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特務魔術師をクビになったので故郷に帰ります~王都を守る伝説の血統の実力に気づいてももう遅い~  作者: 山吹弓美


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99.バーベキュー

「ぼっちゃーん」


 村の外壁に関する書類を確認していると、窓の外からテオさんの声がした。ライザさんの旦那さんで、庭師とあと家庭菜園の担当。菜園はライザさんや、たまに俺やファンランやシノーペも手伝ってるな。


「見てください、野菜が豊作ですよ」


「うわ、ほんとだ」


 開いてる窓から顔を出したらいやもう、キュウリにナスにレタスやその他もろもろがかごいっぱい、どころか数杯になっていた。俺の収納魔術や貯蔵庫である程度しまい込めるけど、でもせっかくだし新鮮なのを食べたいよな。

 あ、そうだ。


「いい天気だし、庭でバーベキューやったらどうかな。貯蔵庫のじゃがいもとか、いい感じに貯まってるんじゃないか?」


「おお、やりますか」


「うん。ライザさーん、いますかー」


 どうせ焼くなら、野菜だけじゃ物足りないよな。食料貯蔵庫にどういったものがあるか、それを把握してくれてるのはライザさんだから彼女を呼ぼう。


「はいはい、ぼっちゃんどうしました? あらあんた、いっぱい採れたわねえ」


 いそいそとやってきたライザさんは、野菜の山を見て目を輝かせた。これだけあると、料理にバリバリ使えるからな。


「そうなんだよ。それでぼっちゃんにお見せしたら、庭でバーベキューはどうだと」


「うん。じゃがいもは貯めてあるだろうけど、他に何か焼くものないかなって」


「なるほどねえ……あ、ノースボアの肉なら塩で焼いただけでも美味しいと思いますよ。グリズリーの肉はどうも臭みが残るんで、向いてないですね」


 テオさんと俺の提案に、即座にライザさんは肉をあげてくれた。ファンランが倒してくれた獣の肉、きっちり保管されてるのはさすがだな。

 ちなみにこういう北の地方だと、洞窟や掘った穴に雪や氷を詰めて食料を冷やして長持ちさせるのが普通だな。王都や南の地方だと魔術師の氷魔術に頼るそうで、その分魔術師の人件費がかさむとか何とか。

 ……まあ、ベンドルみたいに周囲がまるっと雪山だったりすると暖房が大変だろうし、そもそも保存する肉の元になる獣を手に入れるのが大変だよなあ。でも、侵略してくるのは駄目だろ、さすがに。


「ああ、でもサンドラ亭のタレもありますからね。お昼は無理ですけど、漬け込んで晩か明日には行けるんじゃないかしら。ああ、何でもっと早く思いつかなかったんでしょ」


 と、ライザさんが思いついたようにぽんと手を打った。

 サンドラ亭がこちらに移転してきた後、弁当とかによく使われているタレを小分けにして売ってくれるようになったんだよね。村に来た人たちがうまいうまいと連呼するんで、喜んじゃって。まあ確かに美味しいけど。

 で、そのタレって割と濃いめの味だから、臭みのあるグリズリーの肉も漬け込んだら美味しくいただけるんじゃないか、というのがライザさんの思いつきだった。おお、絶対美味そう。


「普通は食べないですもんね、あれ」


「こちらが食べられる方、だからなあ」


「ファンラン嬢ちゃんがいなければ、あたしらだって食べられてましたよ。あと、グリズリー肉は大体香辛料どっさりつけますね」


 サラッと言うけど、結構物騒な話だよな。ノースグリズリーは強力な獣だし、ベンドルが使役獣としてこちらにけしかけてきたのはまあ分かる。相手が悪かっただけで。

 それはそれとして、どうやら今日のお昼が決まったな。よしよし。


「テム、エーク。お昼はバーベキューだってさ」


「む」


 ソファの上でふにゃーんと伸びている猫モードのふたりに声をかけると、即座にしっぽが二本ぴんと伸びた。


「青空の下で肉や野菜を焼いて食すという、あれか。ぜひ我も賞味したいぞ」


 ふーりふーり、と白いしっぽをゆっくり振りながらテムが目をらんらんと輝かせている。そういや、王都の地下にいた頃に話したことあったっけな。あのときは外に出られるなんて思ってなかっただろうから、テムはちょっと凹んでたっけ。


「にゃーお!」


 一方エークの方は、それなに美味しいの楽しみー、という感じで無邪気に喜んでいた。うんうん、多分肉も野菜も美味いからしっかり食えよ。

 これがペットの獣だったら、人間は平気でも獣には毒だから食べさせるなって物があるそうなんだけど。このふたりは神獣と魔獣だから、あんまり気にしなくていいらしい。サンドラ弁当もしれっと食ってるしな、こいつら。


「うん、皆で食べよう。ファンランもシノーペも、お昼には帰ってくるはずだしな」


「わかりました、準備してきますねぼっちゃん」


 即座にテオさんが動き出した。バーベキューだから、焼くための台とか色々準備しないといけないし。


「じゃ、ちょっと肉といも出してきますよ。ぼっちゃんはお仕事頑張ってくださいな、呼びますから」


「分かった、おまかせしまーす」


 ライザさんもいそいそと部屋を出ていく。さ、俺は呼ばれるまでに後どれだけ書類を処理できるやら。


「エークリール、我らは呼ばれるまで寝るぞー」


「ふにー」


 何しろ、あのふたりはこういうとき全く役に立たないしな。いいけど!

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