このやり取りはなんだい?<Ⅰ>
男に両腕を後ろに回してもらい、わたしは鋼魔法でそのまま拘束を行なった。これで両腕、両足を拘束したので、そう簡単には動けないだろう。念のため矢筒を奪い、手が届かない位置へ風で飛ばした。
ローブを取った素顔は、【鱗人類】の特徴である牙と鱗を携えつつも、髪型には気を使っているのか、八二分けとでもいうのだろうか、きっちりと整えられている。わたしはその男に言葉を投げかける。
「さて、色々と聞きたいことがあるけど、良いかしら?」
「『良いかしら?』って言われても、この通り僕は何もできないからね……倒したご褒美に答えてやってもいいだろう」
許可は得たものの、嘘をつく可能性もある。かと言ってそれを確認する方法も……と考えていたが、とある魔法を思い出す。あの場所、試験が終わった後に、クレストに呼ばれて入ったあの部屋で見た魔法だ。あの瞬間でしか見てはいないが、おおよその魔法の形は検討がつく。
基盤は光属性。「闇を照らして本質を見抜く」という力があるため、感知魔法をはじめとして、様々なものを暴くことができる。他には火属性と雷属性だろうか。相手の言動に対して、心臓の動きや発汗、視線の動きなど、細かい部分を確認するために必要になるだろう。
擬似的なものになるが、これで「真偽を判断する魔法」ができたと思われるので、目にその魔法をかける。ただ、本当にこの組み合わせで合っているのかはわからないので、過信しないでおこう。わたしは質問を男にする。
「じゃあ最初に、あなたの名前は?」
「ケヘウスっていうもんだ」
「あなた達に仲間はいるの?」
「ここには……この街にはいないさ」
「それは何故?」
「何故って言われてもね……そういう風に上から言われて配置されたからとしか」
今の所魔法に反応はない。この男に──ケヘウスに質問を続ける。
「どうして配置されてたのかしら?まさかわたしを探すためだけに?」
「それは流石に自意識過剰が過ぎるもんだぜリーヤさんよ」
「……」
訂正をしたい気持ちはあるが、構わずに続ける。
「もう一度聞くけど、どうして配置されてたのかしら?」
「まあ、半分は正解だよ。もう半分は別の監視のためさ」
「別の……?」
「僕達も知らないけど、上の人と街の人たちとで何か取引をしていたらしいね」
「……本当に知らないの?」
「しつこいね。知らされてないんだからわからないよ」
反応はない。「取引」とは何のことだろうか。知らないという以上深く詮索できないのが歯がゆい。他のことを質問しよう。
「あなたは……いえ、あなた達は、師匠の事件にどこまで関わっているの?」
「先生……?ああ、エンリさんのことかな?生憎、そっちに関しても詳しく知らないんでね……」
「今、『詳しく』って言ったわね?さっきの質問には言ってなかったのに。知ってることを全て話してもらおうかしら」
「おっとしまった……ん?そういえば……そうだよ!よく考えたらおかしいじゃないか!」
芝居がかったように急に笑い出すケヘウス。その言葉に苛立ちを覚えつつ、わたしは問いかける。
「……何がおかしいのかしら?」
「『何が』って、このやり取りそのものだよ!そもそもこのやり取りはなんだい?拷問をされているでもあるまいし、何故僕は律儀に質問に答えていたんだ!」
「『ご褒美に答える』と言ったはずよ」
「ああそうさ!確かに言ったさ!でも普通に考えてごらん?『相手に負けたから』、」『手も足も出ない状態になったから』、と言って話をする理由がないよ!」
実際、ケヘウスの言っていることは正しい。「相手に負けたからその褒美になんでも答える」なんて、昔話の中でしか聞いたことがない。わたしだって、このような場面に直面したら黙秘を貫くだろう。
「じゃあ、今からは拷問という形をとりましょ──」
「へえ、君にできるのかい?」
ケヘウスは食い気味に、私の言葉に返してきた。
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