かした。


「中に人が残ってるかもしれない。確認しに行くよ」

「うん」


傍観している人々の制止を振り切り、私たちは燃え盛る炎の中へ入る。まず風魔法と水魔法を使用し、障害物の排除と消化を行おうとする。しかし、


「……!この炎、消えない……!」


リリアの扱う水魔法では消えない。ということはこの炎が人為的であり、しかもかなりの上級者が放ったものとなる。いったい誰が何のために……いや、今はそんなことを考えている暇はない。


「私が消火活動を行う!リリアは風魔法を使いながら煙と障害物をどかしつつ人の避難を!」

「わかった……!」


 私たちは二手に分かれて行動する。()()()()()()()()()()()()()()()()()()……と思い、私は取った部屋に向かって階段を上がった。やはりあの話は本当だったか……いや、今さら悔やんでも仕方ない。私にできることをしなければ──


ーー


 煙と障害物を動かしつつ、人の気配を感知する。……この階にはまだ三人残っていることを感知し、わたしは風魔法を新たに発生させ、より細かく人の位置を探るために使った。僅かな息遣い、衣擦れの音、そういった些細な音を空気に乗せて拾うために魔法を広げる。


「……あそこに二人!」


人のいる場所を見つけ、その部屋の扉を開ける。女性が二人。怪我はそんなにしているように見えないが、煙を吸いすぎたのかぐったりとしている。二人を持ち上げ、飛行魔法を使い連れて行こうとする。が、どうしても早くは移動できない。


「……っ!!」


 己の未熟さに憤慨しつつ、できる限りの速度で宿から脱出した。外では集まった魔法使いの人たちが水魔法を出しているが、炎の勢いが衰える様子はない。連れ出した二人を駆けつけた回復術師らしき人に預け、再び炎の中に戻る。一度潜った時におおよその場所は把握したため、急いでその場所へと向かう。


 残りの一人を救出し、師匠(せんせい)が登っていった二階へと向かう。


「お前たちがどうして……!」


という師匠(せんせい)の悲痛な叫びが聞こえた。


「せんせーー」

(リリアはこちらへ来たらダメだ!)


師匠(せんせい)、どうしたのですか」と声をかけようとした時、頭の中に師匠(せんせい)の声が響いた。伝心の魔法だ。こちらから魔法が使えないので、師匠(せんせい)が自分の思考を拾ってくれるように話しかける。


(どうしてですか……!もしなにか困っていることがあれば手伝います……!)

(ダメだ、こちらへ来てはダメだし、声も発するな。私が何とかする)


 師匠(せんせい)の目の前には誰かがいるのだろう。わたしの、もしかしたら師匠(せんせい)ですら手に負えない誰かが。そんな人がいるなんて……と考えていたその時、柱が崩れて天井が落ちてくる。火はある程度消えていたため師匠(せんせい)が崩したのか。よほどわたしを近付けさせたくないのだろう。己の無力さに再度苛立ちを覚えつつ、


師匠(せんせい)、絶対……ぜったいにもどってきて……!)


と気持ちを伝え、わたしはその場を離れた。


 火の勢いが下がり、鎮火するのに10時間。それから半日が過ぎたが、師匠(せんせい)は一向に戻ってくる気配はなかった。

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