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魔女は「答え」を希う  作者: でしりっとる
Ⅰ章
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わたしがまほうをまなんでいいんですか?<Ⅱ>

 私はハツシ村にて、いつものように魔法の指南を行なった。基本的に行っているのは生活するにおいて実用的な魔法の応用方法から、敵に襲われた時の簡単な逃走用、やむを得ない場合の戦闘魔法を教えている。【真人類(オリジン)】が他の七種族よりも発展しているとはいえ、【真人類(オリジン)】の中でも格差はある。それに、【森人類(エルフ)】特有の文化や、旅の中で得た知識なども教えている。


 そんな指南をしているのを、リリアは集団の輪から離れてはいるものの、教えている姿を見ているようだった。リリアの表情は変わらないが、私の話に興味を持っている…気がした。


 一通りの指南が終わり、質疑応答も終えたところで、時刻もそろそろ夜になろうとしていた。先に村長と今後の指南についてのこと、出発は明日になること、リリアとの話のことなどを話した。その間もリリアはこちらを見て待っていた。村長との話が終わり、リリアのもとに向かう。


「ごめんよ、待たせちゃったね」

「べつに……で、なにをするの?」


 表情は相変わらずだが、少し不満そうだった。


「そうだな……あまり見られたくないし、ちょっと村の端にまで行こうか」


と言い、私は歩いた。その後を少し不安そうについてくる。ここなら一目につかないだろうというところまで歩き、リリアに手を伸ばす。リリアは疑問に思いながらも私の手を取った。


 その時、体をうっすらとした光が包み込み、下の方からそよ風が吹いた。と思ったら、徐々に体が浮き始めた。急に足元の地面の感覚がなくなり、リリアは少し慌てた。やっと子供らしく感情があらわになったなと思い、少し笑みを浮かべた。


「今更聞いて申し訳ないけど、高いところ大丈夫?」

「だい…じょ……ぶ……!」


とは言っているものの、声は震え、目を瞑り、体をこちらに寄せている。少し申し訳ないことをしたなと思いながらも、


「ごめんよ。そのまま目を瞑っててもらえると嬉しいよ」


と言い、そのまま空を飛んでとある場所へ向かった。ちなみに、体を覆った光は隠匿魔法の一種だ。人に見られた状態では意味をなさないが、こうして人目につかないところで使えば空を飛んでいるという目立つ姿も隠せるということだ。


 目的の場所に着いた。着地はしたものの、リリアはまだ怖がっているのか、目を瞑ったままだ。先ほどまでの冷静な姿とは打って変わって、年相応の反応をしていることに笑みを浮かべつつ、


「お待たせ、着いたから目を開けても大丈夫だよ」


と声をかけた。声をかけられ、徐々に目を開いていく。


 リリアの目の前に広がるのは、一面の花畑。夕日に照らされ、周りの花々が黄金色に変化している。


「きれい……」


とだけリリアはつぶやいた。


「実はね、君の村からそんなに遠くには移動してないんだよ」

「……むらからそとにでたことはあったけど、みたことがない」


と目を輝かせながらリリアは言った。


「魔法はね、今日の授業で教えていたように戦いでの使い方、身の回りでの使い方があるけど、私としてはこうやって見たことのない世界を見るために使うものだと考えてるんだ」

「みたことない……せかい……」

「そう。世界っていうと大袈裟かもしれないけど、自分の力が及ばないところに手を伸ばすことができ、今までだったら見ることが、行うことができなかったはずのものをすることができる。それが魔法の良いところだと思うんだ」

「……」


リリアは静かにし、こちらの話に耳を傾けている。


「私が旅をしているのもそういうことだ。体を動かし、魔法を使い、自分の知らないことの「答え」を知る。「答え」のためのきっかけとして魔法を使ってるだけで、本質はそこだと思うんだ」

「……「こたえ」を……しるためのまほう……」


少し小難しい話をしてしまったと反省をしつつ、改めてリリアに聞いてみた。


「ねえ、魔法に興味はないかい?」

「……わたしでも、じゅぎょううけてもいいの?まほうをまなんでもいいの?」

「授業を受けてはいけない理由なんてないさ、学びたいという気持ちがあれば大丈夫だよ」

「……ほんとに?わたしはいやがられてるんだよ……?」

「他の人に嫌がれていることが魔法を学ばんではいけないことに繋がらないさ」


徐々にリリアの声が震え、目元に涙を浮かべている。


「……わたし……なんでいやがられてるのかわかんなくて……それで……それで、ずっとかんがえてたの……その「こたえ」もいつかわかるの……?」

「ああ、この世界の仕組みを、深いところを知っていけば、時間はかかるかもしれないけど、納得できるかはわからないけど、「答え」にはたどり着くさ」

「うぅぅ……うわぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!」


 リリアは泣き出した。今まで抱えて心の中にしまっていたものが全て溢れ出したように。そんなリリアをエンリはしっかりと抱きしめた。泣き止むまでの間ずっとそうしていた。


 こうして、【森人類(エルフ)】の男と【真人類(オリジン)】の少女、違う種族の師弟関係が結ばれることとなった。

 ……そして、自分の師匠が【森人類(エルフ)】の長のような存在であることをリリア知るのは、これよりももう少し先のお話。

閲覧ありがとうございました!

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