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特務魔術師をクビになったので故郷に帰ります~王都を守る伝説の血統の実力に気づいてももう遅い~  作者: 山吹弓美


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97.おみやげ

 さて。

 防衛関連の話をしながら、リコリス様はがりがりがりとペンを走らせていた。ジェンダさんが筆記用具一式差し出してきたので、普段から持ち歩いてるんだろうな。


「このような感じですかしらね」


 書き終わった彼女がひらりと俺の目の前に差し出した紙に、思わず目を通す。手早く記された割に丁寧な文字で書かれているのは、ブラッド公爵領や防衛関連についてのリコリス様ご自身の感想みたいなものだった。

 って、要するにこれ、ドヴェン辺境伯宛の報告書じゃねえか。サラッと見せてしまっていいのか、それ。


「大丈夫だと思いますけれど……いや、ご実家への報告書をこちらに見せていいんですか?」


「下書きですわ。それに、問題になるようなことは書いておりませんもの。先程までの会話の内容を、わたくしなりにまとめたものですし」


 シノーペの問いに、リコリス様は平然と返してきた。ああうん、ここからまた清書するんだろうなというのは分かるよ。

 でもさ、一応俺たちに関する情報なんだからちょっとは隠そうよ。それとも何か、こちらに対する牽制か?


「つまり、うっかり変なことを口走ればドヴェンの家に筒抜けとなるわけでござるな。くわばらくわばら」


「ブラッド公爵閣下やキャスバート様が、そこまで愚かとは考えておりません。もちろん、シノーペ殿やファンラン殿もそうだと、わたくしは信じております」


 ファンランとリコリス様の会話は、相手が十三歳ということを考えなければ割とよくある牽制モードだった。連絡員として派遣されてくるだけのことはあるな、すごくしっかりしてる。

 つか、少なくとも俺はろくな野望とか持ってないし。バート村と、ブラッド公爵領が平穏ならそれでいいんだ。ドヴェン辺境伯に殴り込まれるようなことはしません。いやほんと。

 てか、平穏じゃないから忙しいんだけどな……おのれベンドル、おとなしくしててくれ。

 と、報告書は部下か誰かに運ばせることになるのか。連絡員だもんな、リコリス様。


「そういえば、こちらに住むことになるんですよね。家とかは……まあ、既に確保してますか」


「はい。ランドの街に、小さな家を借りました」


 うんまあそりゃ確保してるよね。ある意味……ええと大使館みたいなものだしさ。国同士のものじゃないから連絡所、とかなのかな。よくわからないな、まあいいけど。

 ところで、貴族令嬢からして『小さな』家ってどのくらいのサイズだろうね? 家とどちらが大きいか、……あちらだろうな。


「ですが、時々遊びに来てよろしいですか? その」


 なんてことを考えてる俺の前で、リコリス様はぽっと頬を赤らめながらそんなことを言ってきた。いやもちろん目当ては俺じゃない、それは分かっている。


「我は歓迎するぞ。エークリールも、な?」


「ふにゃーお」


 そう、目当てはこっちだ。ダブルもふもふ、神獣システムと魔獣エークリール。ふたりともリコリス様にも懐いてるし……悪人じゃなきゃ、大概懐きそうだな。エークなんて、前は悪人に使役されてたけど。


「テムもエークも歓迎ですし、もちろん俺たちも歓迎しますよ。リコリス様」


「ありがとうございます! もふもふし放題!」


「姫、本音がだだ漏れです」


「はっ」


 ジェンダさんツッコミありがとう。さすがに俺たちが、貴族のご令嬢にツッコミ入れるわけにもいかないし。

 もっとも、理由はどうあれ遊びに来てくれるってことはバート村を気に入ってくれたってことだから、俺は素直に歓迎したい。サンドラ亭で食事とか、王都から移住してきた人が出してくれたお店とか、いろいろ見て回っていただきたいな。


「……そうだ。サンドラ亭のお弁当、お土産に持っていってもらいましょうか?」


「サンドラ亭」


 不意に思いついたのでそう口にしたら、リコリス様の目が輝いた。今度はジェンダさんもだ。

 ま、旧王都で評判のお店だったもんな。辺境伯閣下も口にされたことがありそうだな……うん。


「ぜ、ぜひ! ランドには早めに戻るよう、留守居役から言われているのですが!」


「では、その留守居役の方にもお土産にお持ちするのが良いでござるな」


「ランドまで馬車ですよね? でしたら、部下の皆さんにもお持ち帰りしてはいかがでしょう」


 ……何か皆でお勧めしてるな。いやだって、俺たちは旧王都ではたっぷりサンドラ亭のお世話になったもの。

 だから、今度はこちらがサンドラ亭に頑張ってもらいたくて宣伝宣伝。この前の間諜騒ぎ以降は、店員とかの身分確認もしっかりやってるし。今でもたまに引っかかる人がいて、ファンランの餌食になったりしてるけど。


「そうします。ジェンダ、お財布は」


「もちろん、こちらに」


「あ、お土産なのですからこちらが出しますよ」


「いえ。わたくしが、わたくしの部下に持ち帰るお土産ですので、わたくしが支払います」


 俺が金を出すつもりだったのでそう言ったんだけど、リコリス様はきっぱりとお応えくださった。

 本気でリコリス様、しっかりしておられるよなあ。どこかの元王太子よりよほどしっかりしてる気がするんだけど、それってどうなんだろう?

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― 新着の感想 ―
[一言] モフモフ関係で素を出すリコリスさん可愛い。
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