支障は出ませんか?<Ⅰ>
「ちょっと!服がボロボロじゃん!何があったらどうなるの!?」
「いやあ……はい、ごめんなさい……」
日が昇り、ぐっすりと寝ていたサラが目を覚まし、起きざまにわたしの服が破れていることに気付いて私に問い詰める。サラが起きる前に、お風呂に入り、体の汚れなどはどうにかしたものの、ローブはどうしようもなかった。
隠蔽魔法をかけていても、あくまで「着ている人自身の違和感を無くす」だけだ。服の汚れやほつれ、今回のような穴などは隠しきれない。
「まるで戦ってきたかのように焦げ目がついてるけど、本当にどうしたの?」
「……」
何をしていたかは言えない。さて、どう言い訳したものかと考えていると、サラがため息をつく。
「はあ……リリアちゃんが何をしていたか知らないけど、とりあえずリリアちゃん自身に怪我がなさそうだから良かったよ……まだ私に話せないことがあると思うけど、無茶だけはしないでね」
「サラ……本当にごめんなさいね」
サラが寛容で良かった……と思っていたら、
「ただし!今日一日は私の自由に行動するので付いてきてくださいね!洋服店にも行って、新しい服を見繕ってもらうんだから!」
……どうやら、今日一日中わたしは着せ替え人形のようだ。そう言うとサラは急いで着替えをはじめ、
「準備するから待っててね!」
と言い、慌ただしく顔を洗いに行った。
……さて、サラが戻って来る前に思考をまとめておこう。まずは【鱗人類】。最低限この街との関わりが何かしらあり、もしかしたら師匠の死の手がかりにもなる種族だ。
集会所に見覚えのない絡繰があったのもその影響か。おそらく技術の提供をしているのだろうか。そう考えると、情勢誌の質が上がったのも何かしらの絡繰を使って効率を上げているのだろうか。
そして相手。エストックを武器にしている男ダラグリウスと、弓矢で狙撃してきた男。少なくとも二人はこの街に滞在している。目的は師匠の仲間──わたしを探し、捉えることだった。
ダラグリウスの方は再び戦っても問題はないだろう。問題は弓矢の男だ。弓を何発か撃たれただけのため、実力がどの程度か把握しきれていない。だが、あの距離──目分量で家五、六軒分は離れていただろうか。雷魔法を纏わせていたとは言え、そこから数分の狂いなく狙撃をし、土壁を貫き地面をえぐる威力を放てる相手だ。一筋縄ではいかないだろう。
他にも仲間はいるのだろうか。そんなことを考えていると、
「お待たせ!朝食食べよ!」
「そうね、行きましょ」
そういってサラが私の手を引く。考えるのはこれくらいにして、サラと一緒に部屋を出た。
「うぅ……結局そうなるの……?」
「こういった服が一番着慣れてるからね」
洋服店に行き、服を買ってから集会所へ行き、食事処で昼食を頼んで待っている。結局買ったのはローブの下の服を数着と、それを覆う黒基調のローブを数着購入した。
サラとしては、できればローブを着ずに明るい服を前面に押し出して欲しいそうだが、わたしとしては闇に紛れることができる黒系統の方が好みだ。
「中の服も買ったから満足でしょ?」
「うぅぅ……それでもな……」
「それに、今日みたいに服をボロボロにする可能性もあるし、できればちゃんとしすぎてるものは着たくないのよね」
「……勝手に何かして、服ボロボロにしたのはリリアちゃんでしょ」
痛いところを突かれた。だがサラは
「でも、私もこれから依頼とかで戦うとなったら、服がどうなるとか気にしてられないよね……」
と、窓から空を見上げながらそんなことを考えている。
「服なんて気にしていたらまともに戦えないわよ」
「そうかもしれないけど、やっぱりそこは拘りたいし……」
そういうものだろうか。と、ここで昼食が運ばれてきたため、食事を始める。
「ところで、この後はどうするの?」
「別にサラが行きたいところに連れて行ってくれればいいけど、もし特にないのであれば簡単な依頼を受けたいわね。服も買ったことだし」
そんなことを話しながら食事を続けていると、何やら周りから視線を感じる。わたし達──というより、わたしの方だろうか。すると、一人の魔法使いらしき女性が近付いてくる。昨日の四人組の一人だ。
「あの、昨日はありがとうございました」
「あ、いえいえ。困った時はお互い様ですよ」
改めて感謝の言葉を言われて、サラが返す。その女性はまだ何か言いたそうにモジモジしている。
「……?えっと、他に何か?」
「あのね。もし違ったら申し訳ないんだけど、あの張り紙、もしかしてあなたのことを指しているんじゃないのかなあって」
そう言われ、一度食事をする手を止めて張り紙が貼られている掲示板のところへ向かう。掲示板には昨日と同じく様々な依頼書が貼られているが、それに紛れようともせず、大きい張り紙で次のことが書かれていた。
『黒いローブを纏った魔法使いの少女「リーヤ」を見つけたら、警備兵までご連絡を』
……名前は間違っているが、どうやらわたしのことだろう。なるほど、やはりこの街と密接に関わっているのか。しかしこうも早くお呼ばれされるとは。
「……まあ、行かないけどね」
そう呟き、わたしはこちらを見て食べているサラの所へ戻っていった。
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